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第四章第十話 ドワーフ村のじいちゃん

第四章第十話 ドワーフ村のじいちゃん



 急遽、鉱脈珠が爆発するかもしれないのでその対処法を探るため帝国の北東側にある小さな鉱山村に行く事になった。


 ダークエルフの古森林からそのまま北上して数日、当然の様に奥さん達が全員ついて来た。山間の小さな高山で昔から鉄鉱石が算出していたらしい。


 鉱山に近い山の麓に村を作っているのはドワーフ達だ。


「ここが僕の故郷の村。世界樹の話は内緒の方向でいこうね。まだ早いからさ。ね。ね」


「そこはまだいいけど、ちゃんと珠の事は聞いてよ、ミヤ」


「分かってるって。そんな爆弾みたいの抱えてるのは僕だって嫌だよ」


 ドワーフの村は山に洞窟を掘って石材で補強やら装飾やらをされた家並みが続く。穴から飛び出してる部分は木材も使っている所を見ると一種独特な家だ。


 山肌には無数の階段があって上の方に住んでる人とか好き勝手に穴をあけて階段で繋いだのかもしれない。


 そんな家が並ぶ中でミヤの実家(?)は結構上の方にある。ひたすら階段を上って辿り着いたのは結構大きな家だ。いくつかの穴?(玄関?)があって作業場や倉庫などもあるそうだ。


 一応斜面もあって馬車なども通れる本道もある。


「ただいま~。じいちゃん帰ったよ」


 家の中に入ってまず思うのは正面に高炉があり、赤々と燃え盛る炎、熱気が充満しておりここでの生活は苦しいだろうなと思わせる。


 あとで聞いたんだけどここは作業場らしい。ビックリした。ここで寝起きしてるかと思ったよ。だってベッドとかテーブルとかもあるんだもん。


「この、放蕩娘が! 今さらどの面下げて帰ってきただ。まあ、呑め!」


 な、なに? 呑め? そう言って出てきたのはドワーフ自慢の火酒。アルコール濃度が恐ろしく高い酒だ。当然の様に全員分、配られる。


 どういう理屈なのか分からないけど怒ってたんじゃないの? それなのに呑めって、どういうこと?


 すぐにミヤがジョッキ(・・・・)に注がれた火酒を一気に飲み干す。俺達も手に持たされたジョッキを見て戸惑っていると、じい様がギロリと睨みつけて来る。


 これって呑めってことだろうな~。まずはマイヤが思い切って飲み干す。ぐらっと体が傾いたけど何とか持ちこたえる。姐さん達もなんかブツブツ言ってるけど一応呑み干した。


 冒険者組とアイダまではまあ、何とか呑めるけど問題は俺とティア、グリンダの年少組。3人で目を絡ませた後思い切って口をつける。


 ぐはっ。これ濃い。ウイスキーをストレートで飲んでるみたい。それもジョッキ! まずはグリンダが倒れた。


 続いてティアが踏ん張ってるけど、あ、外に走って行ったと思ったら口からキラキラしたものを吐き出してる。(映像処理されております)


 ごきゅごきゅごきゅ。呑みきった。地動説が正しいのかもしれない。だって動いてるもん。


「じいちゃん、ただいま」


「お帰りミヤ。ちょいちょい戻って来んか。親不孝もんが。まあ、ええ、ちゃんと誇りを忘れずにいたならええ」


 くっ。途端に丸くなっちゃったよ。ドワーフの誇りを確認してたの!? この儀式だかなんだか知らないけど俺達も参加する意味は何?


「ええ、仲間に恵まれたようだな。んで、どうしただ。おめさが帰って来るたあ、なんか有っただか」


「うん。前にじいちゃんに鉱脈珠見せてもらった事があったじゃん? あれを冒険してたら見つけたんだよ。じいちゃんなら詳しいと思って聞きに来た」


「あんれよ。いいもん見つけただな。どれ見せてみろ」


 俺が鉱脈珠を取り出すともう魔力の吸収は起きなかった。多分ここでは吸収する程の魔力がないんだと思う。


「こりゃ、おったまげた。こげな大きな珠さ、じいも初めて見ただ。おお、おお大したもんじゃ。ここまで充填されちょるのは凄かことだー。もうちょいしとったら爆発しとった所だなー」


「あ、やっぱり爆発するんだ。鉱脈珠って。僕初めて聞いたよ。じいちゃん、充填し過ぎはだめなんだね?」


「んだ。普通は充填したくてもでけんが、どれちょいと話してやろうかの。呑みながらにすっか」


 うっそ~。もう結構です。水下さい。ああ、アンとライラも沈んだよ。リュディー~、そこはベッドじゃないよ。金床だよ。アイダとヤルルももたれかかりながら寝に入ってる。


 今、生き残ってるのはマイヤと姐さん達、アンジュ。当然の様にミヤとやっとこ、俺だ。姐さん達もそろそろヤバいんじゃないかな酒が回り出してるようだ。上半身がぐらぐらゆれてる。


「ミ、ミヤ。沈んだみんなをどこかで休ませてやって。俺は動けない。動くと沈んじゃう」


「おっけ~」


 あっさりと数人まとめて抱えて隣のほら穴に運んで行く。ミヤのじいちゃんがでかい樽を抱えて戻ってきた一応つまみらしきものがあるけど肉だな。乾燥肉。


 ドカッと樽の蓋を割ったと思ったらジョッキを突っ込んで汲んでいく。ああ、俺のジョッキはお構いなく。などと言う暇もなく並々と注がれた。


 皆の前にはジョッキが置かれつまみの肉がどっさりとある。じーっとジョッキを見つめる俺。これってお酒?


 ここまでアルコールの匂いが漂ってくるけど、火が着くんじゃないかな。あ、火酒も火が付くんだっけ。じゃあこの異様なのは何?


「こんなものしかないが、ドワーフ殺しの逸品じゃ。冥土の土産に呑んでいかっさい」


 ・・・冥土の土産? ドワーフ殺し? これ飲まないといけないのだろうか? その時ミヤが戻ってきた。


「じいちゃん、またこんなのだして普通の人は呑めないって言ってるじゃん。こんなの呑ませたら死んじゃうよ。僕だって飲めないんだからさ。水ないの水」


 おお、ミヤが天使の様だ。本当に死んでしまうとこだったのか。みんなの前からジョッキを回収して中身を戻す。改めて注がれたのは、エール。この期に及んでまだ酒を出すか!


「そんな水でええんか? 火酒もあるがよ」


「いえ、この水(・)で結構です」


 ぐふっ。このエール蒸留されてるんじゃないだろうな!? アルコール度数が普通じゃない! でも火酒よりかはましだ。


 まったくもうとか言ってるミヤは火酒を呑んでる。だから僕ここの習慣に慣れないんだよ。と言ってるけど十分慣れてる気がするよ。


「ええとあまり時間(・・)が残されてないので早速聞いても良いですか」


 今にも倒れそうな俺が催促する。


「最近の若いのはせっかちでいかんでよ。まあ、ええ。鉱脈珠じゃったか? これにゃ~他にも宝石珠だとか鉱石珠とかがあるんじゃの。おんしらがもっって来たのは特定の鉱石じゃなくどんなとこでも使えるええもんじゃ」


「そうなんですか。爆発すると言うのはどういった事でしょう」


「そげんことは、当り前じゃ。どんなものにも許容量っちゅうもんがあるじゃろうが。これなんかもほぼ満杯だで点滅しだしたらもう無理じゃっちゅう合図じゃ」


「なるほど。これを消費するのはどの位かかりそうですかね?」


「そうじゃな。100年くらいは持つじゃろ。良かったな。これだけのしろもんじゃ、鉱脈が交わってるような所に設置しんしゃい。有効に使えるじゃろ。ここみたいな1種類の鉱脈じゃ勿体ないだよ」


「鉱山なんかを回ったら魔力枯れを起こした鉱脈珠なんかも購入できますか?」


「う~ん。難しいかもしれんな。数年も放っておけばまた貯まるけん。普通は使い回すだ。大きな鉱山なんかだといくつも持っておって新しくどんどん購入したりするだで、或いはあるかもしれんだ。ここにも枯れたのなら1個あるんじゃなかったかの。交互に使ってたんじゃが、貯まるのに時間がかかり過ぎとって新たに購入したんだと思ったわい」


「その鉱脈珠譲ってもらえませんか?」


「どれ、ちょいと聞いて来てやるだ。まっちょれ」


 そう言って部屋から出ていく。この間エールには一切手を出していない。もう不味い、限界が近い。少し休ませてほしい。と思っていたら、気付いたらミヤの膝枕で寝てたらしい。


「えへへ~。やわらかいね~。ミヤ~。すろすりしちゃおっかな~」


 ミヤの太腿を撫でまわしている俺。決して俺の意志じゃないと言いたい。触りたかったのは本当かも知れないけど、こう言うんじゃなくってああ、どうにもならない。


「うわぁ~。サラがエロ貴族に化けたよ」


「酔っ払って理性のタガが外れたのかもそれません。実はチャンスではないですか?」


「アンジュ。チャンスだろうがサラがちゃんと覚えてるだろうか? 我々でさえ記憶が飛びそうだぞ。その前の火酒の一気飲みが堪えてる上に! このエール蒸留されてるんじゃないのかと言うくらいの濃さだぞ」


「・・・そうですね。サラが覚えてないのでは練習になりませんね。でも私達の練習(・・)にはなるのではないでしょうか」


「「・・・」」


「どれ、なら私が試してみても良いぞ」


「待ちなさい。一番槍は私のはずです。意識がないサラなら行こうと言う所がマイヤもずるい」


「な、そう言う訳じゃない。ただお前達が躊躇してるなら試してやろうと」


「うふふ。小娘達は引っ込ん出な~。うちが試したる。えへへ~」


「・・・止めときメル。うちが試したるさかい寝ときな」


「これって直に近づけたら吸うかもよ?」


「「「・・・」」」


「なんてこと言うんですかミヤ。ま、まさか吸わせる気ですか?」


「いや、いくら僕でもそこまではしないけど、一番槍はする気なんでしょ?」


「・・・そこまでは。触らせてみようかなくらいにしか考えてませんでした」


「ならうちがやる~。吸わせたるよ~」


「「「姐さんは黙ってて。どうせ覚えてないんだから」」」


「触らせるくらいならこのまま僕がやっちゃうよ? アンジュどうする?」


「ま、・・・いいでしょう。まかせなさい。ほ、ほらサラ~。こっちも柔らかいでちゅよ~」


 俺の頭を持ち上げて自分の胸部装甲に近づけようとしてたが、この時すでに俺の意識はない。ぐが~。


「時すでに遅し。寝ているようです」


「じゃあ、しょうがない。もうみんな寝なよ。あっちの部屋雑魚寝になっちゃってるけど寝ていいから。じいちゃんには明日教えてもらえばいいよ。僕が言っておくから」


 寝ている俺をアンジュが抱えその他は自力で隣の部屋まで連れて行ってバタンキュ~だったらしい。危なく実験台にされる所だった。


 もちろん覚えてないけどね。翌日は実に不快な目覚めだった。これが二日酔いか。まさかジョッキ一杯の酒でここまで来るとは思わなかった。


「ここは・・・、どこ、・・・だ」


 周りを見回してみると皆が居る事を考えると危なそうな場所じゃないみたいだけど宿屋でもないみたい。ああ、そうか。ミヤのじいちゃん宅か。


 くっ。頭痛が・・・気持ち悪い。離してくれ皆。胸部装甲に埋もれてるがそんな事に構っている余裕はなさそうだ。そこら中にあるモニュモニュを押しのけながらトイレに駆け込む。


 キラキラを出し終えて、かろうじて口を漱ぐ(すすぐ)。頭痛はまだ有るが吐き気は取り敢えず収まった。重い足取りで部屋に戻ると皆もまだ寝ている。


 緊急事態だから随分触ってしまったが仕方ないと思おう。え~と。昨日はどこまで話したんだったか。そうだ。ここの鉱脈珠を購入できるか聞いてもらってるとこまでだ。


 鉱脈珠が集められれば大森林の魔獣の発生が抑えられるから、今、居る魔獣を駆逐していけば大侵攻は抑えられるもしくは無くせるはず。


 ちゃんと思い出せたので少しほっとする。今まで目に入っていなかった部屋を見回す余裕が出来た。そこは客間と言うよりただの大部屋かな。


 そこに布団やらクッションやらあるだけの寝具を持ちこんで雑魚寝をしていたみたいだ。ふふ。拠点が出来た最初のころもこんな感じだった。人数は倍くらいに増えたけどね。


 身支度を整えて改めて外に出る。う~ん。うっぷ。この胃のむかつきはなんだ。最悪だよ。よく急性アルコール中毒で死ななかったな。


 くそ。また水を生みだして飲む。もう水が美味い。ここの住人が言ってる水じゃない本当の水だ。


「お、サラ起きたの。おは~。よく寝れた? 悪いね。部屋とかあるんだけど昨日一時避難させた所に結局押し込んじゃった。運ぶのが面倒でさ」


「ミヤ、おはよう。別に問題ないよ。最初のころを思い出してたよ」


「へへへ。水、呑む」


「・・・いや、その水は結構だ。それより腹が減った。昨日結局なにも食わないで寝ちゃったみたいだ。胃が空っぽだよ」


「うん。今、朝食注文してきた。人数が多いからうちだと作れないから近所に作ってもらってる」


「そいつは悪いな。お金は?」


「大丈夫。僕も結構持ってるから。迷宮都市での狩猟品代とかクエスト報酬なんかも全部あるし。昨日の事は覚えてる?」


「ああ、どうなったんだ。購入出来そうかい?」


「それはまだ分からないよ。じいちゃんはまだ帰ってきてないから。きっとそのまま宴会になってる筈だから。そのあとのことは?」


「いや、すまん。よく思い出せないかな」


「そっか・・・。初めての膝枕だったんだけど覚えてないんだ。じゃあ、無効だね。今度ちゃんとして上げるよ」


「膝枕? 俺、そんなことして貰ってたのか」


「えへへ。ぐらっと体が傾いだと思ったらコテって倒れて来てそのまま膝枕したんだよ」


「すまん。覚えてないな」


「良いよ。今度改めてちゃんとするから。ふふふ。お、朝食が来たね。食べよう」

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