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第二章第十話 魔法の練習を始めましょう

第二章第十話 魔法の練習を始めましょう



「ちぇっ。残りは逃げちゃったね。めんどくさい。また暫くしたら来るんだから逃げなきゃいいのにさ。これだからバイカルベアは嫌われるんだよ。クマのくせにこすっからい」


「ふふ。そうねミヤ。そこがバイカルベアの嫌な所ね。油断を誘ってまたすぐ襲撃とかだものね」


「さあ、腐ってもしょうがない。また来ることを前提にして作業を進めよう」


 作業をしていると数回に亘ってバイカルベアの襲撃を受けた。群れの最後の一頭を仕留めてやっと一息つけた。バイカルベアのせいで予定を大幅に遅れさせて本日の作業を終わりにする。


「ちょっと早いけど終わりにしよう。夜にちょっとやりたい事があるから」


 早々にみんなして引き上げることにした。帰り道の試験農園では更に10cmほど生育した農作物を見る羽目になる。


 ドライアードがガッツポーズしてたとリュディーが教えてくれた。拠点のお家に戻り、バイカルベア8体の解体と食事、風呂当番とに別れ作業を進める。


 当然の様に俺は食事、風呂当番だ。負傷中に飲んだスープは絶品だったので俺も挑戦してみる。


 水を鍋にかけて、肉と野菜を入れて行く。こまめに灰汁を取りながら煮込んでいく。パン窯に火を入れて、寝かせておいたパン生地を焼く。


 串焼きにした肉類に野菜炒め、ステーキにマッシュポテト、さかなの干物も焼いておこう。焼き立てのパンの良い香りがしてきたら準備終了だ。


 盛り付け等はミヤとアンジュに任せて、俺は風呂場に向かう。熱めにしたお湯を湯船に張り、木製の蓋をしておく。


 上段には増し湯用にさらに熱い湯を入れてこちらも蓋をしておく。スープの煮込みが足らないけど初日は我慢するしかない。


 毛皮を泉に沈めて来たヤルルーシカとリュディーが戻って来た。昨日沈めた毛皮を回収し、更に10匹程度の魚を持って来た。既に内臓を抜かれて焼くばかりの状態だ。


 塩焼きにでもしようかな。さかなの干物はまた今度にしよう。食材と調味料の在庫を確認して、みんなを呼ぶ。


 肉体労働の後の飯は旨い。結構な量を作ったつもりだったけどスープ以外はなくなった。スープの残りに具材とお水を追加してまた煮込んでおく。朝食の準備だ。


「やっぱり、白いパンは美味しいね。フカフカやわらかで何個でも行けそう。いつもはあんまり食べる機会がなかったけど最近はしょっちゅう食べてるね。ひひひ。しあわせだよ」


「うんうん。あたしもあんま食べたことなかったけど、これ食べちゃったらもう黒パンはきついね。街のパン工房でもあんまり置いてないんだよね」


 ミヤとリュディーのコンビが白パンにメロメロだ。白パンはインパクトが有ったようだ。未だに食べる度に感想が出る。俺だって白パンはあんまり食べた事がない。


 実家に居た頃は週に一回の竈の日だけ白パンを食べられる。一週間分のパンをいっぺんに焼くから日持ちがしない白パンは当日だけのご馳走だったな~。


 がっつり食事をした後はお風呂に入って寝室に向かう。今日は、早上がりしたので寝るには早い。お茶の準備をしてみんなを呼び集める。


「今日から夜は魔法の勉強をするよ。とうとう転移の魔法を習得する時が来ました。誰か一人でも良いから習得して下さい。金貨一万枚もした魔導書なんだから気合入れて覚えてよ」


「えぇ~~~。今さら勉強か~。堪忍してほしいよ。とほほ」


 リュディーが情けなさそうにして来る。金貨一万枚の魔導書を紐解くと転移魔魔法は既存の四元素魔法、光魔法、闇魔法、神聖魔法とも違う魔法としている。


 魔導書の著者は時空間魔法としているようだ。ここで面白い記述を見つけた。四元素魔法、地・水・火・風・光・闇はそれぞれが認識している属性を発現しているが、実際には違うらしい。


 火魔法は火をイメージし易いため、実際に炎を出したり爆発させたりするものがほとんどだが火魔法を極めて行くと氷魔法が使えるようになる。


 つまり火魔法と呼んでいるが実際はエネルギー、特に熱エネルギーを操作する魔法で有るとしていた。水魔法は液体を扱う魔法で、風魔法は気体を扱う魔法、土魔法は固体を扱う魔法らしい。


 光魔法、闇魔法は著者自身まだよく分からない魔法に分類されている。光魔法は小さな粒子を、闇魔法はエーテルだのを扱っているかもしれないそうだ。


 ひょっとして素粒子と反物質の事か? ダークマターとかダークエネルギーを扱うのが闇魔法かな?


 さすがにこれらは前世の記憶でも実証されてないから分からないな。神聖魔法はこれらとも一線を画しており、神の奇跡との位置づけだ。


「えーと、分かった?」


 全員がきょとんとしている。なに言ってんのこいつみたいに見られている。火魔法は火魔法でしょみたいな感じだ。


「う~ん。しょうがない。ちょっと実験してみよう。まずは熱い熱エネルギーと言う物をイメージしてみるね。ほらだんだんエネルギーが集まって来て発火するね。火は副次的に発生しているのであって火を起こしてる訳じゃないんだ。逆に熱エネルギーを失くしていくようにイメージするよ。ほら、どんどん空気中の水分が固まって氷になってくのが分かるでしょ?」


「わー。すごいすごい。氷魔法も使えたんだね」


 ガクッと来た。そうか俺が氷魔法を使えると思っちゃうわけか。うーん。こりゃ説明が難しいな。


「違うよ。氷魔法なんて存在しないんだ。全部火魔法だったんだよ。ただ火を着けるより氷を作る方が魔力の消費が大きいから別の魔法だと思っていたんだ。だからみんなも練習すれば氷魔法が使えるよ。マイヤとリュディーは火魔法が得意魔法だから魔力の消費も抑えられるから便利になるね。あ、ところでアンジュはどんな魔法が得意なの?」


「私は、水と土ですね。因みにスキルは、怪力、甲殻、瞬歩、索敵、穏身、狩人、剣術、体術です。リュディーを肉体派にした感じになります。」


「へ~。二人目の瞬歩だ。パワー型じゃなくてスピード型の剣士なんだな」


 と言うことで時空間魔法を覚えるより先に火魔法で氷魔法を習得してみる事になった。俺も何度か試してみてだんだん分かってきた。


 炎を出すより氷を作る方が魔力の消費が激しいのは風魔法を使って周囲から水分を集めているからのようだった。


 自然にやっていたから気付くのが遅れた。なるほど同時に二つの魔法を発動するから難易度が高く出来る人が限られてるんだ。


「分かってきた。風魔法も使ってたよ。氷を作るには水も必要だろ? だから周囲から風魔法で水分を集めてたんだ。風魔法より水魔法が得意なら直接水を生成して火魔法を使った方が早いかもしれないね」


「出来た~。ほらほら、氷! やったー。氷魔法習得したよ」


 魔法の素養が高いリュディーが一番初めに成功させた。次にヤルルーシカが水魔法で生んだ水を氷に変えた。


「出来ましたわ。なるほどですね」


 残りのメンツは魔法より肉体派のためなかなかイメージが湧かない様だ。もうしばらく練習すればできるようになるだろう。一旦氷魔法は中断して次にやりたいと言って来たのは雷魔法だ。


「雷魔法は風魔法を極めたものがまれに習得できると聞いています。これも実際には雷魔法が存在せず風魔法なのでしょうか?」


「そうだね。実際には風魔法と光魔法の複合魔法なんだろうと思う。みんなは光魔法はどんな感じ?」


「あれは難しいよ。すっごい光がビューって出るんだよ。さすがに無理かな~」


 ミヤが早々に出来ない宣言をしてきた。ふふふ。普通に使ってるライトの魔法が光魔法だって知ったら驚くだろうな。


「ミヤは光魔法駄目か。ライトの魔法は使えるよね?」


「使えるけど。あんまり使わないよ。僕は暗くても見えるから」


「ああ、暗視のスキル持ちじゃないから種族特性か。ドワーフの特性なのかな」


「あと、リュディーとアンジュも持ってるよ。マイヤは遠見。人間は脆弱だね」


 種族的差別を感じる。でも人間は繁殖力が高い事でそれらの能力的脆弱性をカバーしてるんだよな~。他種族全部を合わせても人間に及ばないんだから。


「そんなことより、ライトの魔法も光魔法だから本当は使えるはずだよ。ただ苦手意識が出来てて出来ないと思い込んでるだけだな。と言うことで雷魔法だ。風魔法で空気を撹拌すると空気が多い所と少ない所が出来て、小さな氷の粒が出来るんだ。そのままどんどん撹拌していくと小さな氷とか水滴なんかがぶつかり合って帯電する。ここで光魔法で帯電した雷を操るんだ。光魔法で操る時、雷の粒がたくさんあると思って操作するとやりやすいよ」


 雷魔法は難易度が高かったらしく、誰も出来なかった。元々リュディーが使えるのだが原理は分かっていなかった。練習してればその内出来るだろう。


 次は土魔法だ普段は目の前にある土とか砂とか石を集めて魔法にしてるから使いやすい部類に入る。でも本当の土魔法は目に見えない固体を生成して集める事が出来る便利魔法だ。


「じゃあ土魔法行くよ。土魔法は土だけじゃなくて硬い物なら何でも生成できるよ。注意点としては、近在に存在しないと生成できない事かな。つまり金を集めたくても周りにほとんどなかったら生成できない。金貨をたくさん持ってる人がいたらそこから持ってくることは出来るけど、キラキラした金の流れが目で見えるから盗んでるのはばれると思うけどね」


「ああ、一攫千金は無理か」


「ふふ。マイヤ、でも金鉱脈とか見つけられたら、簡単に金が生成できるし、ミスリル鉱脈やオリハルコン鉱脈なんかだったらもっと儲けられるだろうな。おっと、話がずれちゃったな。話を戻すけどそこら中に有る金属となると鉄になるんだ。鉄だってそう簡単に入手できるものじゃないから結構な稼ぎになる。未だに木のクワとか使ってる田舎領もたくさんあるからね」


「そうだな。一般兵まで鉄剣を揃えてるのは、帝国騎士団くらいだし、帝国騎士団だって鋼の剣は騎士たちだけだな」


「ではそこら辺に有る土から砂鉄を集めてみましょう。目で見てるから土とか岩が出来ちゃいますがグッとこらえて小さな鉄を集める様にする。すると割合簡単に出来ます。ほらね」


 これは割と皆すぐに出来る様になったが、純度が問題になる。やっぱり鉄以外にも混ざりものが多くなる。


 でも半分位は鉄でできてるから初めてにしては合格としておこう。同じ事が水魔法でも出来る事を教える。海水が一番色々な物が溶け込んでる事を伝えておく。


 今回は小川の水を使って溶け込んでいる物と水を分ける。実際には水に溶けて水溶液となっているので直接操れるが最初は水だけを取り出す。


 水が分離されることでその他の物質もかってに結びついて結晶化して分離できる。これがピュアウォーターの呪文だ。


 まあこれは生活用水の魔法でもあるからみんなできる。これも純度が問題なだけだな。他にもいろいろ出来るだろうがおいおい考えて行けばいい。


 特に複合魔法はその用途が無限に広がるだろう。しかしこの世界の人間に元素やらを理解させるのは非常に困難だろう。


 さて本題の時空間魔法だがこれは俺の前世の記憶にもほとんどない。と言うかまだそこまで科学技術が発展していなかったので当然なんだが。


 転移とは有る地点からある地点まで自分自身および付属物を一瞬で移動させる術な訳だが、原理が分からない。


 別の次元を通って近道をしたり空間を曲げて別の場所を繋いだりなど前世の記憶ではあるが、別の次元てなんだ? 空間を曲げるとは何だ? 空間自体が分からん。目の前にある空気以外の事か?


 まずは大先生の魔導書を紐解いてみようか。ふむふむ。やり方としては二つある。


 直接視認してそこに跳ぶか、遠見の魔法で見ながらそこに跳ぶ直接転移と空間把握により自分のいる位置を原点にして座標を指定して飛ぶ間接転移だ。


 魔道具なんかに利用されているのが間接転移で時空間魔法使いが使うのが直接転移になると。


 転移先に有る物体等は魔法によって弾かれるので生き埋めになったり融合してしまう恐れはないとあるな。うん。安心した。よくあるのが石の中に転移して死亡とかだからな。


 それはないけど石の中に閉じ込められるのは有ると思っていた方が良いな。自分の分の石が弾かれたとしても周り中石なことに変わりはないからな。


 転移する者は事前に空間把握でここからここまでみたいに範囲指定をしておかないと素っ裸で転移することになると。


 また物質として繋がっている物は把握していなくても一部が欠損したりせず引っ張られて一緒に転移出来る。なので他者と転移する場合には手を繋ぐなどをすると安全と。


 で、実際の魔法構築はと言うと、空間把握して座標もしくは目視にて位置を固定し飛ぶ。・・・これだけか?


 なるほど。習得困難な魔法のはずだ。天才の説明みたいだな。さてどうしたものか。

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