MISSION 11 英国的紳士猫参上
「お―はやっほー、龍太郎君」
「おぅ、鈴」
あれ、おはやっほースルーされた…
「ふわぁ…朝からテンション高いなお前。尊敬するわ」
龍太郎君は大きな欠伸をしながら歩調を緩めて俺に合わせてくれる
なんとなく違和感を感じて辺りを見渡すといっつも引き連れてるはずの虎壱君がいなかった
「あれ?虎壱君は?」
「風邪ひいたんだと。今日は槍でも降りそうだっつの」
ほぇええ…それは珍しいね。元気印の彼と風邪は無縁だと思っていたんだけど
「あ。だから俺今日のミッション無理」
「え!?なんでなんで?」
「虎壱の面倒見に行くから。だから無理」
龍太郎君の言葉に音速の早さで口を塞ぐ
うぇっ、ちょ、公式とか!美味しすぎるんだけど!あざーす!
「なんだ?お前も風邪引きかよ。うつすんじゃねぇぞ」
「あ、違う違う……。まぁ、うん。わかったよ」
「多分烈火は居るだろうから。テキトーにやっといてくれ」
俺は頷く。けど…これがまさかこんな事になるとは
◇
「……………」
チーンと悲しい音がしたような気がする
俺達は顔を見合わせながら沈黙した
「あああのっ、風花ちゃんは?」
玄輝君がガタガタ震えながら言う
「家族の事情で休み」
「桃子ちゃんは?」
今度は烈火君だ
「豹真と殴り合いしに」
「りりり龍太郎君は?」
ねぇ玄輝君…今日外出て平気だったの…
「虎壱君の看病」
「ってことは……」
「虎壱君風邪引いた」
「つっかえねーのしか残ってねーー―?!」
烈火君が叫ぶ
今回、見事に突撃メンバーが居なくなってしまった
「あああ、でも、烈火君はいるよっ」
…うん。でも…一人じゃん?
「………あー…」
「玄輝君、体調は絶不調そうだし…俺もまだ戦うの上手くないし…。実質1.5人いるかいないかだよね」
俺達の雰囲気がどよんとする
するといきなりハイテンションな声が響いた
『ごっ心配むよーっ!私が居るじゃないですか!』
「稲穂!」
…………ってアレ?
通話オンにしてないよ?
「あ、こっちですね」
不意に横から声を掛けられて俺達は後ろに飛び退く
そこに居たのは俺のナビゲーション、稲穂
「……と逢茶さん?」
「ご無沙汰して居ます」
凄く綺麗な動きでお辞儀したのは技術班の逢茶さん。眼鏡がよく似合う美人な技術者だ
「今日は助っ人の紫陽花までもがカゼっぴきのお休みなので私達が久々に参りました―!……テストも兼ねて……」
え、なんか最後にボソッと言ったよね?
なんかテストって聞こえたんだけど!?
「ええ。テストを。新作スーツの試作版を試さないといけませんので」
そう微笑みながら逢茶さんは足下の03号をみた
「では皆様」
「これを着て欲しいのだよ!」
稲穂が03号のジッパーを下げて中から真っ白い何かを取り出す
ご丁寧にもそれは03号を含めた全員分の数があった
「ヒーロースーツ試作版(改)!バリエーションも豊富にどやっ」
素早く全員に配ると本人たちがイソイソと着込んだので俺達も真っ白い何かをとりあえず着た
「……え?」
「凄いでしょ?」
稲穂の声で(*゜∀゜*)こんな顔した猫が言う
「顔文字のバリエーションはナビや技術班にアンケートを取りましたので前回よりも増えています」
逢茶さんの声で(*`∀´*)こんな顔した猫が言う
「てゆーか誰?」
烈火君の声で(<〇>Д<〇>)こんな顔した猫が(´・ω・`)こんな顔した猫に話しかけた
「あああ、僕だよ…!」
着ぐるみを着てもガタガタ震える玄輝君にそろそろ心配を通り越して不安になるのは俺だけかなぁ?
因みに俺は(^p^)こんな顔。むしろ悪意すら感じるよ…?
「似合ってます!ではそのままゴウッ!」
嫌だぁあぁぁあぁぁぁあ!!!!!!
ドンッと背中を押されて飛び出した大通りには悪者(推定。知らない人だ)が相変わらず暴れまわっていた
「ようやく来たんだ!遅い青りゅ…………え?」
悪者(推定)の青年が笑顔を見せて固まる
そりゃそうだ。真っ白い猫が五匹+ちったい猫一匹だもんね…
驚かない方がオカシイ
「え?え?この場合どうしたら良いの?え?」
「名乗るのっ!」
混乱する悪者(確定でいいと思う)の青年に隣にいたちっちゃい女の子が言った
「え?良いの?!…うぇーっと…僕は狼々!遊ぼうよ、ね?拒否権はないよ?駄目とは言わせない…って言いたいけど正直遊びたくない…」
ですよねぇー!!
ドン引きされても反応に困るんだ!!
「頼りないっ!…もう、私はアンドロイドぜ」
「たまごさん!」
「ろにいごう…」
いきなり逢茶さんが叫んだ
「その声ッ…逢茶さん…」
その瞬間たまご(って呼ばれた子)がたじろぐ
「まさか話せる機能もついていたとは!どうやって小型化されたんですか!?」
「いっやぁあぁぁあぁぁあぁ」
たまごは駆け寄る逢茶さんから素早く間合いを取っておでこを押さえ、そのままジリジリと狼々の背後に逃げ込んだ
「あれ、機械ちゃんどぉしたの?」
「ま、眉毛にはならないからねっ…」
「眉?」
狼々が首を傾げる。それから逢茶さんを見てまた首を傾げた
「似合いますよ!何故なら私が設計、デザインを致しましたから!」
「似合う訳無いでしょーっ!」
「いえいえ。似合います」
「にーあーいーまーせーんーっ!」
「にーあーいーまーすーっ!」
本人たちは必死なんだろうけど無関係のの俺は猫と幼女の睨み合いと言う何ともコミカルな情景に不覚にも和んでしまった
かぁわいいー
「もー!やっちゃってよ狼々!」
「はいはーい」
おでこを抑えたままのたまごに足を蹴られて狼々が適当な返事をする
それから空中に『剣』という字を書いた
「遊ぼうよ。拒否権はないよ?駄目とは言わせない」
「よし、麒麟!玄武!とりあえず俺が行くからお前らは02号を…」
「お、俺が行くよ!」
バズーカを取り出した朱雀の前に滑り込んでカメラを構える
「とりゃっ!『狼々モード』」
ふうっ、これで着ぐるみ脱出…てアレ?
「……プッ」
たまごが吹き出した
「僕そんなんじゃな―――いッ!」
狼々が叫ぶ
俺は改めて自分の姿を見て…絶句した
「あれ…」
白い。白いまんまだ
手はふこふこした真っ白い着ぐるみのままだし服の裾から覗く足も白い
なのにしっかり狼々の服を着ていた
「あっちゃあ…また開発し直しですね逢茶さん」
「そうですね。衣装変更時にしまわれるようにしないと…」
やっぱりまだまだ試作品って事ね
仕方無い。俺はこのまんま戦う事にした
「朱雀、玄武、ザコ頼める?」
「あいよー」
ふにゃっとした返事をしたのは朱雀
「はははい!」
声が震えているのは玄武だ
「ならば逢茶さん!」
「勿論お任せください!」
白猫二人組がガッシと腕を組む
コミカルすぎて笑いが込み上げてきた
「「覚悟02号!」」
「いやぁあぁあぁあぁあぁぁ!!!!!!」
たまごが本気で絶叫した
「ねー。ちょっと!そっちばっかみてないでよ」
「あ、狼々」
「あのさぁ早く僕に負けてその猫ちゃん脱いでよね。拒否権はないよ?駄目とは言わせない」
「俺も脱ぎたいよ…。でも脱げないんだよッ!」
狼々の真似をして『槍』と書いて槍を出現させた
「わぁ、なんでなんで?」
「おっしえなーい」
ポフポフポフンと足音を立てながら狼々に激突する
なんとなく闘志が削がれたみたいで狼々は微妙そうな顔で迎え撃ってきた
「遅ッ!!」
狼々は呆れながらサッとかわす…はずだった
「あふっ!?」
ポフンと俺にぶつかる。ぶつかったとはいえ痛みはないらしいけど目を白黒させていた
「なんで!僕避けたよね?!」
「うん…でもさ」
俺は着ぐるみをポンポン叩いてみせた
「横幅があるから」
つまり狼々は人を避ける感覚で避けたけど人の横幅より着ぐるみの横幅の方が僅かに大きくて避けきれなかったって事
「…ッチ!!まぁ僕のパクリじゃ勝てないからね!」
「望むとこ!」
俺達がバチバチと火花を散らす一方、もう一つの着ぐるみはこんな感じだった
「今迄バイク製作で出れませんでしたから久々ですね。たまごさん!負けたら眉毛になって頂きますよ」
「いぃーやぁっ!」
「そう言われましても。ではイザッ!カモーンベェエェックゥッ!!」
逢茶さんが手を振り上げると同時に綺麗な弧を描いて流星がちったい猫に突き刺さった
「ベェェェエェエック!!!!!!」
「いったぁい!!!!」
……と思いきや何故か02号に突き刺さった
「あれ、違いますよBeck!こっちこっち」
「べくっ…?」
慌てて稲穂が01号を引っこ抜いて反対方向に投げ付ける
ぴゅーんと尾を引いて今度こそ01号は03号に突き刺さった
「ベェエェック」
「ほぁっ!?」
「はぁ…焦った…」
「猫姿だったので03号だとは認識しなかったのでしょうか?」
逢茶さんと稲穂は胸をなで下ろすとわざわざ投げてさしたのに二人がかりで01号を引っこ抜く
「では改めまして…03号さんアレをお願いしますね」
ちっちゃい猫は頷くとお腹あたりのポケットからポスターを二本取り出した
てってれれってってーーん
ぽぉーすーたぁーそーおーどー
…なんてね
頭の中に効果音と一緒にそんな声が聞こえた気がした
「ポスターソード!第二バージョントレビアンな俺に抱かれっ」
「ポスターソード!第三バージョンパブってGO!」
二人の猫ちゃんがポスターをしゃきーんと構える
「…うーん…なんか猫だとキマりませんね…。あ、そうだ!麒麟さん麒麟さん」
「えっ?何?」
相変わらずポテンポテンと気の抜けた音と共に狼々と戦っていた俺は振り替える
「このポスターと同じ服になりたいです」
「ああ!それがありました!麒麟君!」
二人が期待した顔(?)で見てくる
とりあえず俺はポスターを撮影した後転送して二人の衣装(…でもやっぱり猫)を変更した
「これですよ!行きますよ稲穂さん」
「あいさ!逢茶さん!」
二人が再度キメポーズを取る
「いっけぇ!ポスターブレイドフランスペシャル―!」
「いきます!ポスターブレイドイギリスペシャルー!」
二人が個々に技を叫んだ後01号が加わる
「合体!最終奥義流星ポスターブレイドドーヴァースペシャルー―――!!!!!」
嗚呼、眩しいなぁと思いながら俺とたまごは同時に頭を抱えた
突っ込まないよ?青龍じゃないもん
それで話から除外された残りの二人もちょこっと
戦闘シーンじゃ雑魚退治に行ったら画面外なのはお約束だけど俺は鬼じゃないからね
「賑やかだねぇ…」
「嗚呼、だな」
あっとゆーまに雑魚を倒した朱雀と玄武は遠巻きに俺達を眺めていた
「なぁこの猫どうやったら脱げると思う?」
「さぁ…?でも下は私服だし…」
「そうだっけか…じゃあ別の撮影してみるか?もしかしたら上手く行くかもな」
「あ、うんそうだね」
二人は着ぐるみをペタペタ触って携帯を探す
「あれ?ないね……」
「おっかしー…なぁ……あ!!」
不意に朱雀が叫んだ
玄武が驚いて顔を上げる
「どどどうしたの?!」
「変身にケータイ使ってねーじゃん!」
「ってことは……」
二人の動きが止まる
「「携帯着ぐるみの下じゃん…」」
「あれ?でもなんで麒麟君はカメラ持ってるの?」
玄武が首をかしげる
今は戦ってる最中だから二人には教えらんないんだけど…俺のカメラは身につけてはいるけど実は武器扱いで転送出来るからなんだよねぇ
携帯の転送はできないけど。猫がヒーロースーツ扱いで助かったよ
「…片腕抜けるかな…」
二人は中でゴソゴソと動いたり身体を捩ったりした後何とか手だけ引き抜いて腰の携帯を掴んだ
朱雀も玄武も携帯のボタンの位置は覚えているみたいでカチカチと操作して撮影画面に切り換える
「えぇい…とりゃ!」
ポケットの中に入れてあった本来撮影するものを撮る。とりあえず光ったからお互いの方をみて…首をひねった
「あれ?猫だね。麒麟君みたいにもなってない…」
「マジでか。あ、お前もだ…。着ぐるみもかわんねーな」
朱雀がやっぱだめかぁと言うとさっき倒した雑魚の上に座り込んだ
下からぐえっと聞こえたけど二人とも無視する
「あ、頭でも取れたらねー…」
冗談半分で玄武が朱雀の着ぐるみに手を掛けて引っ張る。するとスポッと音がしてアッサリ着ぐるみの頭が取れた
「………あああれっ?!」
「うわっ取れた!!」
何ともアンバランスな姿のまま朱雀がわたわたと慌てる
「もしかして…玄武!」
玄武に手招きをして近くに来てもらうと朱雀は猫の頭に手を掛ける
そして
「どっせいやぁっ…!!」
掛け声空しく玄武の猫頭もすぽーんと取れてしまった
暫くぽかんと見つめあったあと我に返って着ぐるみの背中に手を当てる
ジッパーを見つけて引っ張ればアッサリ着ぐるみは脱げていつもの服になっていた
「やったあっ!」
朱雀と玄武はハイタッチをして飛び回る
さっきまで着ぐるみの重さで動いていたからか飛び跳ねると電柱を超えるぐらい跳んでいて二人は慌てて力加減をして苦笑いになった
「スペシャルーーッ!!」
さてさて、そさっきの稲穂と逢茶さんの場面に戻る
とんでもない技だったけど…見事たまごを倒した
「あーあ、倒されちゃったらダメじゃん。機械ちゃん回収しなきゃだから僕帰るね決着はまた今度だよ!拒否権はないよ?駄目とは言わせない!じゃばいばーい」
狼々は戦闘を切り上げてたまごを広いあげる…と眼を真ん丸にして驚いた
「なんで?機械ちゃん太眉毛!」
「はッ?!」
「どうやったのこれっ!」
狼々は失神、というかシャットダウンしたらしいたまごを突き付けてきた
確かに眉毛だ…
でも俺に言われてもねぇ
「お答えするのだよ!ドーバースペシャルは技を受けた相手の髭、または眉毛をちょっと変えてしまう技なんです」
「ですから今回は眉毛を。たまごさん似合ってます!」
「君もどうだい?」
「嫌だよ!」
狼々は身をのけ反らせると思いっきり首を振る
そしてたまごを連れてさっさと引き上げてしまった
「むーぅ…彼は眉毛より髭派でしたかね」
「いや…どっちも違うでしょ」
俺は苦笑いすると朱雀と玄武に目をやって驚いた
「ありゃ、戻ってる」
「まぁね…。大変だったよ」
玄武は弱々しく笑って猫を持ち上げて見せる
「個体差があるのでしょうか…?改良を…」
「そうですね、なら…」
すっかり技術者の顔の二人に苦笑いをして俺は玄武と朱雀に言った
「帰ろっか」
「だな。っしゃあ―…なんとかなったー!」
「うん。03号も行こう」
俺達の足元で青い猫が微かな機械音とともに頷く
結果オーライ方式だったけどなんとか俺達はミッションをこなしたのだった




