第4話
週末、私は悠に呼び出された。なんだろうと思い待ち合わせ場所に向かうと
悠は既に待ち合わせ場所にいた。
「おはよー」
「おはよ」
久しぶりに悠と過ごす週末は嬉しくて思わずおしゃれをして来た。
変じゃないかと鏡の前で一時間うろちょろとしてしまった事は何があっても悠にはバレたくはないなぁ。
「じゃぁ行こうか」
前のデートと変わらず手を引っ張ってくれる事からしてこの前の事は本当に気にしてないのが分かる。
「ねぇ彩香」
ふと喫茶店でジュースを飲んでいると悠はキラキラとした表情で彩香に聞いた。
「今日、彩香の誕生日でしょ?」
あ…。言われて気づいた。そういえば今日は誕生日だったんだ。最近悠の事で頭がいっぱいで忘れてた。毎年この日だけは忘れなかったのに…よっぽど私は悩んでたんだな。
「まぁ…それで色々何すればいいのか考えてたりしてたらどうしてもデート断る形になっちゃってさ…」
困っているのかそれても照れてるのか悠は目をそらして眉間に皺を寄せていた。
なんだ、そういう事だったのか。なんでもっと早くに気づかなかったんだろう。
「ううん、いいの。嬉しい」
「でも今日はデートできなかった分一緒に楽しもう」
「うん!」
それから楽しい悠とのデートはあっという間に過ぎていき、気づけば空は赤色に染まっていた。
「じゃぁそろそろ帰ろっか」
「うん」
今日は色々と本当に楽しかったなぁ。いっぱい思い出も作ったし!
「ねぇ、彩香」
今日の事を振り返っていると悠は少し私よりも後ろで立ち止まっていた。何かあったのかと近づいてみると、悠は首をふってまた私の手を握る。
「冷たいね」
「冷え性だから…」
こんな事になるのなら手袋でも持ってくればよかったな。そしたらまだあったかいんだけど…。
「じゃぁ、僕はこっちだから」
「うん、バイバイ」
別れ道で悠と別れてから、彩香は鼻歌を歌いながら大胆にも道路の真ん中を歩いていた。どうせ普段から人通りの少ない道だから平気だろう。そう思っていたのだ。
「えっ」
しかしこういう安心しきった時に限って、悪い事は起こってしまうもので……。
気がつくと私は知らない天井を見つめながら心拍音を聞いていた。そしてそれらを理解したくらいに医者が私の傍に来ると記憶の検査や感覚の検査などをさせられて、なぜこうなったかを説明される前に私はまたベッドに戻された。
「…」
思い返そうとすると頭に霧がかかったかのようで曖昧にしか思い出せなくなる。
気持ち悪いなぁ。思い出せそうで思い出せないって感覚は。
自分の今の状況に嫌悪感を感じながらも私はふと病室の端にいる女性に目が向いた。あれは…確か…。
「運が良かったね」
そう言いながら私に近づくのは間違いなく、あの時に会った悪魔だった。
運が良かったって…こんな状況になって言われても…。
「でもね、君はもうすぐ死ぬよ」
あっさりととんでもない事を言う悪魔は私のベッドの上に腰がけた。しかし彩香はそれどころではなくて、自分が死ぬという事を医者でもない悪魔に言われて硬直していた。
「お迎えは死神さんだよ。普通の人なら死神なんて来ないけど君は私と契約したからね」
悪魔はつらつらと私が死ぬ事を説明するが、私の思考は自分が死ぬという衝撃的な事実を受け入れる事ができず、ただ悪魔が話し終わるのを待つしかなかった。
「ちなみに、彩香と付き合っていた悠はこの前君に手紙を書いていたよ。多分両親からもらうと思うよ」
「……」
ダメだ。やっぱり悪魔の話が耳に入らない。聞こうにももう片方の耳から抜けているきがする。
「…ねぇ、彩香。これは君が望んだ事なんだからね」
それを最後に悪魔は彩香の前から消えた。だが、それに気づいたのは母が病室に入って来た時だった。
「よかった…。よかったわ。彩香…」
ギュッと抱きしめられと苦しくて、これからお母さんを置いて自分が死ぬ事を考えると涙が出そうになった。
「あぁ、そうだわ。三谷君が貴方に手紙を渡して欲しいって預かったの」
悠が…?なんだろう。手渡された手紙を読むとそこには衝撃的な事が書かれていた。冒頭は私の体調の心配で、読み進むにつれだんだんと別れ話になっている。
そして最後には私の誕生日から数ヶ月後の数字が書かれていた。
「お母さん…私はどれくらい寝ていたの?」
自分がどれだけ眠っていたのか手紙を読んでから気になった。悠からの別れ話よりも。
「半年よ」
そんなに私は寝てたんだ。じゃぁ悠が私と別れ話を持ち出すのも無理はないかもしれない。それにさっき悪魔が言ってたんだ。私は死ぬって。じゃぁ悠とはどちらにしろ別れなきゃいけないし…それが早まったって事…なんだ。
「彩香」
名前を呼ばれ、母の方を見るとポタリと涙が手紙に落ちた事に気づいた。
いつの間に泣いてたんだろう。気づかなかった。
「大丈夫よ。お母さんは貴方の傍にいるからね」
もう一度母に包容されて、そっと頭を撫でられた。それが私の中の一つのリミッターの解除だったようで、涙が溢れて止まらなくなった。
母は自分の肩が濡れてしまう事を気にせずにひたすら私の事を抱きしめて、頭を撫でてくれた。
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