第3話
それから時間はどんどん過ぎていき、悪魔は彩香の前に現れる事はもうなかった。
彩香は別にいつかは会えるだろうと呑気な事を思いながら三谷君と楽しい日々を過ごしていたのだが、そんな楽しい日々はとてももろいものだとある日気づいた。
「ねぇねぇ、来週の日曜日さ、遊園地行ってみようよ」
デートの帰り際に彩香が次のデートの約束を持ちかけると、悠は少し困ったような顔をして握った手を放した。
「ごめん、彩香。来週の日曜日は用事があるんだ」
悠に断られた事なんてあまりなかった彩香は驚いたものの、何かしら悠にだって用事があるんだろうな。と、特に気にはとめなかった。
しかし、それから悠にデートを誘うたびに断られる事になって、彩香はもしかして…。と焦りだした。そして自分のどこが悪かったんだろうと友達に相談してみる事にした。
「あぁ…確かに悠君の気持ちはわかるね」
「なんで?どこが悪かったのかな?」
焦る彩香を差し置いて、友達はなんで分からないの?という表情をしつつも彼女にいった。
「だって彩香さ、三谷君と付き合ってから性格変わっちゃったじゃない。前までは内気で気の弱かったのに…なんだか最近ちょっとワガママだよ?」
「えっ…」
気づきもしなかった事実を突きつけられ、彩香は口を開けるしかなかった。
ワガママ?そんな事は一度も思わなかった。性格が変わったって…思い当たる節なんてない。
「気づいてないの?なんか他の子達は彼氏ができて調子乗ってるんじゃないの?って言ってたけど…」
「そ、そんなつもりはっ…!」
ない。でも…周りがそう思ってるって事はそれは紛れもない真実なんだろう。
はぁ…確かに悠君と付き合えて嬉しくて…。あぁ、そっか。慣れてたんだ。最近は悠と距離が近かったから、これくらいいいかなって。前まではそんな事できなかったのに。
「初心忘れるべからず。ってよくできた言葉だよね」
「うん…。身にしみるよ」
付き合った頃は手を繋ぐだけで喜んでたのに、今となっては手を繋ぐどころか腕を組んでいてもなんとも思わない。
「まぁ、とりあえず彩香が自覚してよかったよ。三谷君に謝ってきたら?」
「うん…。ありがとう」
持つべきものはやはり友達だと彩香は改めて思いつつ、善は急げと悠のところへと走っていった。
「悠っ!」
そういえばこの下の名前で呼ぶのも、最初の頃は恥ずかしかったな。
「あ、彩香…」
少し嫌そうにする悠を見て彩香は自分のしてきた事を責めた。なんで言われるまで気づかなかったんだろう。前まで悠は名前を呼ぶと笑顔で振り向いてくれたのに。
「ごめんなさい。私…悠にワガママばかり言ってしまって…これからはもうそんな事は言わないようにするし、貴方の意見もちゃんと聞く…。だから…」
だから嫌わないで、それを言い終わる前に悠に私は口を塞がれていた。
「ん"~~!」
「ごめん、彩香。言ってる意味が分からない」
言ってる意味?どういう事?悠は私のワガママなところを嫌って避けてたんじゃないの?次々の疑問が彩香の頭の中に湧き出た。悠は手をどけると、困った表情をしながら頭を掻いていた。
「ワガママって…確かに少しは思ったけど…。付き合ってたら相手の欠点を見る事になるのは当たり前じゃないかな?もしかして彩香…デートの約束できなかったの気にしてるの?」
悠の言ってる意味が分からず、彩香はしばらくの間口を開けて瞬きを繰り返した。そしてようやく思考が追いついた時、彩香は慌てながら悠に聞いた。
「じゃぁっ!じゃぁ、私の事嫌いじゃないんだよね?」
「え、うん」
よかった。そう彩香は安堵のため息をついたが、彼女なりにこれからはワガママを控え、初心にかえろうと思うのであった。




