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「それで⋯⋯。初対面のボクに偽名を使うには事情があるはずだよね。教えてもらえます?」
ボクの言葉に黙り込む王学冒。すると、宋麗が口を挟んできた。
「あっ! 思い出した。王学冒って革命軍の王学冒だよね。周兄、イイコイイコしていいよ」
宋麗はそう言って頭をボクに向けてくる。ボクは仕方なく宋麗の頭をナデナデする。宋麗はご機嫌だ。
「田さんは学校の同級生なんだよ。この間久しぶりに会った時にこの顔に整形して台本通り演じてくれたら一生遊んで暮らせるくらいの報酬くれるって言うんだよ」
へえぇ!
「で、おいくら万円?」
ボクの言葉に王学冒はキャトンした顔をするが宋麗にはウケたらしい。
「おいくら万円って、周兄面白い!」
ん、なんだ、この違和感⋯⋯。
「おいくら⋯⋯。ああ、金額ね。金額は後でってことになってる。田さんはいい人だからね。そのへんは大丈夫!」
いい人は王さん。
アンタだよ!
都合のいい人⋯⋯。
「そうか⋯⋯。で、その肝心の田さんは今どこにいるの?」
ボクは王学冒を問い詰める。
「田さんは⋯⋯」
「田勇雷も顔を変えているってことでいいよね。それで彼は誰になりすましているんだい?」
口ごもる王学冒にボクは追い討ちをかける。
「ボクの予想だとこの謀略作戦の重要人物、そうだな⋯⋯。宋清か周恩楽⋯⋯。でも、宋清の顔をした張白の隣には宋麗の顔をした張涼青がいた。まさか、姉が弟がすり替わっているのを見抜けないわけがない。そうなると、周恩楽一択だけど⋯⋯。まさか魏礼総統ってことはないよね。魏礼総統は女だし!」
王学冒は黙り込んでいる。
「まあいいよ。こちらも深く問い詰める気はない。要はボクのこの力を使って政府官邸を陥落させちまえばいいってことだよ」
王学冒はボクの言葉に静かに頷く。
ボクは宋麗と王学冒とともに政府官邸へと向かった。政府官邸の玄関までくると⋯⋯。
ん?
見慣れた顔の男がボクたちを迎えてくれた。
宋清だ。
おかしい。
確かに今回の謀略には宋清の顔をした張白が絡んでいる。絡んでいるのならここにいてもおかしくない。おかしくないのだが⋯⋯。コイツは張白でもないということをボクの直感が叫んでいる。宋麗はボクの背中に隠れて宋清の顔をしたコイツを威嚇している。
「やあ、張女史。無事だったんだね。政府軍に殺されたとばかり思っていたけど⋯⋯」
「私は涼ちゃんじゃない!」
宋清の顔をしたコイツの言葉に宋麗が噛み付く。
「田さん、彼女は?」
「本物の宋麗様です。それから⋯⋯。田さん、バレています」
宋清の顔をしたコイツの言葉に王学冒が答える。
魏礼総統の秘書官の田勇雷が⋯⋯。まあ、そういう作戦をとるっていうのはありかも⋯⋯。それに張涼青が宋麗ということを知っているっていうのは逆に信用できるかも⋯⋯。
「それで、田さんはここで何をしているんですか?」
「いやあ、バレていましたか。なあに、政府中枢の人たちを自害に追いんこんできたんですよ。周恩君さん、あなたは私たちの敵ですか?」
ボクの問いに素直に応じる田勇雷。
「ボクはこの世界の人間じゃないからただの傍観者ですよ」
「この世界の人間じゃないってどういうことでしょうか?」
田勇雷はボクの言葉に食いつく。
「そのままの意味ですよ。というよりも⋯⋯、人間かどうかも怪しいくらいなんですよ」
ボクは自嘲気味に苦笑いをする。
「周兄はすごいんだかんね! 周兄に任せておけば大丈夫!」
宋麗が息巻く。
なんだよ。
この娘のボクに対する絶対的な信頼感。
「なんとなく理解ができました。それで魏礼総統はいつくらいに城陽に入られるのですか?」
「魏礼総統はですね⋯⋯。実はもうこの中にいらっしゃいます」
田勇雷は政府官邸を指差した。




