29
宋家の別宅に帰ってきた。宋麗はお腹がいっぱいになったらしく寝室でぐっすりだ。そんな時、玄関のドアがノックされた。嫌な予感がしてノックをずっと無視していたら突然玄関のドアが乱暴に開けられて男が一人入ってきた。
「なんだ、ひどいな。いるんじゃないですか」
不法侵入じゃねえか、コレ⋯⋯。
ボクが黙り込んでいると男は話を続ける。
「失礼。私、共和国総統 魏礼の秘書官をしております田勇雷と申します」
共和国というのはこの大陸の東にある島国の国名だ。魏礼というのはその国のトップ魏礼総統。そんな隣国の人間が宋家の別宅になんの用だよ。失礼だと思うならさっさと帰れ!
「ああ、宋白さんも宋清さんもいないよ。さっさと⋯⋯」
田勇雷はボクの言葉を遮り言葉を続ける。
「周恩君様でよろしかったでしょうか?」
ボクは黙って頷く。
その偽名を知っている人間にろくな奴はいない。ボクは右の拳に波動の力を込める。
「張涼青女史から連絡があり首都城陽で待機していたのですが⋯⋯」
「アッレえぇ、周兄お客さん?」
田勇雷の言葉を遮り、眠気まなこの宋麗があくびをしながら寝室から出てきた。
「張女史、無事だったか!」
田勇雷が声を荒げる。
「私は涼ちゃんじゃないよ。宋麗だよ。オジサン誰?」
「宋麗様? 宋麗様は半年前に自動車の転落事故で亡くなったと聞いています⋯⋯」
田勇雷は首を傾げる。
「エッヘン、周兄が助けてくれたんだよ!」
いや、ボクには覚えがなんだが⋯⋯。
「それで⋯⋯。その張涼青はどうしたの? 何者かによって永昌基地が陥落した後に海秋基地から第二部隊が民主派勢力を追撃した模様。最初から永昌基地と第二部隊で民主派勢力を挟み撃ちする予定だったようです」
あっぶねえ!
ボクもターゲットにされてたわけ⋯⋯。
周恩楽、ぜってえ殺す!
ボクがそんなことを考えているとも知らずに田勇雷は話を続ける。
「まあ、本物の宋麗様が生きているのであれば民主派勢力なんて関係ないですけど⋯⋯。なんてたって革命の女神が旗印になれば民主派勢力なんてね」
革命の女神?
どうゆうこと?
「それでこの後どうする?」
ボクは田勇雷に訊く。
「とりあえず周恩君さんは首都城陽の本隊を叩いてください。こちらは魏礼総統が到着し次第『祖国統一宣言』を行う予定です」
「うーん、ボクの力だと防衛部隊だけ叩くって無理なんだよ! なんていうかな⋯⋯。首都を一網打尽っていうか大味な展開しかできないけど⋯⋯」
「それは困りましたね⋯⋯」
ボクの言葉に田勇雷は戸惑いを隠せない。
「あ! でも、ボクちょっとした特技があるんですよ。ちょっと、ボクの人差し指を見てください」
田勇雷は素直にボクの人差し指を見る。
「ボクに自己紹介してください」
「私の名前は王学冒⋯⋯」
ハイ?
「田さん? どういうことですか?」
「田さん?」
ボクの問いに戸惑う田勇雷。
なんだよ。
初対面の人間に偽名使うって意味がわからない⋯⋯。
ボクは田勇雷の目の前で手を打つ。
どうやら田勇雷は正気に戻ったようだ。
「ところで、王学冒さん⋯⋯」
ボクの言葉に青ざめる田勇雷こと王学冒。
「周兄、何言ってんの?」
宋麗も戸惑いを隠せない。




