王都到着
峠での襲撃を乗り越え、一行はついに王都カレスタへ到着した。
負傷者もいる中、まずは態勢を整える必要があった。護衛のハンター・兵士たちには、宿を手配し、しばらくの休息を取らせる。
「ここまで、よくやってくれた」
リオネルの労いに、ガレンが頷いた。
「これくらい、なんてことありません。皆、無事に着けて何よりです」
*
リオネルたち四人は、荷を解く間もなく、その足で王城へ向かった。
通されたのは、宮廷魔導士の詰める一室だった。
「これが、例のダンジョンコアか」
白髪の宮廷魔導士は、慎重な手つきで、梱包を解いていく。中から現れた球体を目にした瞬間、その表情が、はっきりと引き締まった。
「……確かに、これは。自然にできたものではないな」
「フィーナ、説明してくれ」
リオネルに促され、フィーナが、これまで読み取ってきた内容を語り始めた。
「モンスターの誘導方向を示す術式が、刻まれています。それと……古代語で書かれているのに、中の精霊が、まるで支配されているような、不自然な感じがして」
「支配、か」
宮廷魔導士は、興味深そうに眉を上げた。
「詳しい考察は、既に魔法学校の方へレポートとして提出しています」
フィーナは、そう付け加えた。
「必要であれば、学校の方に取り寄せていただければ、と」
「なるほど。では、こちらでも学校側と連絡を取り、共同で解析にあたろう」
宮廷魔導士は、そう請け合った。
「二つとも、正式に預からせてもらう。数日、時間をくれ」
「よろしくお願いします」
コアを預けたことで、四人の肩から、ひとまず一つの重荷が下りた。
*
続けて、四人は内務卿ヴォルフのもとを訪れた。
「――無事だったか」
ヴォルフは、四人の姿を見るなり、開口一番にそう言った。峠での襲撃の一報は、既に先触れで届いていたらしい。
「ご心配をおかけしました」
リオネルは、これまでの経緯を、順を追って報告した。
最下層で対峙した、知恵あるオークの群れ。その先で見つかった、ダンジョンコア。そこに磔にされていたゴルドの最期と、辺境伯の名を口にした譫言。
「加えて、峠での襲撃です。捕らえた者たちは、いずれも金で雇われただけの下っ端でしたが、口を揃えて『丸くて光るものを、絶対に回収しろ』と言われていたと証言しています」
「コアそのものを、狙っていたということか」
「はい。コアの存在と、その重要性を、正確に把握していた者の指示としか思えません」
ヴォルフは、腕を組んだまま、しばらく黙り込んだ。
「もう一つ、報告があります」
リオネルは、続けて口を開いた。
「神殿の協力で、禁忌キノコの蔓延状況についても、独自に調べを進めています。各地の神殿がどの程度、キノコの中毒による治癒を行っているか――その記録から、実際の流通の実態が見えてきます」
「マルタ、詳しくは」
ヴォルフが視線を向けると、マルタが静かに続けた。
「エルンスト神殿長を通じて、各地の状況を照会していただいています。まだ全容が揃ったわけではありませんが、辺境伯領での治癒の実績は、これまでのところ、他の地域に比べて明らかに少ないようです」
その報告に、ヴォルフの眉が、わずかに動いた。
*
「峠での襲撃……これは、もはや看過できる話ではない」
ヴォルフは、低い声で呟いた。
「これまでは、状況証拠の積み重ねに過ぎなかった。だが、王領の代表者が、道中で命を狙われたとなれば、話は別だ」
その言葉には、これまでとは明らかに違う、踏み込んだ響きがあった。
「コアの解析には、数日かかる。それまで、王都に留まってくれ」
「承知しました」
リオネルは、深く頭を下げた。
*
王城を出たところで、四人はしばらく足を止めた。
「数日、猶予ができましたね」
カイルが、伸びをしながら言った。
「その間に、それぞれの用事を片付けよう」
リオネルの言葉に、三人が頷く。
実家、魔法学校、神殿――それぞれに、確かめておきたいことがあった。
王都の夕暮れの中、四人は、しばしの休息へと足を向けた。




