表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導士は猫になりたい  作者: 紙絵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/30

学園生活に図書館は外せない

 休み時間、二人の生徒がリンに気さくに話しかけてきた。

「私はエマ、よろしくね!」

 明るく元気な女生徒だ。好奇心の強そうな、大きな緑色の瞳が興味津々にリンを見つめている。

「僕、は……カナタ。よろしく」

 少し俯きながら、眼鏡をかけた男子生徒がぺこりと頭を下げた。

「私はリン。よろしくお願いします!」

 リンもにっこりと微笑んで自己紹介をする。


「同年代なの、この三人だけだよね」

「確かに、みんな歳上だね……」

 カナタは眼鏡の位置を直しながら、周りをきょろきょろと見回した。

 魔法学園は、一般的な学校とは少し異なる。年齢に関わらず純粋に魔法を学ぶ場であるため、生徒の中には自分の祖父ほど年離れた人物も交ざっていた。


「あ、あの女の子、確か最年少の入学者だよ」

 エマの視線の先にいたのは、十歳ほどに見える少女だった。ツインテールの金髪が可愛らしい。

「私、ちょっと話しかけてくる!」

 エマは根っからの社交家らしい。あっという間に少女の元へ駆け寄っていった。

「カナタとエマは、元々知り合いなの?」

 リンがカナタに質問すると、カナタは一瞬リンと目が合ったものの、恥ずかしそうにすぐに視線を逸らした。

「ううん。僕もさっき、エマに話しかけられたばかりなんだ」

「二人とも—!」

 エマが少女を連れて戻ってきた。

「はじめまして。……ライラです」

 自己紹介をする間、リンはライラから目が離せなかった。肩まで伸びたクルクルの金髪に青い瞳、まるで……

「ライラって、お人形さんみたい!」

 思わず呟いたリンを、ライラがぎょっとした目で見た。

「そんなこと! ないです……」

 そのまま俯いてしまった。照れ屋なのかもしれない。

「年齢も近いし、クラスも一緒なんだから、みんな仲良くしようね!」

 エマがニコニコと話していると、次の授業を告げるベルが鳴り響いた。


 ◇


 ヒーラーを目指す者は、「回復魔法」の授業を選択する。リンの目的もまさにこれだ。

 一方、エマ、カナタ、ライラの三人は「一般魔法」を選択していた。こちらは主に攻撃や防御の術を学ぶクラスである。


 入学から二週間、学園生活にも慣れてきた。同世代の四人は、お昼や休み時間に一緒に過ごすことが増えていた。

 授業には魔法の歴史、魔力の構造、魔法陣の成り立ちといった座学も含まれる。リンは難しい専門用語が出てきたり、複雑な計算が必要になると途端に躓いてしまう。

 その反面、実践である回復魔法の授業では目覚ましい才能を発揮していた。


 私は感覚で覚えるタイプなんだな。座学もちゃんと勉強しないと置いていかれちゃう……


「どーしたのリン? 眉間にシワが寄ってるよ〜?」

 エマがひょっこり顔を覗き込んできた。


「座学の授業でどうしても分からないところがあって、どうしようかなって……」

「わかる! 私も計算のところが全然意味不明〜! ねぇ、カナタって頭良さそうよね?」

 突然振られたカナタは、慌てて手を振る。

「ええ!? そ、そんなことないよ……」

「カナタ、ここ分かる?」

 リンが教科書の一節を指差し、縋るような目で見つめた。

「うん。ここはね、この一つ前の公式を当てはめて考えると……」

「なるほど……!」

 カナタの分かりやすい説明に、リンはパッと表情を明るくした。

「カナタ、リン! 図書館で勉強会しようよ!」

 エマの思いつきの提案で、三人で図書館へ向かうことになった。静かな館内へ足を踏み入れると、そこにはライラの姿があった。何やら分厚い専門書を、恐ろしいほどの真剣さでめくっている。

「ライラも一緒にやる? 勉強会!」

 リンがそっと声をかけると、ライラは本から目を離さずに言った。

「私……分からない所、ないから」

「えぇぇぇ!?」

「エマ! 静かに!」

 カナタが焦ってエマの口を慌てて塞ぐ。

「ご、ごめん……! ライラ、それならぜひ参加して私たちに教えてください!」

「ライラ、私たちを助けてー!」

 拝むように頭を下げるエマとリン。

「……え?」

 こうして四人は、週に一回図書館で勉強会を開くことになったのだった。——主に頭を抱えるエマとリンのために、だが。


 ◇


 その日の放課後、リンが屋敷へ帰宅すると、マドカが玄関で待っていた。

「リン様、少々お時間よろしいでしょうか」

「はい……」

 いつになく真剣で張りつめたマドカの表情に、リンも自然と背筋が伸びる。

 レイの執務室へ通されると、レイはデスクで何やら大量の書類に目を通していた。

「やあリン、おかえり」

 紫の瞳がリンを捕らえ、柔らかく目を細める。

「ただいま、レイ」

「では早速ですが、本題に入りましょう」

 マドカが真面目な声で切り出した。

 三人がソファに腰掛けると、マドカが静かに口を開く。

「例の凶悪な魔法使いの弟子が、魔法学園に通っているという情報を掴みました」

「魔法学園って……」

「はい。リン様が通われている、まさにあの学園です」

 レイや騎士団が総力を挙げて敵を追う中、数日前に齎された極秘情報——『指名手配中の男の弟子が、学園内に潜伏している可能性がある』。

「ええ!?」

「どんな弟子なんだい?」

 レイが鋭い目つきで尋ねる。

「詳しい容姿まではまだ……しかし、性別は『男』だという情報です。学園には三つのクラスがありましたね?」

 マドカが手元に広げた名簿らしき紙に目を落とす。

「はい。でも、他のクラスの生徒のことはまだあまり……」

「非常に危険だ。リンの入学前に分かっていれば、通わせなかったのに……」

 レイは頭を抱えて深いため息をついた。

「私……学園、辞めなきゃいけないの……?」

 リンは不安そうにレイを見上げた。

 

 せっかく憧れていた、みんなとの楽しい学園生活なのに……

 

「……私としては、リンをそんな危険な場所に一秒たりとも置きたくない。だが……そんな可愛い上目遣いで見つめないでくれ」

 レイは弱り切った表情でリンを見つめ返した。

「コホン。レイ様、リン様、私に一つ考えがあります。聞いていただけますか?」

 マドカの言葉に、二人はハッと視線を向けた。

「このままリン様には学園に通い続けていただき、何か不審な者がいないか、内部から私どもに情報を共有していただく……というのはいかがでしょう? 多少の危険は伴いますが、潜入の手がかりを得る絶好の機会でもあります」

「しかし、もしその弟子にリンが探っていると感づかれたら……」

「私、やります! 学園を辞めたくないですし!」

 リンはピンと元気に手を挙げ、やる気満々だ。

「レイ、お願い! 絶対に危ない真似はしないから!」

「うーん……でもなぁ……」

「お願い!」

「……はぁ。少しでも危険だと判断したら、すぐに中止させるからね?」

「ありがとう、レイ!」

 リンは歓喜のあまり、勢いよくレイに抱きついた。……そして一瞬遅れて自分が何をしたかに気づき、赤くなって慌てて離れようとしたが、すかさずレイの腕にガッチリと抱き止められた。

「うぐっ……!」

 

 まったく……お転婆な姫君だ。

 

 レイは呆れつつも、嬉しさを隠しきれない笑みを浮かべて承諾したのだった。

読んでいただき、ありがとうございます。

面白ければ星5、つまらなければ星1

ついでにブックマークもいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ