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魔導士は猫になりたい  作者: 紙絵


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7/9

将来の道

 その夜、レイがリンの部屋に来た。

「リン、入ってもいい?」

「どうぞ」

 ソファで本を読んでいたリンはレイを迎える。

「話があるんだ」

 レイはリンの隣に腰掛ける。

「リン、君にはヒーラーとしての素質がある」

 ヒーラーは回復魔法を使う者を言う。大体が修道士など、教会に祈りを捧げている者達が使う魔法である。

「私の呪いが解けた事に、リンは深く関係していると考えている。そもそも怪我で倒れていた私を癒したのは君だし、回復魔法は使えるんだよね?」

 レイが確認する。

「うん。怪我を治すのは得意」

「わかった。明日から少し魔法を教えてもいいかな? その力をしっかり使えれば、将来役にたつと思うよ」

 私の将来、望まない結婚しか道がなかったリンにもう一つ道が見えた。

 リンはレイに感謝した。

「……レイありがとう」

 少し涙ぐむリン。

「それなら良かった。じゃあそろそろ寝ようか」

 レイは微笑む。

「え?」

 レイは当たり前のようにリンのベットに潜り込んだ。リンの涙が引っ込む。

「ちょっとレイ! もう猫じゃないんだから、自分の部屋に行って」

「ええ? だって三日間は一人で我慢したんだよ? いいじゃないか」

 何がいいのだろうか? 

「あのねー、こんな事他の人に見つかったら大変じゃない!」

 レイは何か考えて、はっとした。

「リンが将来結婚する時に困るのか? それなら大丈夫! 私が責任持ってリンを幸せにするから」

「ええ!」

 それってどういう? 

「ほらおいで」

 レイがリンの手を引く。

「おやすみ」

 リンをぎゅっとすると寝てしまうレイ。

「もう……」

 マイペースな魔導士に振り回されてばかりだ。さっきまでは、感謝の気持ちでいっぱいだったのに。

 これ、毎日続くのかな? 

 そんな事を考えながら、リンは眠りに落ちた。


 魔法の練習は大変だったが、とても充実していた。リンは学校に行っていない。勉強は独学で、人に教えてもらうというのは初めてである。

「こうですか?」

 リンは楽しくてたまらない。

「そうです。そのイメージで……」

 マドカも教え甲斐があるリンに、どんどん課題を与えていく。自分より年下の面倒を見るのは、マドカも初めてである。

 基礎の魔法を教えてもらった。指先から小さい炎、そよ風、霧を作る事ができた。レイのように、人を飛ばす程の強風や、雨で火事を消すなんて事はまず無理である。

「ちょっと休憩しましょう」

 マドカがリンを誘う。

「はい、これだけやったら休憩します!」

「リンさんすごいですね。疲れない程度にしといてくださいね。私がレイ様に叱られます」

「レイがマドカ様を叱るんですか? 想像できません」

 リンが驚く。

「私には厳しいのです。でも、戻ってからのレイ様は大分印象が柔らかくなりました。以前はもっと鋭い雰囲気でした」

「そうなんですか? 私はどうしても猫だったクロの印象が強いので、人の時どうだったか聞くのは興味深いです」

 リンはやっと椅子に座った。

「二人ともお疲れ様」

 祖母がお茶を持ってきてくれた。

「ありがとう、おばあちゃん」

 リンが受け取る。

「お婆様! あなた様がそんなこと!」

 マドカは焦っているようだ。

「私がお願いしたんです。やる事がないのも退屈ですからね」

 優しげに笑う祖母の顔を見て、マドカもお茶を受け取った。

 祖母の後ろに控えている侍女も微笑んでいる。

「リン、良かったわね、魔法を教えてもらえて」

 祖母がリンに笑いかけた。

「うん、とても充実してる」

 リンも笑った。

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