屋敷にて
「リン、お婆様、昨日はよく眠れましたか?」
翌朝、レイが様子を見にきた。
「おかげさまで……人生で一番ふかふかのベットでした」
おばあちゃんは夢見心地である。
「うん! ふかふかで、すごくよく眠れた!」
昨日、屋敷に着き、部屋に案内された時は驚いた。私と祖母、それぞれのお付きの方、それぞれの部屋まで準備されていた。
まるでお姫様になったみたい……
「それは良かった!」
レイは満足そうに笑った。
「それで、二人に見せたい魔法があるんだ」
レイは何やら楽しそうである。
レイが目を瞑ると足元から風が起こり、青白く光る。
次の瞬間リンの前にいたのは、猫だった。
「レイがクロに戻った!」
久しぶりの猫に、リンはテンションが上がってクロを撫でまわす。
「かわいい〜」
「ちょっと! 撫ですぎだ!」
手を離して後ずさるリン。
「クロからレイの声が……」
クロは机に飛びのる。
「そう! 猫に戻れるし、なんと話せるんだ」
リンはちょっとテンションが下がる。
「それ猫じゃない」
「私に呪いをかけたのは、魔法学校時代の私の同級生だ」
人に戻ってレイが話す。
どこかに飛ばされていってしまった、あの男のことだと思った。
「とても優秀な方でしたが、お師匠様には叶わず。嫉妬心から嫌がらせを、しょっちゅうしていたようです」
レイの弟子のマドカが説明する。彼も優秀な魔導士である。黒髪で緑の瞳をしている。
マドカは師匠を一年間も探していたそうだ。レイは猫ライフを満喫していたというのに、気の毒である。
あの後、飛ばされた先を探したが、見つからなかったらしい。どこかへ逃げているようである。
村を焼き尽くすなんて簡単に言う、危ない奴だ。早く捕まってほしい。
「飛ばされて少しは頭が冷えたでしょうが、またいつ何かしに来るかわかりません」
「迷惑なヤツだ。今度は捕まえた方がいいな」
レイもマドカも呆れているようだ。
リンは屋敷を探索していた。
レイは忙しいのか、マドカとどこかへ行ってしまったし、おばあちゃんは部屋でゆっくりするらしい。
お屋敷は広い。部屋が幾つもあって迷いそうだ。
ウロウロしていたら中庭に出た。
「ここも素敵……」
ベンチがあるので休憩させてもらおう。
すると膝に何か乗ってきた。
「クロ! どうして?」
「ちょっと休憩しようと思ってね。窓の外を見たらリンがいたから。書類仕事は懲り懲りだよ……」
そう言うと膝の上で丸くなる。
ネコやり慣れてる……
リンはクロを撫でる。無意識である。
「喉乾いたな。リンもお茶にするかい?」
「お茶! 素敵な響き!」
外でお茶を飲むなんて、まさにお嬢様ではないか! 変に興奮しているリン。
「マドカ! 用意お願いできる?」
クロが話すと、上から視線が。
「レイ様そんな所に! お茶ですか、分かりました」
あっという間にお茶の準備が整う。魔法とは便利なものだ。
「はぁ〜。美味しそう……」
リンはうっとりお菓子を見つめる。
「嬉しそうで良かった。好きなだけ食べていいからね?」
レイはクロになったまま話している。
「レイに戻らないの? 喉乾いたんでしょ?」
リンが言うと、クロは人に戻る。
「そうだった。リンの膝枕気持ち良くて忘れてた」
レイがさらっと口にする。
「それは猫だから!」
なんだか違う意味に聞こえてムキになるリン。
「レイ様が楽しそうだ……」
マドカはそんなレイを珍しそうに見ている。
リンとレイ、マドカでお茶をする。
優雅な時間である。




