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魔導士は猫になりたい  作者: 紙絵


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9/9

帰宅

 夕方、屋敷に帰るとマドカが迎えてくれた。

「お帰りなさいませ。レイ様、急ぎの用件がいくつもございます。早速ですがこちらに!」

 レイは渋々マドカに付いて行く。

「リン、また後でね?」

 リンは小さく手を振って送り出す。

 レイの背中から行きたくないオーラが出ているようだ……


「おかえり、リン」

「おばあちゃん、ただいま」

 祖母も待っていてくれた。

「おばあちゃん、お茶しましょ。話したい事が色々あって……」

 二人はリンの部屋に向かった。二人で机を囲むのは久しぶりだ。


「街はすごく大きくて、私迷子になって、誘拐されそうになって……」

 祖母は目を白黒させながら話を聞いていた。

「誘拐ですって!」

「あ、レイが助けてくれたから大丈夫!」

「無事で何よりだわ」

 祖母は息を吐いた。

「あとね、レイが……その、私と……結婚するって言ってて」

 リンは話しながら、顔が赤くなる。

「まあ!」

 おばあちゃんは驚きで固まっている。

「今すぐってわけじゃないんだけど、私の気持ちが追いつかないというか……!」

 わたわたしているリンである。

「おめでとうリン! クロとはずっと一緒にいたものね! 人間のレイ様も素晴らしい紳士だし……」

 おばあちゃんは自分の事のように喜んでいる。

「レイ様がリンを支えてくれたら、私も安心だわ」

「おばあちゃん、ありがとう」

 心が暖かくなるリンであった。


 ーーーー


「急ぎの要件もひと段落したし、ちょっと休憩……」

 溜まっていた仕事をある程度片付けた。レイは、ソファに横になると猫に変身した。

「休む時はこれが一番だな」

 クロになると丸くなる。

「街歩きはいかがでしたか?」

 マドカがお茶を持ってきた。猫だと飲めないが。

「リンが攫われそうになって焦ったよ……やはり目を離してはいけない。というわけで、リンと婚約する」

 猫の姿のまま重大な事を言っている。

「はい?」

 攫われそうになった報告は、従者より受けていたが、婚約の話は初耳である。

 マドカは目を見開いた。

「レイ様が婚約……」

「なんだ? 一年前は早く身を固めろって、あんなに口酸っぱく言ってたじゃないか?」

 レイがマドカを不思議そうに見る。

「はい。それが嫌で帰ってこないのかと思っていたくらいです……」

 マドカは天井を見上げた。

「リン様に感謝しないと」

「どうした? そんなに嬉しいのか?」

 猫からレイに戻ってお茶を飲んでいる。

「これでレイ様宛に来るお見合いやら、ご令嬢の紹介パーティやら、相手にしなくてすむと思うと……」

 涙を流している。

「……苦労かけてすまん」

 レイが呟く。

 そんなに沢山話が来ていたのか。

「では早速婚約の手続きをします!」

 そう言うが早く、マドカは部屋から出て行った。


 マドカの迅速な仕事ぶりで、婚約の手続きは滞りなく終わり、週末には婚約パーティーが開かれる事になったのであった。

読んでいただき、ありがとうございます。

感想、反応いただけると大変嬉しいです。

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