帰宅
夕方、屋敷に帰るとマドカが迎えてくれた。
「お帰りなさいませ。レイ様、急ぎの用件がいくつもございます。早速ですがこちらに!」
レイは渋々マドカに付いて行く。
「リン、また後でね?」
リンは小さく手を振って送り出す。
レイの背中から行きたくないオーラが出ているようだ……
「おかえり、リン」
「おばあちゃん、ただいま」
祖母も待っていてくれた。
「おばあちゃん、お茶しましょ。話したい事が色々あって……」
二人はリンの部屋に向かった。二人で机を囲むのは久しぶりだ。
「街はすごく大きくて、私迷子になって、誘拐されそうになって……」
祖母は目を白黒させながら話を聞いていた。
「誘拐ですって!」
「あ、レイが助けてくれたから大丈夫!」
「無事で何よりだわ」
祖母は息を吐いた。
「あとね、レイが……その、私と……結婚するって言ってて」
リンは話しながら、顔が赤くなる。
「まあ!」
おばあちゃんは驚きで固まっている。
「今すぐってわけじゃないんだけど、私の気持ちが追いつかないというか……!」
わたわたしているリンである。
「おめでとうリン! クロとはずっと一緒にいたものね! 人間のレイ様も素晴らしい紳士だし……」
おばあちゃんは自分の事のように喜んでいる。
「レイ様がリンを支えてくれたら、私も安心だわ」
「おばあちゃん、ありがとう」
心が暖かくなるリンであった。
ーーーー
「急ぎの要件もひと段落したし、ちょっと休憩……」
溜まっていた仕事をある程度片付けた。レイは、ソファに横になると猫に変身した。
「休む時はこれが一番だな」
クロになると丸くなる。
「街歩きはいかがでしたか?」
マドカがお茶を持ってきた。猫だと飲めないが。
「リンが攫われそうになって焦ったよ……やはり目を離してはいけない。というわけで、リンと婚約する」
猫の姿のまま重大な事を言っている。
「はい?」
攫われそうになった報告は、従者より受けていたが、婚約の話は初耳である。
マドカは目を見開いた。
「レイ様が婚約……」
「なんだ? 一年前は早く身を固めろって、あんなに口酸っぱく言ってたじゃないか?」
レイがマドカを不思議そうに見る。
「はい。それが嫌で帰ってこないのかと思っていたくらいです……」
マドカは天井を見上げた。
「リン様に感謝しないと」
「どうした? そんなに嬉しいのか?」
猫からレイに戻ってお茶を飲んでいる。
「これでレイ様宛に来るお見合いやら、ご令嬢の紹介パーティやら、相手にしなくてすむと思うと……」
涙を流している。
「……苦労かけてすまん」
レイが呟く。
そんなに沢山話が来ていたのか。
「では早速婚約の手続きをします!」
そう言うが早く、マドカは部屋から出て行った。
マドカの迅速な仕事ぶりで、婚約の手続きは滞りなく終わり、週末には婚約パーティーが開かれる事になったのであった。
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