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魔導士は猫になりたい  作者: 紙絵


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4/30

屋敷にて

 翌朝、レイが様子を見にきた。

 「リン、マーサ、昨日はよく眠れた?」

「おかげさまで! 私などには不釣り合いな部屋で……恐縮しております」

 マーサは深々と礼をした。少し涙ぐんでいる。

「レイ、ありがとう……なんだか夢みたい」

 リンもお礼を言う。


 昨日、屋敷に着き、部屋に案内された時は驚いた。私とマーサ、それぞれの部屋にお付きの方、洋服やら靴、何から何まで準備されていた。

 

「それは良かった!」

 レイは満足そうに笑った。

「それで、二人に見せたい魔法があるんだ」

 何やら楽しそうなレイが目を瞑ると、足元が青白く光り、風が起こった。次の瞬間リンの前にいたのは、猫のクロだった。

「レイがクロになった!」

 久しぶりの猫のクロに、リンはテンションが上がって撫でまわす。

「かわいい~」

「ちょっと撫ですぎだ」

 手を離して後ずさるリン。

「クロからレイの声が……」

 クロは机に飛び乗ると得意気に話す。

「そう! 猫に戻れるし、なんと話せるんだ」

 リンはちょっとテンションが下がる。

「それ猫じゃない」


 ◇


 レイ、リン、マーサ、マドカの四人は応接室で向かい合っている。人に戻ったレイが話し出す。

「私に呪いをかけたのは、魔法学園時代の私の同級生だった」

 村を襲い、何処かに消えたあの魔法使いを思い浮かべる。

「とても優秀な方でしたが、レイ様には叶わず。嫉妬心からか嫌がらせを、しょっちゅうしていました」

 レイの弟子のマドカが説明する。彼も優秀な魔導士である。長い金髪を一つに縛り、緑の瞳をしている。

 マドカはレイを一年間も探していたそうだ。レイは猫ライフを満喫していたというのに、気の毒なことである。

「あの男は今どこに?」

 マーサが不安な顔で訊ねる。

「村の周辺にはおりませんでした。あの魔法使いは指名手配されています。彼は危険人物です。一刻も早く見つけなければ」

 マドカが悔しそうに顔を歪める。

「次は確実に捕まえたい……」

 レイとマドカの瞳がキラリと光った。


 ◇


 リンは屋敷を探索していた。

 レイは忙しいらしく、従者のマドカとどこかへ行ってしまったし、マーサは部屋でゆっくりするらしい。

 お屋敷は広い。部屋が幾つもあって迷いそうだ。しかし、好奇心旺盛なリンは色々と見ておきたい。ウロウロしていたら中庭に出た。

「ここも素敵……」

 ベンチがあるので休憩させてもらおう。ベンチに腰掛けると膝に何か乗ってきた。

「クロ! どうして?」

「ちょっと休憩しようと思ってね。窓の外を見たらリンがいたから。書類仕事は懲り懲りだよ……」

 そう言うと膝の上で丸くなる。


 ネコやり慣れてる……


 リンはクロを撫でる。無意識である。

「喉渇いたな。リンもお茶にするかい?」

「いいの?」

「マドカ! 用意お願いできる?」

 クロが話すと、上から声がした。

「レイ様そんな所に! お茶ですか、分かりました」

 あっという間にお茶の準備が整う。サンドイッチやケーキ、何やら見たことのない、おしゃれなお菓子達……

 リンはその景色に感動していた。うっとりお菓子を見つめ、いい香りを吸い込む。

「嬉しそうで良かった。好きなだけ食べていいからね?」

 レイはクロになったまま、リンの膝の上で話している。

「クロ、レイに戻らないの? 一緒にお菓子食べよう」

 リンが言うと、クロは膝から降り人に戻る。すらっとした長身美男子が現れる。

「そうだった。リンの膝枕、気持ち良くて忘れてた」

 レイがさらっと口にする。

「レイ、恥ずかしいから言わないで」

 リンは一気に体温が上がった。

「ごめんね」

 全く悪いと思っていないであろう謝罪をし、微笑む。

「レイ様が楽しそうだ……」

 マドカはそんなレイを珍しそうに見ている。リンとレイ、マドカでお茶をするのは優雅な時間であった。


 その夜、

「リン、入ってもいい?」

「どうぞ」

 読んでいた本を閉じる。

「話があるんだ」

 そこにはレイが立っていた。

読んでいただき、ありがとうございます。

面白ければ星5、つまらなければ星1

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