事情
家に戻り、クロは2人に事情を話す。
「私は魔導士だ。名前はレイ。
一年前に呪い師によって猫にされてしまってね。その時拾ってくれたのがリンだ。本当にありがとう。あのままだったら私は死んでいたよ」
クロもとい、レイが頭を下げる。
「お礼を言うのは私の方です。村と私達を守ってくれてありがとう」
リンと祖母が頭を下げる。
「なぜ人に戻れたの?」
「おそらく、リンの力だと思う。」
「私?」
回復魔法は使えるけど、呪いを解いた事はない。そんな事できるのは上級魔法使いではないか?
「リンが私を撫でたり、ぎゅっとしたり、キスする度に、だんだん力が戻っていく感覚がしていた」
「へ?」
リンは恥ずかしくて顔を手で隠した。
だって猫だったから…穴があったら入りたい!
祖母は恐縮している。
「クロが魔導士様…!」
「魔導士って、都でお仕事している?」
リンはさほど詳しくない。
「政のあれこれを決めたり、暦を管理したり、怪物を倒したり、偉い人達だよ!」
「おばあちゃん詳しいね」
「そりゃあ長く生きてるからね」
いや、そういうの好きなんじゃないか?
「本当にお世話になりました。私は一度自宅に戻ろうかと思いますが、改めてお礼させていただきます」
クロはとても紳士的である。
「そっかクロ…じゃなかった、レイの家はどこなの?」
「リン!敬いなさい!普通なら話もできない地位の方なんだよ」
そんなこと言われても、さっきまで猫だったのに急に無理である。
「お婆様、大丈夫ですよ。自宅は都にあって、ここには術で飛ばされたようです。どの辺かは分かっています。」
「今まで帰らなかったのはなぜ?」
リンは不思議に思った。多分、そんな偉い魔導士ならば猫の姿でも帰れるはずだ。
「いや、怪我が治ったら出て行こうと思っていたんだが、居心地が良くてね…気付いたら一年経っていた」
レイは頭をかいている。
猫みたいな仕草である。
「という事で、明日ここを発ちます」
布団に入ってクロを呼ぼうとして、はっとする。
もうあの猫はいないのか。
ちょっと寂しくなって1人で寝ようとすると、ノックの音がした。
「リン、一緒に寝よう?」
レイが入ってきた。
「え!でもでも!」
狼狽えるリンに、気にしないレイ。
「いつもと一緒だよ。ほら入って」
手を引っ張られて布団に入れられる。
「おやすみ」
レイはそう言うとリンをぎゅっとする。
「お…おやすみ」
あったかい。そいえばクロはマイペースだった。
その温もりに、いつの間にか眠ってしまったリンだった。




