ライアン
ライアンは王都内に用意された家で、母と弟と日常を過ごしていた。
あんな事件を起こした魔法使いに従っていた俺が、こんなに穏やかな日々を過ごしていていいのだろうか……?
ライアンは複雑な思いを抱えながら、弟のリクと遊んでいた。
カランカラン——。
家のベルが鳴る。
「はぁい」
母が玄関へ向かう。
「こんにちは! あなたは……」
何やら声が聞こえ、客人を連れて母が戻ってきた。
「ライアン、お友達よ」
そこには、エマとカナタ、そしてリンが立っていた。
「突然ごめんね。会いに行ってもいいか、レイに確認したら……『好きな時に行ったらいい』って言うから、すぐに来ちゃったの」
リンが苦笑する。
「僕達も早く会いたかったから……」
カナタがメガネの位置を直しながら伝えた。
「あのかわいいライラが少年だったなんてねぇ」
エマが意地悪く微笑む。
「うっ……それは言わないでくれ」
ライアンの顔が赤くなる。女装をしていた過去は、だいぶ恥ずかしいようだ。
「変装ならリンもでしょ? 黒髪で王族だったなんて、反則だよ」
ライアンがリンをじっと見る。
「えへへ……バレると色々大変だから」
「でも、黒髪の方が似合ってるね」
ライアンが真剣な顔でリンの髪にそっと触れた。
「え!?」
焦るリン。
「は! ごめんっ! なんか距離感がいまいちバグってて」
パッと離れるライアン。女の子同士の距離感が染みついてしまっているようだ。
「ううん、大丈夫……!」
「ライアンは学園には戻らないの?」
エマが尋ねると、ライアンは腕を組み、苦笑いを浮かべた。
「うーーん。俺がそんなこと望める立場じゃないよ」
「そんなことない! ……ライアンのせいじゃないだろ?」
カナタが強く反論する。
「そうだよ。また一緒に学園に通おうよ」
リンも優しく誘う。
「リンも正体隠して通い続けるんですって! レイ様に、座学の成績が悪いって言われてたわ!」
エマが嬉しそうに暴露する。
「エマ……人のこと言えるの?」
リンが睨む。
「また一緒に通えるのが嬉しいって話よ」
「まぁ、それならいいけど!」
ライアンは、そんなやり取りを切なげに見つめている。
「……ありがとう」
「ライアン。すぐには無理でも、きっと学園で会えるけらね」
リンがライアンの手を取る。ライアンも瞳を潤ませて深く頷いた。
そっと様子を見守っていた、母と弟は顔を見合わせて微笑んだ。
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