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拾った黒猫を溺愛していたら、いつの間にか大魔導士に溺愛されていました〜魔導士は猫になりたい  作者: 紙絵。


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エピローグ

 マーサは中庭で、大きなカンバスと向かい合っていた。久しぶりに描く絵、まだ何を描こうか決めていない。

「マーサ行ってくる……あ! 絵を描くの?」

 リンが声をかけながらカンバスをみるが、まだ白いままである。マーサの左手はかなり回復し、今ではすっかり自由に筆を握れるようになっていた。

「リン様、行ってらっしゃいませ。リン様が帰るまでに一枚完成させておきます!」

 久しぶりの作業に、マーサはわくわくしていた。

「うん。楽しみにしてるね」

 リンはマーサに手を振り、馬車へと向かった。


 ◇

 

 カナタは夏休みに書いた論文が評価され、学園に通いつつ王立魔法研究会に所属するという多忙で充実した日々を過ごしている。

 そしてエマもまた、学園生活を続けながらロン殿下と正式に婚約を果たした。魔導士の夢は諦めていないようで、勉強に余念がない。近々婚約パーティーが開かれる予定だ。


 ◇


 小高い丘の上、墓地が広がるそこからは穏やかな海が見える。ここはリンの故郷——かつてのランドゥ王国である。

 墓前に色鮮やかな花を供え、リンがゆっくりと立ち上がる。風が吹き抜け、彼女の背まで伸びた美しい黒髪を優しく揺らした。

 亡き両親への報告は山程あった。何せ、あの日以来初めて訪れることができたお墓参りなのだから。

 

「リン」

 少し離れた場所で見守っていたレイが、穏やかな声で彼女の名を呼んだ。

 リンは両親に心の中で別れを告げると、レイの元へと駆け寄る。

 

 無事、魔導士試験を最高得点で突破したリンは、正式に王位継承権を辞退した。

 そして、リンは今も親しい仲間以外には正体を隠したまま、一生徒として元気に学園へ通い続けている。

 

「やっぱり黒髪が似合うね」

 レイが愛おしそうにリンの髪へ指を滑らせる。本来の姿で過ごすことに、最近やっと慣れてきたリンである。

「行こうか」

「うん」

 どちらともなく手を繋ぎ、歩き出す二人。

「このまま旅行にでも行きたいね」

 レイがキラキラと光る遠くの海を見て呟く。

「今回の公務が終わったら……いいかもしれないね」

「いいね。俄然やる気が出てきたよ」

 見つめ合い、優しく微笑み合う二人。その表情は、どこまでも幸せに満ちあふれていた。

読んでいただき、ありがとうございます。

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