関係性の変化
今日はポカポカしていて気持ちのいい日だ。リンは庭のベンチで日向ぼっこをしていた。膝の上には、猫姿のレイが丸くなっている。無意識にレイを撫でるリンと、されるがままのレイ。
「エマとロン殿下、上手くいってるかなぁ?」
「アドバイスしたんだろう? まぁ、ロンは多分、エマ殿に気があるから……心配いらないだろう」
「そうなの!?」
「ああ。気がなきゃ何度も誘わないだろう?」
さも当たり前と言わんばかりのレイ。
「そっか『言葉より行動を見る』だもんね!」
「私もリンが好きだから、今ここにいるわけ」
「へ!?」
確かにレイは行動が伴っているが、さらっと口にする言葉もリンの心臓を跳ねさせるのであった。
◇
その頃のエマとロン殿下——
「エマ殿、今日は二人で会っていただき、ありがとうございます」
「い、いえ。こちらこそ、お誘いありがとうございます」
挨拶をすませ、バラの咲き乱れる中庭でお茶をしていた。
「エミール、ユーリ、下がっていいよ」
「はっ」
緊張するエマを見て、ロン殿下が自分の従者を下がらせた。
「人が多いと気を遣うだろう? 少しは気が楽になったかな?」
「気を遣っていただき、ありがとうございます。では、私も……アンリも下がっていいわ」
「かしこまりました。お嬢様」
「エマ殿、それは……」
ロン殿下が少し焦っている。二人だけの空間になるのは、別の意味で緊張するのだが……エマは分かっていないようである。
「ロン殿下、私に敬語はいりませんわ。今は特に二人だけですし……」
エマは自分で言った言葉で、ハッと気づく。
二人だけ……! 私、殿下と二人きりじゃない!
「敬語を使わなくていいのですか? そうしたら、エマ殿も僕に敬語は無しでお願いしたいな」
ロン殿下に微笑みかけられ、エマは焦る。
「そ、それは流石に不敬です……」
「僕がいいと言っているんだから、不敬にはならないよ?」
「はい、承知致しました。ロン殿下……」
「それ、敬語じゃない?」
笑ったロン殿下は、今まで見ていたどの顔とも違った。エマはそのいたずらっぽい笑顔に、心を鷲掴みにされた。
「あ、えっと……わかったわ! でいいかな?」
おずおずと発言するエマ。
「うん。いいね!」
ロン殿下は、何やら楽しそうである。エマは落ち着こうと紅茶を一口飲もうとし、紅茶が手から滑ってしまった。
「あっ!」
熱い紅茶が手にかかる。
「エマ!」
ロン殿下が焦って立ち上がる。
「大丈夫です……すみません、少しかかっただけだから」
「見せて!」
咄嗟にロン殿下がエマの手を取る。
「少し赤くなってるね。すぐに冷やした方がいい」
「あ、あの……」
ロン殿下が目を閉じ、エマの手を両手で包む。ロン殿下の手から白い靄が発生する。
「あ、冷たい……」
エマがロン殿下を見上げると、目を開けたロン殿下と視線がぶつかった。
「氷の魔法だよ。応急処置にはなったかな?」
心配するロン殿下はエマの手を包んで離さない。エマは自分の頬が熱くなっていくのが分かった。
「あ、ありがとうございます……ロン殿下の魔法が見られるなんて……」
「エマ殿、敬語になってるよ?」
「あ! すみ……ごめん」
「ふふふ。城へ戻ろうか、宮廷医師に診てもらおう」
「そんな! 私がお城のお医者様にお世話になるなんて!」
「僕も付き添うから大丈夫。それにエマ殿は僕の大切な友人だ」
そう言うと、ロン殿下は優しく微笑んだ。エマは心臓が騒いで落ち着かない。ロン殿下はエマの手を優しく繋いだまま城へと歩き出した。
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