エピローグ
マーサは中庭で、大きなカンバスと向かい合っていた。久しぶりに描く絵、まだ何を描こうか決めていない。
「マーサ行ってくる……あ! 絵を描くの?」
リンが声をかけながらカンバスをみるが、まだ白いままである。マーサの左手は大分良くなってきている。もう筆が持てるだろう。
「リン様、行ってらっしゃいませ。リン様が帰るまでに一枚完成させておきます!」
久しぶりの作業に、マーサはわくわくしていた。
「うん。楽しみにしてるわ」
リンはマーサに手を振り、馬車へと向かった。
小高い丘の上、墓地が広がるそこからは海が見える。ここはリンの故郷、ランドゥ王国である。花を供えて立ち上がるリンの、長い黒髪が風に揺れる。
両親への報告は山程あった。何せ、初めての墓参りである。
「リン」
少し離れた所にいたレイが、優しく名前を呼ぶ。リンは走ってレイの元へと向かう。
無事、魔導士試験を突破したリンは正体を公表し、そして王位を退いた。
「やっぱり黒髪が似合うね」
レイがリンの髪に触れる。この姿でいる事に、最近やっと慣れ始めたリンである。
「行こうか」
「うん」
どちらともなく手を繋ぎ、歩き出す二人。
「このまま旅行にでも行きたいね」
レイが遠くの海を見て呟く。
「公務が終わったら、いいかも」
リンも満更でもない。
「いいね。俄然やる気が出てきたよ」
見つめ合い微笑む二人は幸せそうであった。
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