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魔導士は猫になりたい  作者: 紙絵


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エマの極秘お悩み相談

 エマは王太子様と会った日から、少しずつ心境に変化が表れ始めていた。


 私が『舞踏会や、王太子様の立場にまったく興味がないから、興味を持った』と話していたロン殿下……でも、私がロン殿下本人に興味を持ってしまったら、それはどうなってしまうのかしら……?

 

「リン、私の知り合いの話なんだけどね……」

「うんうん?」

 二人は図書館で声を潜めて話をしている。カナタとライラは先に帰ったが、座学が苦手なリンとエマは居残り勉強が終わった所である。

「気になる人がいるんだけど、どうしたらいいか分からないみたいで、その人は自分より身分が上で、普段は表情が分かりづらくて、何を考えているのか読めないの」


 十中八九、エマと王太子様のことね……!


「そ、そのお相手の方とは、近いうちにまた会う予定はあるの?」

「ええ。今週末に会う……らしいのよ! だから、その時に、少しでも相手の気持ちが分かったらいいなって言ってたわ!」

 エマは少し顔を赤くしながら、早口で話す。リンはそんなエマを微笑ましく見つめる。


 私も恋愛には疎いし、何か良いアドバイスができたら……そうだ!

 

「エマ、私に任せて! きっといいアドバイスを考えてくるから!」

「……うん! あ、ありがとうリン」

 リンが自信満々に胸を叩くと、エマは一瞬呆気にとられつつも、少し困惑したように笑った。


 ◇


 屋敷に帰宅したリンは、すぐさまレイの執務室へと突撃した。執務室で休憩中のレイとマドカがお茶を飲んで寛いでいた。

「ロン殿下はエマの事、どう思ってるのか知ってる?」

 リンの直球の質問にマドカが、思わずゴホゴホと盛大に咽せた。

「え? さぁ……なぜ急に?」

 驚くマドカをよそに、リンは真剣な眼差しでレイに相談する。レイは深く頷くと、迷いなく立ち上がった。

「わかった。それならロン本人に聞くのが一番早いね!」

 今すぐにでも窓から飛び立ちそうなレイを、マドカが青ざめた顔で慌てて引き留める。

「レイ様お待ち下さい! こういう事は、もっと慎重に致しませんと……!」

 引き止められたレイとリンは、示し合わせたように同時に首をかしげた。

「そういうものなのか……?」

「私にも恋愛のお勉強は難しくて……」


 ……本当に、このお二人は似たもの同士ですね。


 マドカは密かに心の中で深いため息をつくと、二人に向けて優しく言い聞かせるように語りかけた。

「レイ様は色々と直球なのでアレですが……エマ殿は、おそらくまだ迷っておいでです。ロン殿下も気になっている段階で、お互いに様子を探り合っている状態なのです」

「へぇ! マドカ様、さすがです!」

「なるほど……」

 マドカの見事な分析に、リンは目を輝かせ、レイも感心したように頷いている。

「ゴホン、ですのでここはリン様が、ロン殿下の事をさり気なくエマ殿にお伝えしたらいいかと思います」

「さり気なく伝えるのね! 私、頑張ります!」

 リンはやる気満々で、ギュッと小さな両拳を握りしめたのだった。


 ◇


 翌日、リンは意気揚々と学園の門をくぐった。


 昨日、マドカ様にロン殿下について色々聞いたんだから、きっといいアドバイスができるはず!


「エマ!」

 教室に入るなり、リンはエマを探す。エマはカナタとライラとで話していた。

「リン、おはよ……」

「皆んな、おはよう。エマ! 昨日の話なんだけど!」

「あ——っと、それは後で話しましょ!?」

「そっか、うん。分かった!」

 どんどん話し出すリンを、エマが急いで止める。

「昨日の話って?」

 カナタがエマを見る。

「な、何でもないの……! ちょっと、友達の事でリンと話してただけ!」

 エマが冷や汗をかきながら、弁解している。

 

「そういえば、この前レイ魔導士が学園に来たって聞いたけど……」

 ライラが皆んなに訊ねる。話題が変わったことに、エマは密かに息を吐いたが、反対にリンは一気に緊張した。

「そうなんだよ! あれは驚いたなぁ。ライラ、見られなくて残念だったね……」

 カナタが思い出して、うっとりしている。

「私も会いたかったな……」

「ライラはなんでその日遅刻したの?」

 リンが疑問を口にする。

「母と弟の……お見舞いに行っててさ」

 ライラは少し寂しそうに口にした。リンは何故だか、その様子に胸が締め付けられた。

 その時、予鈴が鳴り響いた。後ろ髪を引かれながらも、それぞれ席に着いたのだった。


 ◇


 休み時間、エマはリンの手を引き、屋上テラスへと向かった。

「昨日の話だけど……」

 エマが少し恥ずかしがりながら、リンに問いかける。リンは改めて気合いをいれる。


 今こそ、マドカ様のアドバイスを実践する時だ!

 

「うん。えっとね! エマの友人の気になる人は、気持ちが分かりづらいのよね?」

「うん! そうなの!」

 エマが激しく頷いている。

「人の気持ちはね、『言葉より行動に出る』の。だから、自分の事を大切に扱ってくれていたら……相手もきっと好意を感じてるんじゃないかしら?」

 リンの言葉に、エマは目を輝かせてリンを見ている。

「リン、凄いわ! ……そうね、行動を見たらいいのね! 勉強になったわ。友人に必ず伝えておくわね!」

 エマの様子にリンは達成感を感じていた。


 少しでも力になれて良かった……!


 リンは心の中で、エマにエールを送るのであった。

読んでいただき、ありがとうございます。

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