夏休み
朝起きると、隣にレイが寝ていた。
「ひゃっ!」
びっくりしたぁ。しかし珍しい、いつも早くに起きているのに……。
最近は一緒に寝る事に慣れてきて、動揺も少なくなってきたと思っていた。
「おはよう」
レイが眠そうに目を開ける。寝起きからキラキラしている。
「おはよう。レイ、今日は遅いね?」
「うん。休みだからね。リンは今日は、お友達とお茶会だっけ?」
「うん。エマとカナタとライラ」
「そっか。ペットも連れていく?」
「家にペットはいません」
「ダメか……」
「ダメです!」
悲しそうなレイはリンをぎゅっと抱きしめる。急な展開にリンの心臓が跳ね上がる。
「れ、れ、レイ⁈」
「気をつけ行ってきてね」
「は、はい」
真っ赤になり、固まるリンを見てレイは笑っている。レイは本当に心臓に悪い。
◇
エマの家は都の南側、海の近くにあった。馬車に乗せられて辿り着いたそこは、立派なお屋敷だった。大きな門に広々とした中庭、レイの屋敷ほどではないが、エマがお嬢様なのは確定である。
「お待ちしておりました。リン様、どうぞこちらへ」
水色のワンピースを着たリン。髪は軽く巻いて一つにまとめている。
因みにこの姿を見たレイは、リンは何を着ても似合うねと言っていた。
従者の方が屋敷を案内してくれる。
「お嬢様はサロンでお待ちです」
そこにはライラとカナタもいた。皆、いつもより着飾って、少し緊張しているように見える。
「リン! ありがとう、きてくれて。そのワンピースとても似合ってる!」
主催者のエマは、薄いピンクのワンピースで清楚なお嬢様というイメージだ。髪はハーフアップにしている。
「エマも可愛いよ。遅くなってごめん!」
「ライラも……」
「やめて」
間髪言わずにライラが言い放つ。ライラは白のワンピースだ。長い金髪は一つに結ばれている。
「あはは。カナタもカッコイイね」
「ありがとう……兄から借りてきた」
エマが伝えると、カナタは少し照れているようである。白いシャツが眩しい。
友達とお茶会をするなんて、今までのリンの生活からは考えられない変化である。リンは改めてレイに感謝した。
「さぁ始めましょう! かしこまったお茶会じゃなくて、バイキング形式にしたの。好きな物から好きな順番で食べれるのよ」
エマがニヤリと笑う。
「わぁ」
リンが目を輝かす。
「美味しそうだね!」
カナタがメガネを上げた。
「これ、食べたい」
ライラはもう、何を食べるか決めたようだ。
緊張していた面々も、堅苦しいお茶会ではないと分かって安心した様子である。
甘い物を食べて、緊張感はなくなりリラックスした面々。
「カナタ、お兄さんいるんだね? お兄さんは魔法使いなの?」
リンが質問する。
「ううん。兄は魔法騎士団の隊長なんだ」
「ええ! すごい」
ライラが声を上げる。
「お兄さん凄いのね!」
エマも驚いている。
「魔法騎士団ていえば、魔法も剣も使える一流の集団よね。騎士団が手に負えない案件や、魔法が絡んだ事件に出動している優秀な方々……鍛錬も気合いが入っていて素晴らしかった覚えがあるわ。その隊長なんて……」
リンも驚いた。驚きすぎて王女の部分が大分出てしまっている。
「リン詳しいね!」
カナタが感心している。というか、皆に注目されている事に気が付き、我にかえるリン。
「あはは、そう、私好きで詳しいの!」
頑張って誤魔化す。
「エマ、今日はありがとう」
リンが手を振る。
「すごく楽しかった!」
カナタも笑っている。
「ケーキ美味しかった」
ライラはお腹をおさえている。
「こちらこそ、楽しかったわ! またやりましょう」
皆、手を振り別れた。
◇
「ただいま」
「お帰りなさいませ。リン様。少しよろしいでしょうか?」
お屋敷に戻ると、マドカが待っていた。レイの部屋に通される。
「おかえりリン」
椅子に座ってお茶を飲むレイ。ただお茶を飲んでいるだけなのに、絵になるレイである。
「ただいまレイ」
「お茶会どうだった?」
「うん、楽しかったよ」
「それは良かった」
笑顔で微笑む二人。
「マドカが新たに情報を仕入れてきてくれたよ」
「はい、リン様。弟子と思われる人物は、リン様のご学友の中におります」
「……そうですか」
俯くリン。
「例の魔法使いを誘き寄せるために、策を講じたいと思います。リン様もご協力いただきたい」
「はい。もちろんです」
リンはマドカの目を見た。
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