↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暁の皇子  作者: さら更紗
Ⅵ 破壊
138/151

Ⅵ 破壊 -5

 


「ドムから都へ行くときも、見えたわ」

 燦は、前方に聳え立つピラティウス山を目にすると、ほぉっとため息をついた。

「何回見ても、素晴らしいわ」

「ガザからは見えないの?」

 身を乗り出さんばかりに、ピラティウス山に釘付けになっている燦に、ターシャは呆れたように声をかけた。

 ピラティウス山を含むこの山脈は、ガザとアウローラ公国の国境になっている。

「この一番高い山は見えないと思う。見えていても、他の山の後ろになっているのかな。だから山脈全体で、黄神山脈とか、神々の山とは呼ぶけど、一つの山に名前はついていないの」

「へぇ」

「神々の山は、公国から見た景色の方が素敵だわ。特にピラティウス山の神々しさは、わたしでも感じる。ここを太陽神の聖地としたのも納得がいく」

 素直に他国を褒める燦に、ターシャは目を細めた。

 このおおらかさは、ガザが大国ゆえの余裕かしら。それとも燦自身のおおらかさなのだろうか。

 第一印象とは違って、燦が思ったより子どもっぽいことに、ターシャは驚いていた。好奇心が強く、王女としての立場を時として忘れ、誰に対しても質問する。気さくと言えば聞こえはいいが、王女としての威厳は薄らいでいた。

 ただ燦はいつでも真摯だった。

 その誠実さで、この人は信頼を勝ち取ることができる。

「ほら、神殿も見えて来たわ」

 ピラティウス山に抱かれるように建っている、白い神殿が見えてきた。

 また目を輝かせると思っていた燦の目は、しかし不思議な色になっていた。

「大神殿ね」

 燦は低くそう呟くと、思い詰めたような目で神殿をじっと見ていた。

 ターシャは何か言おうとして、止めた。触れてはいけないような気がしたからだ。

「何?」

 それまで燦の隣で、置物のように黙って座っていた彩が、急に顔を上げた。

 辺りを窺うように、首を動かしている。

「どうしたの?」

 ターシャが眉を顰めて訊いた。

 最初はナルにそっくりだと思ったが、数日一緒にいると、似ていないところも多かった。

 顔立ちもよく似ていると思ったが、造作そのものは少し違っている。雰囲気がよく似ているから、一見、ぎょっとするほどよく似ているように見えるのだ。

 性格は全く違う。ナルは慎重で、意外に周りに目を配っているし、気を使う。しゃべれないことを差し引いても、大人しい。

 だが、彩はよくしゃべる。自分の意思をはっきり表明するし、自分が思いついたまま、急に行動するようなところがある。

「誰かに、呼ばれている気がする」

 見えない目で、あちこち視ようとするように、キョロキョロしている。

「誰かって?」

 ターシャが訊くと、彩は横に首を振った。

「奏かしら?」

 燦がそう言うと、彩はまた首を振った。

「違う。もっと大きなもの」

 ターシャと燦は顔を見合わせた。

 全く分からない。

 彩は、今度は、身を縮めて小さくなろうとした。

「……怖い……」

 そう言って、震え出す。

「行きたくない?」

 燦がそう訊くと、彩は顔を強張らせたまま、また首を横に振った。

「行かなきゃ。奏もきっと来るから」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。