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暁の皇子  作者: さら更紗
Ⅴ 神の血
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Ⅴ 神の血 -7

 


「連れて行けるわけないだろう?」

 昂は呆れた顔で、全身黒づくめの女を見た。金色の髪には、昂と同じように黒い布を巻いている。全身も隠密のような黒い装束だ。どんなつもりでそんな服を荷物に忍ばせ

 て来たのか。バツの悪い顔をしている燦に、昂は怒るつもりが、思わず吹き出してしまった。

 ドムには一日しかいない。少し町を回ったくらいで、奏の行方が分かるとは思えなかったが、もし町の中にいるのなら、彩が何か感じるかもしれない。二人は少し、町に出てみることにしたのだ。

 それを燦に断ろうと部屋に赴くと、燦がその姿で待っていたのだ。

 この姿では目立つだろうなぁ。

 黒づくめで町中を歩いている燦を想像して、また笑いそうになる。

「奏を探してみようと思っているんだよ。燦は奏を知らないだろ?」

 昂は優しく言ってみた。燦は下を向いている。ぼそぼそとしゃべり始めたが、うまく聞き取れない。かろうじて、最後の言葉だけが聞き取れた。

「彩と同じ歳の男の子でしょ?」

 七歳の男の子が、一体何人いると思っているのだろう?

 狼公の館での時も思ったが、燦は悲壮な覚悟で物事に挑むのだが、どこか楽観的だ。

「つまりは、外に出たいわけだ」

 昂はわざと意地悪く言った。

 燦は窺うように昂を見上げた。

「この部屋に籠っていたのでは、ドムに来た甲斐がないと思わない?」

「王女として、知見を広めなくてはいけないしね?」

 わざとらしく言ってやると、燦は素直に何度も頷いた。

 昂はため息をつき、燦の姿をもう一度眺めた。

「どうしてそんな恰好を?」

 城を家出し、各地を放浪した燦は、お忍びで町に出る時の適切な服装くらい分かっているはずだ。実際、王族を知らなかったとはいえ、昂は燦が普通の娘だと、信じて疑わなかった。

「髪を染めるわけにいかないと思って。そうしたら、布で隠すしかないでしょ?」

 そう言って、燦は頭の布を取った。布に覆われていた髪が、解き放たれて喜ぶように、スルスルと流れ落ちた。

 滑らかな淡い金髪。

 昂は呆れながら見とれていた。

 どうして結わずに覆っていたんだ?これではすぐに布が外れてしまう。より目立つ演出で、金の髪は露になってしまうだろう。

 昂は黙って燦の後ろに回ると、髪を編んでやった。

 子どもの頃、祖母の柳が寧の髪を編んでいるのを横で見ていた。それは織物を織るように淀みがなく、見ているのが楽しかった。昂は弟の陽ほどは器用ではないが、妹の夕よりは細かい作業が好きだった。見様見真似で、妹の髪を編んでみたものだ。じっとしていられない妹は、すぐに逃げ出そうとしたのだが。

 燦の金色の髪は編み込まれ、長く垂れさがっていない分、目立たなくなった。若い娘が巻くように、綺麗な布を頭巾にすれば、さほど目を引かないだろう。

 燦は頭をそっと触って、驚きの声を上げた。

「どうやったの?」

 燦の驚きと嬉しさが混ざった顔がこそばゆくて、昂はわざとはぐらかせた。

「服は前に町で着ていたのがいいよ。持って来ている?なければ、俺、買ってくるよ」

「あるわ!」

 燦は嬉しそうに叫ぶと、昂を部屋から追い出し、ドアを閉めた。

 扉の前に残されて、ぼんやりしていた昂の後ろで、楽しそうな声がした。

「綺麗な髪だったね」

 彩の存在をすっかり忘れていた昂は、飛び上がった。そっと振り返る。

「視えたの?」

 恐る恐る訊くと、彩は肩をすくめた。

「昂の心がね」


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