Ⅳ 運命 -32
燦は宣言通り、午後の訓練には姿を見せた。金の髪を高く結い、白の道着を着た王女はなかなか凛々しかった。
良が口笛を吹き、手をたたくと、他の兵士たちに睨まれてしまった。
櫂も姿を見せ、大将閣下のお出ましに、兵士たちに緊張がはしった。
どうやら王女には、国軍大将自らが手ほどきするらしい。
「俺らと扱いがあからさまに違うな。隼じゃダメなのか?」
「俺なんて呼ばれもしないよ。怪我させるわけにいかないからね。俺は少々どうなってもいい良さんみたいな人を教えるくらいが、ちょうどいい」
「ひでぇな」
良と隼が、こそこそと話している。良はあんなに隼に文句を言った割には、気が合うらしく、文句を言いながらも、隼の指示に従っていた。
もともと動ける良は、隼の言うこともピンと来るらしい。隼の言うとおりに動いてみて、そちらの方が楽に体が動かせることに、素直に感心していた。ただ、基礎体力の向上訓練には、文句しか言わなかった。
「俺みたいな年寄り捕まえて、馬鹿じゃないのか」
「息が上がって死なれても困るからねぇ」
隼にいなされると、口を噤んで、しぶしぶやり始めた。
昂にとっては、あらゆることが新鮮だった。針森では喧嘩はするが、戦うすべを学ぶことはない。獲物を仕留める技術は磨くが、それを人に向けることはない。
しかし、子どもの頃から、森を駆け回り、獲物を仕留めてきた針森の人間は、身体は出来上がっている。使い方を学べば、面白いように身に付けることができた。
息が上がりつつも、自分が成長している実感に興奮している昂に、隼はニッコリ笑って言った。
「さすが。あとは筋力かな」
昂も良と並んで基礎訓練に励みながら、燦と櫂を盗み見した。
剣を振り、型を何度も繰り返している。
「綺麗な型に見えるけどな」
一息ついて汗をぬぐいながら、昂が隼にそう言うと、隼も燦に目を向けて「ああ」と苦笑した。
「几帳面で努力家だからな、姫様は。型は完璧だよ。ただ問題は」
頭を掻きながら困ったように言った。
「実際に剣を受ける気も、剣を誰かに向ける気もないことだよな」
櫂が手にしていた木の棒で、燦の剣を払った。燦はあっさりと剣を取り落とした。
見ていた隼がため息をついた。




