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98/256

98 その後1


 私の目の前には、無惨な姿の男たちが転がっている。


 せっかく手加減して魔法を放とうとしたのに、シーナから急に話しかけられ、つい驚いて強めになってしまった。


 ま、いっか。死んではいないようだし。

 それに、この方が動かしやすいし。


 問題があるとすれば…………


 さっきから、私のことをめちゃくちゃ見てる、捕まってた女性達だ。

 私、恐れられてない?

 バルナ以上に怖がられてたら嫌だよ?


 とりあえずは、ここに転がっている男たちの処理だ。

 私は風魔法を使い、バルナ達を地上まで運ぶ。

 土魔法で身体を拘束した後、水をかけて全員の目を覚まさせる。


「いつまでも寝てないで。起きて話を聞いてくれるかな?」


 バルナがかろうじて言葉を振り絞る


「こ、小娘ごときが…俺様に…こんなことをして……」

「もういいバカもほどほどにしてよ。疲れるわ」


 ここまでとなると、もう手の施しようがない。

 

 …あ、そうだ。

 確か便利な手紙があるんだった。


「この手紙わかる? 私があんた達の身柄を拘束する権限を保証する文章よ」

「そんな……バカな………」

「バカはあんただって。しつこい」

「そ、そんなもの! 誰が信じる!」

「バルナ様……国王の刻印が押されております…あれは偽造のしようがありません…」

「っ……」


 部下は諦めて素直になってるね。

 私の立場を知ってるからなのかね。


「あぁそれと、あんた達が使い捨てにしようとしていたジェルドさん達は、私が既に避難させてあるから」

「なっ、何を言っている! ここには血が残っているじゃないか!」

「あぁそれ。それあの気持ち悪い人殺しの血だよ」

「なに……?」

「あんたが雇った男の血だよ。口から血吐いて倒れるまで殴ったから、飛び散ってるんだよ」


 多少大袈裟に言っておく。

 こいつらも多少はビビって素直になるでしょ。


「そんな……あいつは元だが冒険者ランクAだぞ…」

「バ、バルナ様……こいつは、例の国家魔法師総代のリン・フォーセルです……」

「なっ!? こんな小娘が─────ァッ!?」


 腹が立ったので一発殴っておく。


 よし、静かになった。

 あとは、テアに任せよう。


「テア。こっち見張っててくれない?」

「うむ」




 私は地下に降りてすぐ、魔法を使って檻を曲げ、出口を作った。


 けど、なぜか誰も出てこない。


 …これは、間違いなく怖がられているね。


「あっ、あの……あなたは……」


 キーアが話しかけてくる。


「みなさん、もう大丈夫なので安心してください。男性の方達も、私が安全な場所に避難させてあります」


 反応がない。


 まぁ、状況が整理できていないのかもしれない。

 なんせ、今の今まで放ったらかしだったからね。

 とりあえずあいつらを片付けてからにしようと思ったのだが、裏目に出たかもしれない………。


「実は、丸一日ほど、この子があなた方の側にいたんですよ」


 テアを一瞬だけ呼び、頭を撫でてあげる。


「だけど、色々あって、すぐに助けてあげられなくて、その。ごめんなさい」

「あの……」

「あ、そうだ。これ、私のカードです。皆さん確認してもらっていいですよ」


 私はキーアに市民カードを渡す。


 キーアの顔が驚きながらも、安堵に包まれ、どうやら少しだけ笑顔を取り戻している。

 

「…こ、これは…? 本物ですか…?」

「もう! 本物ですから!」

「ふふっ」


 キーアの笑顔を見てか、檻の中にいた女性達が続々と出てくる。

 私のカードがたらい回しにされている。

 中にはカードを見た瞬間喜びのあまり泣き崩れる者もいた。


 少しの間黙っていた私は、皆んなに現実を報告する。


「皆さんには、報告しなければならないことが…あります…」


 全員の空気が重たくなる。

 しかし、先程の重たさとは何か違う。


「今回連れ去られてきた人たち、つまりキーアのお爺さん達はすでに救助して、今は王城で安全に確保しています」


 だけど…


「でも、以前連れてこられた方達は…その……」

「リンさん、もういいのよ。わたしたちも、わかっているから」


 1人の女性が声をかけてくれた。


「その、ごめんなさい……。私がもっと早く気づいていれば……」

「いいのよ。そんなこと言うのはやめてちょうだいね。リンさんに助けられた人がたくさんいるのよ、それが現実。わたしたちも、その1人よ」


 30人ほどの女性達が私に笑顔を向けてくれる。

 

 ─────涙を浮かべながら



 ─────笑顔を向けてくれる。



「なんでリンさんまで泣いてるのっ」

「う、うぅ……」

「慰める立場が逆よ。わたしたちは大丈夫だから、ほら」

「だ、だってぇ……」

「こまったわね」


 大切な人を失いたくないというのは、この世界に来てよくわかった。

 前の世界では大切な人などいなかった私だけど、今は大切な人がたくさんいる。


 そんな人を失い、自分までもが死ぬよりつらいかもしれないことに巻き込まれていたのだ。


 ……泣いてる場合じゃない、私。

 まだやることがあるんだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 知らずに動けなかったのと知ってて動かなかったでは違うからね。後者の方が質悪い
2021/12/15 08:55 退会済み
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