95 盗賊退治6
『リン。きたぞ』
『んぁ〜。もうそんな時間?』
テアが見張っていた時間に、例の悪人たちが近づいてきたようだ。
起きてみると、見張りも寝ている。
大丈夫かよ。
女性達は……
眠れるわけないか。
待っていると、上から怒鳴り声が聞こえてくる。
「おい! あいつには後処理まで綺麗にやるように依頼したはずだ! 血が残ってるだろ!」
「もっ、申し訳ありませんっ! やるように言い聞かせておきます!」
「フンっ! 報告にも来ず、呑気に酒でも飲んでやがるんだろ」
「バルナ様…あまり大声を出されては…」
「黙れっ!!」
「も、申し訳ありませんっ!!」
どうやら5人いる。
3人は選りすぐりの護衛かな?
残り2人のうち1人はジェルドさんに指示していた商業ギルドの男だ。
ジェルドさんにはあれだけ上から指示していたのに、今はペコペコとへつらっている。
そしてその横にいるのが、例の商業ギルドマスターだろう。名前もバルナと言っていた。
4人が地下に降りてくる。
護衛の1人は上で見張っているようだ。
地下を見張っていた2人が目を覚ます。
「ヤベっ!」
「きたぞ」
2人は、大慌てで立ちあがり、これまでとは大違いに背筋を伸ばしバルナを迎え入れる体制を整えた。
媚びへつらってる人たちは、漫才してるみたいでなかなか滑稽だね。
「バルナ様っ! お待ちしておりました。異常はありません!」
「フンっ! 異常があればお前たちの責任だった。命拾いしたな」
「は、ハハッ…そ、その通りでございます」
「それで、どいつだ?」
「ハッ! こちらの6人になります」
「フンっ!」
そういうとバルナは檻に閉じ込められている女性達を覗き始める。
今すぐ捕まえてもいいけど、完全に言い逃れできない場面まで待つ。
「おい! お前、こっちにこい」
「ひっ……お、お母さんっ…」
「早くしろ!」
「な、なにもしないで…この子には…なにもしないでください…」
「なんだ? お前達親子か? フハッ! さっさとしろ」
見張りの2人が檻を開け、私と同じ歳ほどの女の子を脅し、檻の外に出す。
この子は、ジェルドさんの孫娘さんのキーアだ。
「やぁっ!! おかあさんっ!! や……やだっ…」
「キーア!! お願いっ! お願いだから! その子は助けてあげてっ!!」
「うるさい!」
「きゃぁっ!」
ジェルドさんの娘さんであるレリーアさんが、見張りの男に突き飛ばされる。
「ふ〜。どれどれ。ん〜〜〜。キミはいい顔をしているねぇ〜? グフッ」
「や……やだ…おかあさん……」
気持ち悪すぎる。
この男、気持ち悪すぎる。
さすがにここまですれば、言い逃れなどできない。
「やめて……っ!! うちの子を返して!」
「フンっ! たっぷり可愛がってやるから安心しろ。ふ〜ぅ。これはいい声で泣きそうな子だぁ〜っ」
気持ち悪い。
バルナがキーアに手を触れようとする。
絶対にその汚い手では触れさせない。
─────ドゴォッッッッッッ!!!
私は思いっきり、バルナの横っ面を蹴っ飛ばした
「「「「「 なにっ!? 」」」」」
護衛と見張りが呆気に取られている。
無理もないね。
身分を明かす必要があるため、仕方なく認識阻害姿を見せる。
「クズのみなさん、初めまして」
全員が突然現れた私に、驚いた表情をしている。
「こんな朝早くから、さぞお元気な様子で」
「だっ、誰だお前は!」
見張りの1人が私を睨む。
バカなのか、立場がわかっていないようだね。
「ここにいる者には、一生かけて罪を償ってもらいます」
「俺の質問に答えろ! だれだお───ゴガァッ!?」
しつこい見張りの男を、風魔法で壁に目掛けて突き飛ばした。
さっきキーアさんを突き飛ばした罰だ。
男は血を吐きながら倒れている。
かろうじて意識はあるようだ。
「テア。上にいるやつも連れてきて」
「よかろう」
すると、上から「ギャァっっ!」という叫び声が聞こえたと思えば、目の前にはすでにボロボロになった護衛の男が横たわっていた。
「これでよかろう?」
「うん。いいよ」
突如現れた瀕死の護衛に加えて、人間ではない生物。
私とテア以外の者の表情が混乱に陥っている。
「いつまで寝てるんです? さっさと起きてください」
バルナを私の前に転移させ、水魔法をかけて目を覚ます。
「バルナ様に何をする! タダで済むと思うなよ!!」
「私の名の下に、あなた方を牢獄に送ります。悪事は見ていましたので言い逃れはできませんよ」
「ふっ、ふざけるな! 一体お前みたいな小娘になんの権限があって!!」
「自己紹介がまだでした。私の名前はリン。リン・フォーセル」
「は! そんな名前聞いたこともな─────っ!?」
私の名前に思い当たる節があるのか、商業ギルドの悪人の顔が変わる。
「まさか……こんな小娘が……っ!?」
「あら? 私のことをご存知なんですね。じゃあ黙って従ってくださいね」
「お、おいお前ら! は、は、早くやれ!」
「「 は、ハッ! 」」
護衛の2人が私に魔法を放とうとする。
ちょうどいい。受けてみよう。
─────ゴフッ!
うーん。なかなかの威力だけど、ヘイード先生よりは劣るかな。
てか、爆風のことを考えてなかった。
砂埃がすごい。
「は、ははっ、はは! 所詮口だけじゃないか! おい、バルナ様を背負え! 早く逃げるぞ!」
護衛1人と見張り1人を見捨てて逃げようとする。
いざというときは仲間でさえもこんな簡単に見捨ててしまうんだね。
嫌なところが全部、垣間見えてるよ。
「────じゃあ次は私の番ね」
「「「「 なっ!? 」」」」
背後から聞こえた私の声に、バルナを背負った4人の足が止まる。
男たちが振り向く。
その視線の先には、笑顔で炎を纏っている私の姿があった。
盗賊編、いったんの区切りです!
今日は2話投稿の日なんですが、次の2話分が少し短く、視点が「96話 盗賊視点」「97話 シーナ視点」のため、夕方に2話一気に投稿します!
そのため、この95話を含めて今日は3話投稿にします!
96話と97話は夕方に2つまとめて投稿します〜!




