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94 盗賊退治5


「もう仕事終わってんのかよ!」


 国王の執務室に転移してきたのだが、そこに国王の姿はなかった。

 どうやらもう仕事は終わっているようだ。


 部屋を出て、近くにいたメイドさんを捕まえる。


「ねぇ、国王様って今どこにいるかわかる?」

「今でしたら、ご夕食も終わり、ご家族でお話をされておられると思います。もしいなければ自室かと」

「ありがとっ!」


 前に私がご飯をご馳走になったところよね。

 ちょっと距離があるから…。

 

 仕方ない。転移しよう。



「「「「「 リン (さん) (ちゃん)!? 」」」」」


 転移したら、どうやら家族でお話中だったようだ。


 なんかごめんね。


「家族団欒中、申し訳ないんだけどさ…」

「リン! ご飯食べにきてくれたの?」

 

 笑顔でフレアが私に話しかけてくる。

 ちょくちょく2人で夕飯を一緒に食べていたこともあったので、フレアとはだいぶん仲良くなった。

 

「ごめんねフレア。ちょっと国王に用事があって」

「むー」


 そんなあからさまに落ち込まないでよ。


「ちょっと出るぞ」

「いい?」

「構わん」

「リン! 今度はちゃんと私たちともお話ししてよ」

「また今度ね!」

「うんっ!」


 国王と一緒に部屋を出る。


「急いでるから廊下でいい?」

「構わん」


 私は急ぎで追加状況を説明した。


 ボロボロの殺し屋を王宮騎士団の牢獄に転移させたことや、ジェルドさんと同じ境遇の人たちがいたこと、そして護衛にはテアの分身体が後をつけているということなどだ。


「思ったより大変なことになっているな…」

「そうなんですよね」

「まぁよい。俺も今日は寝れなさそうだな」

「私だって頑張ってるんだからちょっとぐらい頑張ってくださいよ」

「もちろんだ」

「それで、明日襲撃予定の荷馬車なんですけど、やっぱりあの2人に護衛をやらせた方がいいですね」

「なら頼んでおこう」

「あと、元々捕らわれていた女性達が、新たに捕らえられた人たちに説明していたようなんですけど」

「うむ?」


 テアが聞いていたのだが、どうやら女性達が連れてこられた次の日朝早くに商業ギルドマスターがこの小屋に来て、品定めをするらしい。

 気に入ったものはそのまま連れ帰り、気に入らなければそこに放置され、別の者に売られるということだ。 


 見張りに気をつけながら、自分たちが置かれている状況を必死に説明してあげたのだろう。

 安心、とはいかないかもしれないが、これから起こることに覚悟を決めろ、ということかもしれないね。


「だから、商業ギルドマスターは明日の早朝ぐらいに来ると思うんです。それだと荷馬車の襲撃は早朝でほぼ同時刻だから、予定は変わらず実行されるはずです。私はそっちに行けないので対処できません」

「ふむ。なおさらあの2人に頼まねばな」

「1人も逃さないでくださいね。アジトに連絡が行くと、残りを捕まえるのが面倒になりますから」

「もちろんだ」


 あ、それと、次の襲撃場所はここから少し距離がある。

 私とテアは飛べるが、あの2人は移動するのに少し時間がかかるはずだ。


 最初は、シーナの貴族という身分を気にしていたが、ここまできてしまえば頼れる人は頼った方がいい。

 身分がバレないように、国側からも徹底してもらうことにしておく。


「あの2人にはなるべく早く伝えてくださいね。少し走らないと間に合わない距離なので」

「わかった。すぐ手配しよう」

「私からも言っときます」

「うむ?」


 2人に思念を送る。


『お2人さーん! 仕事だよ!』

『リン!? いきなり脳内に語りかけないでくれるかしら!』

『いつまで非常識なのよあんたは!』

『いきなり部屋に入ってくるあんた達に言われたかないわ!』

『それはいいの』

『よくないわよ。詳細は国王かサリナさんに聞いてちょうだい。じゃあ、忙しいから! またね!』

『ちょ、ちょっと! まちな─────』


 よし。これでOK。

 2人は納得したのか、呆れているのか、何も言ってこない。

 まぁ2人ならやってくれるよ。きっと。


 あとは…


「森の中にあるアジトに関しては、私が解決次第向かうことにするから、手を出さないようにお願い。道を間違えると強い魔物が出るから」

「まさか魔除けの魔道具か?」

「知ってる?」

「あぁ。それは各街の領主が保管しておるのだが、どうやら盗まれる被害があったみたいでな」

「じゃあその可能性が高いね」

「こりゃ3日は眠れんな」

「たまには仕事してくださいね」

「毎日しとるわ」


 絶対してないよ。

 座ってるだけでしょ。

 筋トレしてるだけでしょ。

 鍛えてるだけでしょ。


「じゃあ私行きますね」

「気をつけろ……ってのは無駄な心配か。ガッハッハっ!」


 くぅ〜!なんかムカつく!!

 しばきてぇ!


 半ば苛立ちながら、さっきまでいた小屋に転移する。





 うげ〜。

 血まみれじゃん。


 小屋に戻ってきたが、改めて見るとなかなかに血まみれだ。

 ちょっと強く殴りすぎたかもしれない。


 しばらくどうしようか悩んでいると、テアが話しかけてきた。


『リンそろそろそちらに見張りが行きそうだ』

『りょーかいっ』


 まてよ?


 これ使えるじゃん。

 このまま置いておこう。


 地下につながる階段から2人の話し声が聞こえてくる。


「なんで見に行くんだよ…」

「いいじゃねぇか! 明日の朝まで暇なんだしよ。どうせそろそろ終わってる頃だろ」

「だからって見に行かなくてもいいだろ…1回見たことあるが、あれはどうも…」

「お前知らないのか? 片付けまでやらせるようになったって話だ。後処理が面倒らしいからな」


 お〜。ちょうどよかった。

 なんかいい感じに後処理された感じになってる。この部屋。


「うげっ!」

「おいっ! 血まみれじゃねぇかよ…」

「後処理してんじゃねぇのかよ…」

「し、死体はねぇみたいだしな…してるのはしてるんだろ…」

「もう俺いくからな…」

「まてよ…!」


 興味本位で見にきた2人だったが、すぐに帰っていった。

 うん。いい感じに怪しまれずに済んだ。


 さて。後は結構暇だな。私も下行くか。

 2人の後をつけるように下へと降りる。


「テア。きたよ」

「上はいいのかえ?」

「なんにもないし、しばらくは大丈夫でしょ。人が来れば探知魔法にひっかかるし」

「用心がないの。一応妾の分身体を置いておこう」


 そういうと、テアの体からもう一体のテアが出てくる。


「すごいねそれ」

「ふふ。リンには無理かもしれんぞ?」

「どうして?」

「思考の扱い方が難しいのじゃ」

「なるほど。でもテアは今6体もだしてるよね?」

「単純な命令しか与えられんのじゃ。戦闘はまず無理じゃな」

「本当に見張るだけってことか」

「うむ。じゃが、そこに意識を向ければ視覚を共有することも可能じゃし、転移もできる」

「便利だねそれ」

「ふふふ。まぁ頑張って使えるようになってみよ」

「とりあえず後回しね。やらなきゃいけないことが溢れかえってるの」


 そんな会話をしながらも、女性達に定期的にヒールを使う。


 交代で眠りについたりもして、朝を待つことにする。

明日は2話投稿になります〜!

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