92 盗賊退治3
ジェルドさん達は、荷物を荷馬車へと積み込んでいる。
盗賊達はそれを見ているだけだ。
そして何やら、荷馬車の隠し床のような場所に砂糖を詰め込んでいる。
隠し収納部分には、砂糖の他にも、何か高級そうなものがちらほらみられる。
おそらくは、これが盗賊被害にあってるものだろう。
肝心の荷台はと言うと、おそらくは盗品ではないような布や食材が積まれている。
まぁ、考えれば当然だ。全部盗賊被害にあった荷物を堂々と積んでいては、怪しまれるからね。
盗賊にしては頭がいい。
さて、攫われた人たちはまだ現れていない。
おそらく、この人たちは生かされて何かしらの道具として扱われるんだろう。だからせめて、秘密は少ない方がいいといったところかね。
一方で、いま荷物を積んでいるジェルドさん達は、処分されると思う。
証拠隠滅の類だ。
しばらくすると荷物が積み終わり、ジェルドさん達は各自、荷馬車へと乗せられる。
どうやらこの世界のほとんどの人は馬が扱えるようだ。
まぁ確かに、移動手段といえば馬だからそんなもんなのかな。
「おい! 今から女どもを連れて来るが、舐めた真似はすんなよ? わかってんだろな」
1人の盗賊が圧をかけながらジェルドさん達を引き締める。
『テア。そろそろじゃない?』
『うむ。全員そちらに向かう』
「レリーア! キーア!」
ジェルドさんが2人の女の子姿を見て、思わず叫ぶ。
恐らく、娘と孫だ。
─────バシッ!!
「がァッ…!?」
「おいジジィ! 何勝手に喋ってんだ!」
「ッ…す、すいませっ…ん」
ジェルドさんに鞭のようなものが飛んできた。
その光景を見た2人は、完全に恐怖に身を支配されている。
私はジェルドさんにヒールをかけ、ジェルドさんにだけ聞こえるように思念伝達をする。
『ジェルドさん。落ち着いてください。気持ちはわかりますが、私に任せてください』
「…」
ジェルドさんは歯を食いしばり、少し頷く動作をする。
今すぐジェルドさんを殴ったやつをボコボコにしたいけど、ここはさすがの私も我慢だ。
攫わられた人たちの1番後ろにはテアが付いてきている。
もちろん、私にしか見えていないので誰にも気付かれていない。
「さっさとに馬車に乗れ。早くしろ!」
荷馬車に、女の人達が乗せられていく。
護衛役の自称冒険者も各荷台へと散らばっていく。
束の間の再開も、会話すらさせてもらえず、馬車は再び街へと走り出す。
道中、やはり行き道と同じように遠回りをしている。
『テア。何かおかしいことない?』
『魔物避けの魔法陣が張られておるな』
『なるほど。そういうのがあるのね。気付かなかった』
『魔物にしかわからんのじゃろ』
『テアは魔物なの?』
『どうなんじゃろうな。あまり意識したことはないが…』
『テアはテアだし。別になんでもいいよ』
『リンが聞いたのじゃぞ』
『えへへ。まぁいいじゃないの』
私とテアはそれぞれ、先頭と最後尾にいる。
先頭にはジェルドさんの馬車があり、私が同乗している。
『この魔物避けは人間が作ったの?』
『この世界にそれほどの技術があるとは思えんのだがな、とはいえ魔道具があるのも事実じゃ。過去の遺物とやらなのかもしれぬな』
『この世界もいろいろと謎が多いわね』
そんなことを話しているうちに、門の前へ着いた。
何やら護衛が手紙のようなものを見せる。
すると門兵は特に怪しむ様子もなく、荷台の中をサッと調べる。
荷台へと積まれている女性達は、どうやら寝たふりをさせられているらしい。
「長旅で疲れてまして」とか言われているのだろう。
実際に、荷馬車に人間が乗っているのはよく見かける。
門兵の軽い検問が終わり、すぐに街の中へと通された。
だいぶ甘い。
おそらく手紙の内容は、商業ギルドマスターや有力な貴族が口添えしてあるのだろう。
街に入った馬車は、商業ギルド近くにあった倉庫のような場所に到着する。
最初に出てきた商業ギルドの悪人がいる。
そいつが指示を出し、荷物を倉庫へと運ばせる。
だが、全ての荷物を降ろしたわけではなさそうだ。
どうやら、安全に売れるものは国内で売るようだ。
砂糖や盗品のほとんどが積まれたまま、馬車が歩き始める。
しばらく歩いていると、国の国境付近までたどり着いた。
中心部を離れるに連れ、段々と人がいなくなってくる。
国境付近は争いが起これば地獄を見ることになるため、好んで住み着く人はいないのだろう。
倉庫を出て1時間弱ほど経ったか、これまた小屋のような場所に着いた。
馬ごと荷馬車を小屋の中に入れる。
すると、護衛が別の指示を出す
「女は今すぐ降りてこい!」
荷馬車から女性達が怯えながら降りてくる。
小屋の地下へと連れていかれたため、テアについて行くようにお願いしておく。
『かなりの人が捕らえられているようじゃな』
『どれぐらい?』
『30ほどじゃ』
多いな。
捕らえられているだけで30人ということは、ここから居なくなった、つまりは売られたりした人たちを含めればもっといたと言うことだ。
この30人は絶対守らないと。
「荷馬車から降りろ!」
すると、護衛の1人がジェルドさん達に荷馬車から降りるよう促す。
「おい。後はいつも通りあいつにやらせる。俺はごめんだからな。適当に縛っとけ」
「さすがの俺たちも人殺しまではできねぇな」
人殺しという言葉に、ジェルドさん達の体が震え上がる。
しかし、人質を取られているのだ。
無理に逃げ出したりもできない。
抵抗なくジェルドさん達5人が縛られる。
「お前達には申し訳ないが、死んでもらうことになるだろうな。そんなものを楽しむ趣味はないので俺たちとはこれでお別れだ」
さっきから何言ってるの?
あなた達も同罪だよ?
絶対に逃さないから。
『テア。あれ、お願いね』
『よかろう』
私はここにくる途中、テアが教えるのを勿体ぶっていたことを教えてもらっていた。
最初聞いた時は驚いたが、テアならできても不思議はない。
護衛達5人が呑気な様子で小屋を後にする。
5人達は気づいてない。
それぞれの背後に
─────透明化したテアの分身体が付いていることを。
盗賊編はもうしばらく続きます〜っ!




