90 盗賊退治1
宿を出た私は、人が多い方へと歩いていく。
ジェルドさんを見張っていたヤツには、あくまで観光目的と勘違いさせるためだ。
1人で見張っているため、仮に私が観光目的じゃないと気づいたとしても、私のことを追いかけることはできないだろう。
ジェルドさんを見張るので精一杯だ。
角を曲がって、すぐに認識阻害を使う。
『テア? どう?』
『1人見つけた。リンのことも最後まで注意深くみておったし、こやつで間違いないじゃろ』
テアは宿を出る前から認識阻害をかけており、宿の近くに待機させてある。
『しばらく見張っててくれない? 私ちょっと国王のところに行ってくる』
『よかろう』
そう言って、城の中まで転移してきた。
「────おぉっ!? びっくりしたァッ!! ……って、リンか」
いつもは自分の部屋に転移してから来るんだけど、今日はちょっと急いでたので国王の執務室に直接来た。
「リンよ。来るなとは言わんが、せめて部屋の外から入ってきてくれ。急に現れると腰が抜けてしまう」
「ごめんなさいね。ちょっと急な用事ができちゃって」
「なんだ?」
「実は、今からルーズの商業ギルドマスターを潰しに行くんだけど」
「本当か!?」
「マジだよ」
私は、作戦はもちろんのこと、小屋の場所や襲撃予定の書いてあった紙を国王に渡した。
「もしうまくいけば今日潰す予定だけど、さっきも言った通り、荷物や女性達の受け渡しを明日やそれ以降の日にやられちゃうと、今日確実な証拠は抑えられないと思う」
「うむ。それはさすがの俺でも理解できる」
「だから、もし荷物の受け渡しが明日以降になるなら、その襲撃予定の荷馬車には十分注意させるようにしてほしい。なんなら、あの2人を付けときゃ問題ないでしょ」
「あの2人か…。また貸しができてしまうが、そんなことを言っている場合ではなさそうだな」
「中途半端に襲撃を追い払っちゃったり、小屋を押さえたりしないでほしい。もし生き残りが上に報告しちゃったら、全部台無しになるから。基本私の指示があるまで兵士や周りは動かさないでほしい」
「そうだな。この一件はリンに任せるとしよう」
そういうと、国王は何やら手紙のようなものを書き始め、手紙にハンコを刻印した後、魔力を流す。
その出来上がった手紙を渡してきた。
「お前の名前と役職は、すでに国中に知れ渡っておる。しかし、14歳の女の子だとは伝えてはおらん。素直にお前の言うことを聞いて捕まってくれれば良いが、もし暴れ出したり…というか間違いなく暴れるな。そうなったらこの手紙を使え。俺の身分保証付きだ」
「おー。なんか使えそう! 意外と気が利きますね」
「一応は国王だ」
「そうでした」
「俺もそんな一大イベントに同席してみたいが、執事や息子に怒られるのでな」
「この手紙で十分だから仕事してね」
「仕方ない。また今度誘ってくれ」
「遊びに行くわけじゃないんですから」
「ガッハッハッッッ! それもそうだ」
ほんと、いちいちこの国が心配になるよ。
帰り際に「試しに一発魔法打ってくれんか」と言われたので、この間馬鹿にされた仕返しも含めてちょっと強目に打ってやった。
今回ちょっと短かったですね。




