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89 事件の真相へと


 ジェルドさんの話を聞くため、宿へと向かう。

 道中様子を伺いながら歩いていたが、ジェルドさんは相当参っている様子だ。


 ジェルドさんが宿で部屋を借りる。

 一応、マナー的に私も1泊分のお金は払っておくことにする。

 泊まらないけど。



 借りた部屋に入り、机を挟んで座った。

 

 しばらく黙り込んでいたジェルドさんが、覚悟を決めたのか、ゆっくりと重たい口を開いてくれた。


「ワシの娘と孫が」


 ここで少し言葉が詰まる。

 が、次の言葉はまもなく聞こえてきた。


「─────攫われてしまってな」

「えっ」

「なんの考えもいらん。そのままの意味だ」

「もしかして、例の盗賊?」

「例と言うべきか、ワシは自分に起こっておること以外の事情は知らんのだ」

「実は………」



 私は以前にあったノーエさんの誘拐や、砂糖の盗賊被害などを説明した。


「もしかすると、いや、間違いなく、そいつらの仕業だの」

「どうして?」

「これを見てはくれないかい?」


 手紙なようなものだ。


 読んでいると……


 ────怒りが込み上げてくる。


 人を馬鹿にしているにも程がある。


「やつらに与える慈悲は微塵もなさそうじゃな」

「テア? そうだね。これは本気で潰さないとダメだ」


 突然現れたテアにジェルドさんは驚いていたが、どうやら説明せずとも察してくれたらしい。


 そんなことより、この手紙の内容だ。


「ジェルドさん。この手紙は信用できるの?」

「あぁ、間違いない。それと一緒にこれが入って…いて…な……」


 そう言ってジェルドさんは一つのネックレスを出した。


「これは、娘の旦那が、娘のために作ったネックレスだ。この世に一つしかない。旦那は死んでしまってな……。それ以来、肩身外さず…娘が…… 身につけていた…ものだ…」

「信じるよ」


 おそらく、お前の娘は攫っているから言うことを聞け、と言うための証拠のようなものだろう。


 同封されていた手紙には、ジェルドさんがこれからすべき行動が書かれていた。


 要約すると、こうだ。


 まず、ジェルドさんがルーズの街にいる、ある男に接触する。

 その男は、商業ギルドの男らしい。


 その男が紹介した護衛を付け街を出て、着いてこいとのことだ。

 おそらく、後の文脈から察するに、私が見つけたあの小屋まで連れて来られるのだろう。


 小屋で、人質である娘さんとお孫さんと合流した後、ジェルドさん、娘、孫、護衛を連れ、荷馬車を引かせ、再びルーズの街へと戻る。

 この荷馬車はもちろん、盗んだものが積んである。


 どうやら、その男が雇った護衛には何やら荷物のチェックをスルーできるような書類が渡されているらしい。

 そしてルーズの街へと入った後、護衛に従ってついてくるように


 とのことだ。


 もちろん守らなければ娘や孫の命はないと。


 とは言え、この通りに動いたとしても、最後にはおそらくジェルドさんは殺され、娘と孫は売られたりするんだろう。

 盗賊は自分たちの正体を晒すことなく金が入り、商業ギルドは放っておくだけで金が入る。


 商業ギルドも、使い捨ての護衛を経由させることで、自分たちとの関係をわかりにくくしているのだろうか。


 この街の商業ギルドは、王都にも引を取らないと言われている。それに貴族のバックアップもある。

 言わば、政界にも顔が利く大企業だ。

 どうしても危ない時は、金や権力で様々な証拠を握り潰してきたのだろう。


 もし、なんらかの不手際で荷馬車をチェックされたとしても、状況証拠的に盗んだのはジェルドさん達と護衛の仕業だと思われる。

 どれだけ騙されたと言っても、証拠がなければ終わりだ。


 なんせ、盗品や何やらを管理しているのは商業ギルドなんだから。

 

 どうせ護衛ともども処分だろう。


 ほんとに許せないね。


「途中で誰かに助けを求めたりしても…って思ったけど、監視されてるもんね」

「リンは知っていたのか?」

「ジェルドさん、明らかに周りの油断を誘ってたから」

「ほほほ。怪しかったか」

「ん〜どうだろ。盗賊って馬鹿だから大丈夫だと思いますけどね」

「それならいいがな」


 とにかく、ジェルドさんは大変なことになっている。


 ここに来るまでも監視され、娘達と合流しても、護衛という見張り役がいる。


 下手に動けば命はないかもしれない。


 それに、大切な娘と孫が攫われているのだ。

 心理的に、リスクを冒してまで変に助けを求めたりできないのかもしれない。


 よし。


 こうなれば、徹底的に潰す。

 私はすぐさまに作戦を立て、テアと議論しながら最善の結論を導いていく。




 しばらくして、結論が出た。


 ジェルドさん達家族には悪いけど、囮になってもらう。

 もちろん命の危険があれば話は別だけど。


「ジェルドさん。あなたたちには囮になってもらおうと思うんですけど」

「…」

「大丈夫。命は必ず守ってみせます」


 門を通らなければならない以上、危害を加えていれば門兵に怪しまれる可能性がある。

 少なくとも、街に入るまでは安全なはずだ。


「…ワシはどうでもいい。娘たちだけでも…」

「いや、ジェルドさんももちろん助けますから。絶対に」

「ありがとう」

「じゃあ、作戦を伝えますね。とは言っても、ジェルドさんは何もせず、ただ自分の身の安全を考えてほしいんですけど」

「わかった。約束は守ろう」


 とりあえず、ジェルドさんの不安を取り除いてあげよう。


「その前に、私こんな魔法も使えるので、ずっとジェルドさんの側にいるから、安心して」

 

 そう言って認識阻害魔法でジェルドさんの視界から認識を遮断する。


「なんだこれは!?」

「こういう魔法があるんです。もちろん内緒ですよ?」

「あ、あぁ……なんだこれは…驚いた…」


 魔法を解く。


「!? 驚かせないでくれ」

「あはは…ごめんなさい」

「全く、とんだ常識知らずな子だ…」

「うぅ。そんなこと言わないでくださいよぉ〜」

「悪い意味じゃない。これなら娘たちも任せられそうだ」


 ついでにテアも紹介しておく。


「この子は私の家族なので、安心してくださいね。ちなみに、私も勝てないくらい強いですよ」

「なんと…まさか、ドラゴンなどではあるまい」

「あれっ。正解です! ジェルドさん、ドラゴン知ってるの?」

「……?」

「?」

「知っているも何も、知らんものはおらんぞ?」


 あぁ、そう言えばそうだった。

 200年前のあれね。あれで語り継がれてるんだった。

 姿や形は御伽噺だからだいぶ着色されてるけど、ドラゴンという存在自体はみんな知っているんだった。


「危険はないので、安心して。あの話はちょっと間違っててね。この子は巻き込まれちゃった。あ、もちろんこれも内緒でお願いしますね?」

「あ、あぁ…」


 そう言ってテアの頭を撫でてあげる。

 目がトロォンってなってて、過去最高にかわいい。


「じゃあ、私行くので、ジェルドさんも自分の命を優先して行動してくださいねっ」



 ─────私の盗賊退治計画が、スタートした。


さてさて。本格的に盗賊退治がスタートしそうですねぇ〜!

異世界といえば、盗賊。というわけで、とりあえず盗賊騒ぎを起こしてみましたw


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