88 職権濫用(?)
今日は2話投稿です〜!87話を読まれていない方は先にそちらを〜!
そろそろ検問を通る頃だ。
「とりあえず、街に入ったら落ち着いて話せる場所に行きませんか?」
「本当に、信じていいのか?」
「まぁ、それについては証拠なんてありませんし、もし信じないならそれでも大丈夫です。私も無理にとは言いません」
私は市民カードをお爺さんに見せていた。
もちろん、このカードに書かれていることは内緒にしてもらうという約束だ。
約束を破られることもあるかもしれないが、別にどうということもない。
それに、このお爺さんはそんなことをする人じゃないと思ったから、こうしてお爺さんと話をしている。
それはそうと、言うまでもなく今の私のカードは大変なことになっている。
【国家魔法師総代】に【特任星級魔術師】さらには【大聖者】の称号までついている。
トドメは国の刻印付きだ。
そういえば、この国の魔術師としてのランクは7つに分かれているらしい。
下から順に
初級
中級
上級
王級
聖級
天級
星級
の7つだ。
本来、魔術師としての等級を上げるためには、試験のようなものにクリアし、身元をかなり保証してもらう必要があるそうなのだが、私は全ての過程をすっ飛ばして"特任"という扱いで星級になっている。
何気にこのシステム、私も最近知った。
なんなら7個階級あるのも最近知ったよ。
肩書きを理解しようとすらしてなかった私に、無事この肩書きを全うできるのかな……。
なんてことを考えていると、お爺さんが決意を固めたように話しかけてくる。
「長いこと生きておるが、ギルドカードの偽装など聞いたこともない。信じるしかないわい」
「よかった」
「それに、新たな役職が設置されたのも聞いていた通りのようだ。ほほほ。それがまさかこんな可愛らしい女の子だとは」
「まぁ見た目はその、子供ですけど…だから護衛もいらなかったんです。私より強い人、まだ見たことないので」
「ほほほ。こりゃとんでもない子に助けてもらえるのかもしれんな」
「あ、すいません。今更ですけど、リンっていいます」
「ワシこそ失礼した。名前はジェルドという」
「よろしくね、ジェルドさん」
「こちらこそよろしく頼む」
すると、ジェルドさんは周りにハッキリと聞こえるような声で、突如と喋り始めた。
「ワシがこの街のオススメを教えてあげよう! とは言え、どうしても外せん予定があるので少しだけだ。一旦、宿を借りてから、そこでプランを決めてあげようかの!」
直後、小声で私に話しかける。
「適当に乗ってくれ」
なんか、訳ありかな?
「やったぁ! この街初めてだから楽しみだ〜! お母さんにもいっぱい話すことできるかなぁ?」
「ほほほ。そりゃたくさん」
ふーん。さては、監視されてるのかも。
『テア、怪しいやつの魔力覚えといて』
『よかろう』
一応、テアにも警戒するようお願いしておく。
とにかく、怪しまれないように振る舞う。
なんせ検問がある。
さて、いよいよだ。私の検問。
よし、先手必勝!
「…あの、絶対に騒がないでください」
そう言いながら私のカードを見せる。
主に、国の刻印の場所をわかりやすく。
「お嬢ちゃん? 何を言って─────」
門兵の顔が引き攣っている。
「騒いだら職を失うかもしれません……。だから、冷静に対処してください。私は普通の女の子です」
「か、かし、こ、かしこまり、ま、ま、ま、し、した」
よし。とりあえず騒ぎにならずに済んだ。
どうやらサリナさんによると、国の刻印を押されている者の名前は、各地の領主に知らされるらしい。
なぜかって?
まず基本的に、領主にはそれ相応の権利が与えられている。
その一つが、領地への立入拒否だ。
ところが、国の刻印を押されている場合は、国の保有する全ての領土への立ち入りが許可されることとなる。もちろん、国が立ち入りを禁止していれば入れないけどね。
とにかく領主の権限では、私の立ち入りを禁止できない。
そのため刻印が押されている者の情報は、門兵にも伝わる。
私の場合は、名前と刻印があることしか伝えられていないみたいだけど。まぁ正直言って助かる。
さて、というわけで。
国王が立ち入りを許可している人物を、門兵程度の権力で立入拒否してしまえば…。
恐ろしいね。私の市民カード。
「脅迫してしまったみたいでごめんなさいね。だけど、騒ぎになられても困るので…その………ほら、この肩書きとか…」
「な、なる、ほど…リ、リン様は、お若いのに、その、た、大変で御座いますな…」
どうやら、門兵にはきちんと私の情報が伝わっているみたいだ。
ありがたいありがたい。
前みたいに門兵に不審がられるのも、なかなかの騒ぎに発展するからね。
その後、ジェルドさんも普通に門を通る。
これが普通なんだよ。
「全く、ワシもリン様とお呼びした方がよろしいのでしょうかな?」
「ジェルドさん! やめてくださいよ! 絶対にやめてくださいね! そんなことしたら、今すぐ帰りますよ!」
「ほほほ。そうかい。なら、1人の女の子として接するとするか」
「おねがいしますよ! ほんとに…!」
そんな会話をしながら、門を背に街へと向かう。
もちろん、「私が行った途端、門兵全員で敬礼とかも絶対やめてね。絶対にそのまま仕事してね」と門兵に釘を刺しておいたよ。




