87 1人のお爺さん
2話投稿の前半部分になります〜!
盗賊のアジトを後にした私たちは、なるべく森の中を捜索しながら街へと向かうことにした。
あと、夜にもう一度さっきの小屋まで転移で行ってみて、連れ去られている子がいれば、救出するというプランも立てておいた。
おそらく、盗賊が活発的になるのは夜だろう。
人目も少なくなる。
もし攫われた子がルーズの街に連れて行かれるとすれば、夜だ。
チャチャっと転移すればすぐ終わる話だし。
いよいよルーズの街が見えてきそうだ。
道中森の奥、魔物の姿はあったけど人間の姿はなかった。
もちろん、舗装されている道には人がいたよ。
さすがに上空から街の中へ降り立つのはマズイ気がするので、きちんと門を通って入ることにする。
どうかトラブルが起きませんように。
門兵以外、誰にも見られず入りたかったが、検問に列ができている。
どうやらこの時間は街同士の交流が多いのか、かなりの荷馬車がある。
それに、荷馬車に対して護衛の量が半端ない。
王都の冒険者ギルドで見たような格好の人たちがいっぱいいる。
おそらく、盗賊対策だ。
「お嬢ちゃん? 1人できたのかい?」
そんなことを考えていると、後ろから声をかけられた。
「あっ、はい。王都から来ました」
「王都からかい」
年齢はどうだろう。50歳過ぎくらいの紳士的なおじいさんだ。
「ご家族か護衛はいるのかい?」
「いえ、私1人だけなんです」
まぁテアもいるけどね。
「いくら道があるからって、1人は危ないねぇ。帰りは気をつけなさい」
「ありがとうございます」
「最近では…物騒な話もよく聞く」
お爺さんが暗い顔になる。
「もしかして、盗賊の話ですか?」
「お嬢ちゃん知っているのかい?」
「すこしだけですけど」
「そうかい」
しばらくお爺さんは黙り込んでしまった。
何か悩んでいる。
「この街は、危ない。これで護衛の人をつけて帰りなさい」
そう言ってお爺さんは私に銀貨5枚を渡す。
「え、いや! そんな、受け取れませんよ」
「この街は悪い奴らがいっぱいおる。表面的には平和だが、この街の裏は危ないんだ。もしお嬢ちゃんが巻き込まれればワシまで悲しい気持ちになろう」
どうやら、かなり私のことを心配してくれているようだ。
「私のことは、大丈夫ですから。すぐ帰る予定ですし、お金も持っています。帰りは護衛をつけてもらうことにしますよ」
「そうかい。余計なお節介をかけちまったようだね」
「そんな、見ず知らずの私のために心配してくださったんです。その行動は誇らしいものです。私も見習わなくっちゃ」
「ほほほ。これはよくできた子だ」
笑っているものの、どこか表情が暗い。
見ず知らずの私のことまで気にかけてくれる人だ。
もし何か困ってるなら助けてあげたい。
「お爺さんはどうしてこの街に?」
「……」
「あの、ごめんなさい… 無神経なことを聞いてしまったかもしれません」
「いいんだ」
「だけど、私なら何かお役に立てるかもしれません。聞かせてもらえませんか?」
お爺さんは私の顔を見つめる。
その顔は、不安、恐怖、疑問、悲しみ、怒り、様々な感情が写っているようだった。
とりあえず、少しでも気を楽にしてほしい。
そう思って私はさらに声をかける。
「私、こう見えてもこの国では偉い人なのでっ」
その言葉を聞いたお爺さんの表情には、僅かながらの安堵が宿っていた。
88話は17時に投稿予定です!




