84 魔導書
さて、とにかく今は魔導書だ。
ずっと気になってた。
「ヘイード先生。私も魔導書借りていいですか?」
「リンにこんな魔導書見せてもしゃーないやろ? まぁ全然構わへんけど」
「ありがとうございます」
そう言って、魔導書を一冊手に取っ─────
……えっ?
『なんじゃ? この感じは』
『ねぇテア。これ、もしかして』
『行ってみるかえ?』
『うん』
「ヘイード先生。ちょっと授業抜けます。これ、持ち出していいですか?」
「ま、まぁ本来はあかんのやけど……リンなら構わへんわ」
「ありがとうございます」
シーナとセリにも少し離れることを伝える。
2人はあまり気にしていなさそうだ。
私たちは転移魔法でディスヘルト地底湖に来た。
テアと初めて会った場所だ。
そしてここには、あの魔法陣がある。
バカ英雄の作ったバケモン魔法陣じゃないよ。
あれはもう壊したからね。
私たちの前にあるのは、カミサマと連絡を取るために使った魔法陣だ。
「ねぇ。この魔法陣、もしかしてこの魔導書と同じ魔力が流れてたりする?」
「さすがはリンじゃの。気づいたのかえ」
「なんか、すごく感じたことのある魔力? オーラ? なんというか、見たことある気がして」
そう、魔導書を手に取った時、私を異世界に送り込んだあのカミサマのオーラを感じ取ったのだ。
「実のところ、妾があの魔法陣を作るために、やつの存在に近しいものをここに埋め込んだのじゃ」
「あの壊した魔法陣にあったみたいに、テアも擬似的な神を作ることができるってこと?」
「まぁ同じとは言えぬだろうが、そういうことじゃ」
そんなことできるんだ。なんかすごい技術だ。
「まぁ、やつの前に妾が現れた時、かなり驚いていたがの。どうやら、一方的にしか干渉できんと思っていたようじゃ」
「そりゃそうでしょ。だってカミサマに会いに行くって中々できる事じゃないよ」
「そうかの? 妾が昔いた世界は天界も地上も地底も自由に行き来できおったぞ?」
「なんかすごい戦争起きてそう」
「ふふふ。そのおかげで争いが絶えなかったんじゃ」
神とドラゴンと地底人(?)が争ってるってすごいね。
もうテアのいた世界を題材にして小説が書けそうだよ。
「少し話が逸れたが、妾がこの世界に転生する前、やつの力をコピーしておいたのじゃ。この魔法陣にはそれが入っておる。実際、あのバカ英雄も仮の転生神を作っておったようじゃし」
「てことは、やっぱりさっきの魔導書って」
「神が作り出した、とはいかずとも、何か関係しておると言えるの」
魔導書は神から与えられたものってこと?
「今すぐ聞きに行ってもよいが、別に慌てて行く必要もなかろう」
「それもそうだね。そんなことよりまだ中身見てないもん」
魔導書、まだ開いてすらなかったよ。
「テアは見たこと……ないか」
「ないにきまっておろう。そもそも、こんな面倒なことをせねば魔法が使えんとは、この世界はとんだ設計ミスじゃ」
「ほんとそれね。そのおかげで誤魔化すのにどれだけ苦労したか」
愚痴はこの辺にしといて。
私が手にしているのはファイヤーボールの魔導書だ。
魔導書を開けてみる。
「…」
なんじゃこれ。
長っ………。
そこには、やたらと長い詠唱のようなこと、そしてその詠唱の意味や仕組みが長ったらしく書いてあった。
一通り読んだが、自然現象云々の話を、やたらと長ったらしくわかりにくく書いたようだ。
こりゃ理解に1週間かかるわけだ。
他の魔導書を確認してみないとわからないが、もしかすれば魔法の詠唱にも文法のようなものがあるのかもしれない。
「そう言えば、妾たちはこの世界のものが魔法を使って実際に戦っている場面をまだ見たことがなかったの」
「そうなのよ。だから、どれほどの威力なのか、詠唱をどれだけ省略したりしているのかがわからないんだよね」
これはさっさと宮廷魔術師団の訓練を見に行く必要がありそうだ。
いや、待てよ?
別に、学院の先生に魔法を見せてくれって言えばいいじゃん。
だって先生じゃん。
よし、今すぐ戻ってヘイード先生にでも頼んでみようかな。
「じゃあ戻ろっか」
「うむ」
時間にして20分ほど経っただろうか。私たちは学院へと戻ることにする。




