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75 過激派な部下たち


 午前の2つ目、算術の授業を終える直前、私は担当の先生に後で来るよう呼び出された。


「リンがまたやらかしてる」

「リンのことだから、試験0点だったんじゃない?」

「2人ともひどい! 私はその、ほら、先生って言ったでしょ?」

「あぁうん。言ってたね」

「私の専門分野なのよ、これ」

「「 えっ!? 」」

「前は、こんなもんじゃなかったんだよねぇ。ここからさらに発展していたものをやっていたの。こんなもの赤ちゃんレベル」

「ってことは……」


「「 あぁ 」」


 なぜか2人が顔を見合わせ納得している。


 私が「出来すぎて呼び出されたってことだと思うよ」と言うと、呆れたように再び納得していた。



 授業が終わり、昼食の時間だ。みんなは食堂に行ったり、購買に行ったりして、学生生活を満喫している。

 うらやましい。私もエンジョイしたいよ。


 その光景を横目に、私は職員室らしき場所へと向かう。


 しばらく歩くと、どうやら職員室らしきものが見えた。


 一応挨拶しておくか。

 


「失礼します。1年S-1 リン・フォ─────」


 ─────ザッッッッッ!!!!!


 

 っ!?

 なんだこの光景は……!?


 全員が起立して私の目を一直線に見る。


 眩しいよ!

 こんな光景に近しいのが転生の前日にもあったよ!


 この空気疲れるからほんとにやめて!?


「あ、あの……お仕事の邪魔をしてしまったようで、ごめんなさい……。皆さんお仕事の続きをお願いします……」


 そう言うと、一斉に皆が動き出す。

 座るものもいれば、慌てて走り出すものもいる。


 このしきたりやめようよ。絶対いいことないから。


「リンさ ゃん。こちらにきてくれるかな」


 絶対今「リン様」って言おうとしたよね? リンさゃんってなに??

 

「あの、ネアン先生……私にあんなかしこまった態度は取らないでいいって言いましたよね……」

「え、えぇ……でも立場が圧倒的に上の人ともなれば、やっぱりあぁなってしまうのよ」


 ネアン先生は先程の算術クラスの担当で、私を呼んだ張本人だ。


「ネアン先生は子供みたいな私にあんな態度とって、変だとは思わないんですか……?」

「わたしの場合は、リンちゃんに算術面でも敵いっこないしね。何も変じゃないわよ。あんなもの努力せずにできるものじゃないわ」

「あんなもの? 私の魔法ですか?」

「いえ、筆記試験に出した最終問題よ」

「あぁ、あれ。他のものと比べたら、だいぶと難しいような気がするんですけど」

「当たり前よ。この世界の誰も解けてない問題よ」

「え?」


 え?


「あの、すいません。ネアン先生はこういう算術記号は知っていますか?」


 私はそう言って、前世では当たり前に使われていた積分記号と呼ばれるものを紙に記した。


「これ、リンちゃんの答案に大量に書かれていたんだけど、何一つ理解できなかったわ」

「えっっ」


 こりゃダメだ。


「じゃあなぜあんな問題を出したんですか?」

「誰も解けなくて困っていてね。もしかすると誰か解ける子がいるかもしれないと思って、毎年出しているのよ」


 いやただの悪問かよ。解答分からないのに出すんじゃねぇ。


「そしたらリンちゃんがびっしり答案書いてたから。私たち算術担当で話し合ったり、研究所で解析しようとしたんだけど、サッパリでね」


 まぁ積分記号を知らない人があれを理解するのは無理だ。

 それに私の書いた回答は、それ以上の知識を求めている。言わば、未知の言語を解読しろと言っているようなもんだ。


「それでね、リンちゃんに今から研究所に来て欲しいの。学院のことは大丈夫だから」

「えっと、いいんですか? 確か午後は自主訓練だったはずじゃ」

「リンちゃんは今更、自主訓練の必要なんてないでしょ。下手に訓練されたらこの国が壊れるって学院長が言っていたわ」

「サリナさん………」

 

 自主訓練は個人的にかなり気になっていたところだ。何せ初の魔導書が見られるチャンスだった。


 とはいえ数オタの私にとって、数学を研究しているというだけで非常に興味がそそられる。

 教えることが専門だったため、多少は自分の知識を磨くことは控えていたが、それでも暇を見つけていては新たな分野を発掘していた。


 しかし、唯一恐れている点は………


「あの、ネアン先生も一緒に来てくれませんか?」

「どうして? 研究所なんて、わたしよりもすごい人たちがいっぱいいるのよ?」

「だから来て欲しいんです…。その……」

「ま、まぁ……リンちゃんの言いたいことはわかるわよ……」


 どうやらネアン先生もわかっているようだ。数学という学問に魅了されたものの末路を……。


 教師と研究者では、やはり根本的なベクトルが違う。もちろん、研究者にまともな人だっているし、教師にだって変わった人もいる。

 

 ただまぁ、なんというか。

 研究者は変な人である割合が、まぁまぁに高い。


「じゃあお昼を食べたら行きましょう。わたしも今日の午後は授業がなかったし、ちょうどいいわね」

「なら、オススメの場所に連れて行ってください!」

「任せてちょうだい! とっておきのお店を紹介してあげるわよ!」


 ネアン先生オススメのお店へと向かう。


さてさて研究室も気になるところですが、ネアン先生とお食事をしてから研究所に向かうことになりそうですね。


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