73 資格
ゼーネさんに納得してもらえたので、男の冒険者資格を剥奪しにいく。
「あなたの冒険者としての資格を………剥奪します」
「「「「「 えっ!? 」」」」」
周りにいた全員が驚愕する。
「っ!? そ、そんな…バカなことが……」
「特例として認めます」
「こ、こんな……ガキ! ィッグガァっ!?」
どうやらセリが1発殴ったようだ。
うん。絶好のサンドバッグだね。
「おじさんそろそろ黙ってくれない? 人のことをガキ呼ばわりは、これからのためにもならないよ? まだ学べないの?」
セリが笑顔だ。こわい。
シーナが付き添っていたからか、女子生徒にもだいぶ笑顔が戻っている。
シーナはこういう時便利だ。私とセリでは逆に不安がらせてしまいそうな気がする。
「あの女の子一体何者なの!?」
「は、剥奪なんて聞いたことがないぞ」
「あの子たちそもそも最初いなかったよね!?」
「あれ学院の制服よね…今年の1年はあんなに強いの…!?」
「あれ噂の虎狩りだ……」
「なんだ?それ」
「お前知らないのか…あの子には近づかない方がいいぞ……」
などと周りから会話が聞こえてくる。どうやらデューセルでの私の虎事件を知ってる人もいるみたいだ。
ゼーネさんが男に向かって言う。
「そういうわけなので、ギルドカードを出してもらえますか?」
「が…………」
ダメだ。セリの1発が強すぎて会話にならない。仕方なく最小限のヒールをかける。
「な、納得………できるわけが……ないだ…ろ………っ!」
「素直に従って貰えば、これ以上の制裁はありません。もしこれ以上拒否するようであれば、この国からいられなくしますよ?」
私は男に追い打ちをかける。
「散々人に迷惑かけたんでしょ? 今すぐ拷問して洗いざらい話してもらって償ってもらってもいいんだよ? それが剥奪だけで終わるなら安いもんでしょ」
「………っ」
頑なにギルドカードを見せようとしない。
うーん。これ以上殴るのは、私たちの評判的にも良くない。
基本的には一つの暴言に対して、1発の殴りだ。
今は肯定もしていなければ否定もしていない。黙秘ってやつだ。ここで殴ってしまっては、何でもかんでも暴力を振るう女という扱いになってしまう。
今更だけど………
そういうわけで、強硬手段だ。
ゼーネさんにだけ聞こえるように話す。
「ゼーネさん。私がこの男の魔力を代わりに水晶に流すから、それで登録抹消しといてくれますか?」
「そ、そんなことができるの……?」
「できます」
ゼーネさんが水晶を差し出す。
嫌だけどこの男の魔力をコピーし、水晶に流す。
「ほ、ほんとにそんなことが………」
水晶を見て混乱しているゼーネさん。
情報を管理しているのは水晶だ。
カードにはその人の魔力が込められているため、基本的にカードで管理する。
しかし、もちろん水晶は魔力に反応するため、魔力そのものを流すことでも、管理できる。
「登録を剥奪しました。今後冒険者をすることは、許可が出るまでできません。お帰りください」
男は歯を食いしばり拳を握り込んでいる。
馬鹿とはいえ実力差はわかるようだ。私たちには攻撃してこない。
さっさと動いてよ。もう顔も見たくないんだって。
あーもう!
────ゴフッ!
風魔法を使い男をギルドの外に放り投げた。
「「「「「 !? 」」」」」
よし。解決だ。
「みなさん、お騒がせしました。あの男にいちゃもんつけられた人もいると思いますが、もうこれで許してやってください」
笑顔でその場の全員に説明する。
「今のリンには狂気しか感じられないわ」と、セリ。
「大丈夫よ、そんなに怖がらないで。あの子は優しくていい子なのよ」と、シーナ。
怖がられないように笑顔で話したのに……。
なんでみんなそんなこと言うのよ。
「はい! もうみんな解散よ! さっさと仕事に行きなさい!」
ゼーネさんの一声で本当に解散した。
まぁこれ以上見ていても、何もないと起きないと踏んだのだろう。
実際にさっきの男は入口まで飛ばしたし。
「ねぇリン。この子どうしようかしら」
そう言ってシーナと1人の女の子が私の元に来る。さっき絡まれていた女の子だ。
「あっ、あの……昨日、見てました…‥」
はぁ。昨日の私の失態が。
改めて思うと、なんてことをしたんだと思う。相変わらず咄嗟のことに弱いのかもしれない。
いや、まてよ。私は悪くない。
あんな役職作り出してイベントを企画したこの国が悪い。
あんな薄い壁の学校が悪い。
なんてことを考えていると、女子生徒は礼を言って冒険者ギルドの受付へと並びに行った。
うん、なんかよくわからないけど解決したようだ。めでたし。
『どうやら、さっきの男はどこかに行ってしまったようじゃの』
テアが私たちに話しかけてきた。
探知魔法を使ってみると、さっきコピーした魔力が入り口にない。
どこかに行ったようだ。
「まぁこれにて一件落着ね」と、セリ。
「こんなので驚いてちゃ、リンと一緒にいれなくなるわね」と、シーナ。
2人ともいい感じにネジが外れてきた。
私好みだ。
とは言っても、のんびり過ごしたいのが本音だ。だけど暇よりかは多少何かあった方がいい。
まぁ最近は多少どころでなく、人生を左右されているけどね。
「じゃあ2人ともさっさと登録してきてよ。私その辺で待ってるから」
「ダメよ。リン1人にすると何かやらかすから」
「そんな問題ばっか起こさないから!」
「「 起こす 」」
「うー」
そんなわけで3人、受付に並ぶ。
その後、無事に冒険者になった2人は、喜びのあまり魔物を狩りまくるのだった。
あ、私が荷物持ちにされたことは言うまでもないね。
今更なんですが、基本的にリンは「私」と表記しており、その他の人物を「わたし」と表記しています。
会話で誰が喋っているのか判断できない場合、参考にしてみてください!
(たまにリン以外が"私"になってることもあります…気づいたら直してます…すいません……)




