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72 初仕事

2話投稿の2話目になります〜!前話をご覧になってない方はご注意ください!


「あの、ここのギルマスですか?」

「えぇ、そうよ。ゼーネといいます。あなたたちは……? というかこの状況は……?」


「私、リンって言います。お騒がせして申し訳ありません」

「え、えぇ」


 私はゼーネさんに状況を説明する。


 状況を設定していると、男が「だ、だまれ……」などと口にし始めたので、口が聞けないように顔面を殴っておいた。

 その時ゼーネさんは「ちょ、ちょっと!? あなた何してるの!?」と言っていたが、全て説明し終えると、どうやら私の対応も納得できたかのような顔をしていた。


「そういうわけで、こいつの冒険者としての資格を剥奪して欲しいんですけど」

「そ、それはわたしの権限ではできないわ……」

「この男が多少なりとも強いからですか?」

「そ、そういうわけじゃ…」

「それなら、どういった規則ですか?」


 ゼーネさんは、冒険者としての資格が剥奪され得る条件を教えてくれた。


 全部で3つだ。


【国王の同意】

 うん。これでいけそうだ。


【宮廷魔術師団団長あるいは王国騎士団団長の同意】

 これなら私もいけるね。昨日よくわからない役職押し付けられたし。


【魔術学院長及び騎士学院長の両名が同意】

 これはサリナさんだけじゃ無理ってことだよね。さすがに厳しいか。


 とは言え、上2つでなんとかなりそうだ。


「だから、今すぐにこの男の冒険者としての資格を剥奪することはできないのよ」

「できますよ」

「……えっと? さっきの条件聞いてたかしら?」

「聞いてましたよ」


 さすがにこんな群衆の前で私の立場を晒すわけにはいかない。

 さすがに恥ずかしい。


『この話はあなたにしか聞こえていません。聞こえないふりしてください』

「っ!?」

『2人きりにしてくれれば、私の身分を明かします。さすがにこの群衆の前では明かせません』


 しばらくゼーネさんが考え込む。


「それじゃあ、あなたの言い分を聞かせてもらうから、奥の方へ来てちょうだい」

「わかりました」


 セリに男の面倒を見てもらうことにした。

 もしイラつくことを言ったらぶん殴っていいよと許可を出しておく。

 セリは笑顔で「任せて!」と言っていた。こんな恐ろしいカレー屋の娘がいてたまるか。


 シーナには生徒の様子を見てもらう。


 ゼーネさんが、群衆に解散命令を出したことで、各自が少しずつ散らばっていった。

 とはいえ結末が気になるようで、ほとんどのものが遠目から見ている。




 奥へと連れてこられた私は、ギルマスの部屋に通される。


「さて、リンちゃん。さっきの魔法はともかく、あなたのギルドカードを見せてくれるかしら」

「見せる前に、もう一つ約束があります。いいですか?」

「まぁ聞いてから決めるわ」

「私の身分は絶対に内緒にしてもらえませんか? これ以上の騒ぎを起こしたくないので」


 自分で言っておいてあれなんだけど、もう十分騒ぎになってるよねこれ。


 今度、顔変える魔法でも開発しようかなほんとに。


「それならまぁ、いいわ」

「じゃあ見せますね」


 そう言って私は自分のギルドカードを見せた。


「冒険者ランクA!?」


 そこかよ!

 まぁ、上から見れば確かにそれが一番最初に見えるけどさ……


「…………っ!? な、なによこれ………」


 どうやら私の称号欄に目がうつったようだ。

 称号なんて持っている人の方が少ないそうだし。


「……大聖者?」


 ごめんね。脳筋魔力で治せるんだ。


「………星級? ………特任星級魔術師……」


 その星級っての、かっこよくてちょっと気に入ってるよ。


「国家魔法師総代………」


 それ最近でたシリーズなんだ。ゼーネさん知ってるのかな?


「国家魔法師総代って………噂で若い女の子がなったって聞いていたけど…あなたが………? 国家魔法師総代……?」

「まぁそういうことになります」

「そんな………」

「魔力通しますよ」

「い、一応お願いしてもいいかしら」


 そう言って私は水晶に魔力を通す。

 この世界では、魔力を確認する以上の本人確認はない。


「もう信じるしかないわ……」

「ほんと、すみません。お騒がせして。どうしても許せなかったので……」

「あの男には少し困っていたから………。まぁ助かったといえばそうだけど……。実力もあったから……」

「だからと言って野放しにしておくわけにはいきませんよ。実際に私たちがとめたから良かったものの、なんの罪も犯していない少女が殺されかけたんですよ」

「………その通りよ」

「私の権限で、剥奪できますね」

「もちろん、できます。規則では宮廷魔術師団団長とありますが、それより上の立場の方がお決めになられたことです。もし不都合があれば、わたしも責任を取りましょう」

「ありがとうございます。その心配はないですよ。私からも国王に言っておきますから」

「た、助かります…」


 ほんとに助かった顔している。

 さてはあの国王、ゼーネさんにも特訓という名目で魔法を撃たせたやがるな…?

 王都の冒険者ギルドマスターだ。ゼーネさんもそこそこ強いんだと思う。


 こればかりは同情せざるを得ないよ。

 

 私の国家魔法師総代としての初仕事は、最低な男の冒険者資格を剥奪するという、なんとも歯切れの悪いスタートとなった。


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