70 一味違う新環境
翌日。
今日の学院は休みだ。
どうやら事務作業に追われるため、入学式翌日は必然的に休みになるという。
そりゃそうだよ。
昨日と一昨日に頑張りすぎだ。絶対にペース配分考え直した方がいい。
それはそうと、久々の休みということもあって、ラーメンをつくろうと思い立ったんだけど、よく考えるとそんな設備が整っていなかった。
イリアさんのお店の厨房も毎日のようにフル稼働しているし、王城のキッチンを使わせろなんてなかなか言えることではない。
もちろんこの世界にはレンタルキッチンなんてものもない。
かと言ってラーメン作りを諦めたわけではない。
この世界に転生して1ヶ月ほどが経った。
なかなかに濃密な1ヶ月、とりあえずこの世界に慣れることと、私の周りに起きた様々なことに対処しているので精一杯で、趣味に時間を割いている余裕などは、正直なかった。
しかし今、学生の身分になったことで少しの余裕はできそうだ。
私の変な役職の仕事もないし。
変って言ってるけど、ちょっと面白そう…。
だめだ私。チョロいわ。いいように利用されるわ。
……けど、ちょっと嬉しい。
頼られてる、って感じがする。
利用されてるような状況はちょっと嫌だけど、困った時に助けて欲しいと言われたら、正直言うと嬉しい。
まぁ、私がこの世界にどれぐらいの期間いられるのかはわからないけど、落ち着いたら今度こそラーメンを作ろう。
待っていてよ。私のラーメン。
というわけで今日、私たち3人は冒険者ギルドへと向かっている。
もちろんテアもいるよ。基本的には私と常に一緒だから、もう私とテアで1人みたいな感覚になってる。
さて、冒険者ギルドへときた理由は、今のところ1つ。
セリとシーナの冒険者登録だ。
私たちはかなりの魔物を特訓の間に倒してきた。それに、2人とも実力は間違いなくこの国でトップレベルだ。
問題は………
それを信じてくれるかどうかだ。
「いい? 2人とも。絶対に喧嘩売られても買っちゃダメだからね?」
「だいじょぶだって! あと、それを言うならリンでしょ」
「同感よ」
「私はどんなやつだと思われてるのよ」
「えーっとなんだっけ、特任魔法……えっと……」
「聞いた私がバカだった」
その呼び方ほんとに恥ずかしいからやめてほしい。
厨二病通り名みたいで、ほんとに恥ずかしい。
冒険者ギルドへと到着する。
「うお〜〜でっかいね」
「シーナのとこよりでかいよこれ」
「うちのギルドの4倍はあるわよ」
でっかい。さすが王都だ。
なんか、建物の輝き方から違う気がする。わからないけど。
「朝イチって人多いのかな?」
「依頼が張り出されたら早い者勝ちってことじゃないかしら?」
「やっぱ、そういうシステムなのね」
入り口の前は、かなりの人でごった返していた。
…………。
「「「 おおっ…… 」」」
私たち3人が皆一同に口を揃えた。
……みんな服装が本格派揃いすぎる。
……漆黒のローブにギンギンの鎧。
もちろんデューセルの冒険者ギルドにもこういう人たちはいるにはいるが、何せ控えめだ。
これほどまでフル装備だと、ちょっと引く。
「思っていたより奇抜だったわね」
「シーナと同じこと思ってた」
どうやらシーナとセリも同じことを思っていたようだ。
「じゃあ私たち3人とも同じこと思ってたよ」
「これだと、わたしたちの服装がおかしいみたいじゃないかしら」
「一応制服よ」
私は基本的にオシャレなどに微塵も興味がないので、制服を着られるうちは常に制服でいたい。
服を選んでいる時間ももったいない、と考えるタイプの人間だ。
セリも制服なのだが、どうやら私と同じタイプだ。
私たちはともかく、シーナはお嬢様なので休日は可愛いフリフリの服かと思ったが、昔から病のせいで、学校に通って制服を着て友達と遊ぶということが出来なかったため、制服姿に憧れを抱いているようだ。
そんなわけで私たち3人は制服を着ている。
めちゃくちゃ場違いだ。
絶対絡まれるよこれ。
こんなお約束な展開、私はむしろ楽しみで仕方ないよ。
口では喧嘩は買わないと言っておきながら、頭のどこかでは絡まれるのを少し期待している。
そんな思いの私と2人が、冒険者ギルドの中へと進んでいく。




