63 14歳の代表挨拶
今日3話目の投稿になります!
「只今より、第132回 魔術学院入学式を行います」
入学式が始まった。
Sクラスは前の方に座らされている。横に在校生の何十人かが座っている。どうせ何かしらの役員に選ばれて出席させられているんだろう。お気の毒に。
手続きの際にプログラム的なものを配られた。
第132回 魔術学院 入学式
1. 入学式 開会
2. 学院での諸注意
3. 在校生代表 挨拶
4. 新入生代表 挨拶
5. 学院長 祝辞
6. 任命式
7. 入学式 閉会
どう見ても長そうだ。
とは言っても、私にどえらい扱いをした学院長の面が拝める。
あとで何かしらの文句を言ってやろう。
などと考えていると
「任命式ってなに? 去年あったかしら?」
「それ、昨日いきなり決まったのよ。ただでさえ準備で忙しかったのにプログラム作り直させられて……」
「うわぁ…かわいそう」
という会話が聞こえてきた。
近くにいた上級生が話していたようだ。
前日に入学式のプログラム変更って、この国やっぱり頭おかしいよ。
「続きまして、在校生代表挨拶。3年Sー1クラス────」
うわぁ。次私じゃん。
あれ? っていうか私の名前、リンじゃん。
え、こんな式典の中、また名前だけで呼ばれんの? 恥ずかしすぎない?
やばい、いきなり帰りたくなってきたよ。
……
在校生の挨拶がおわった。
あー! むりむりむりむり!!!
隣にいたセリとシーナがニヤけている。
私の考えていることを見透かしていた。こういう時だけは勘のいいやつらだ。悔しい。
「続きまして、今年度入学者、S-1クラス首席 リン─────」
やばい、くる!!
こうなったら仕方ない! か、覚悟!!!
「───フォーセルさん」
?
だれ?
「ねぇいまのだれ?」
「リンよ! 早く行きなさいっ!」
セリに背中を叩かれて無理やり立たされる。
えっと、誰? 私? リンの後なんて言った?
「リン・フォーセルよ、いきなさい」
「え? あ、うん?」
私は疑問に溢れかえったまま壇上に立つ。
前の方に座っていたから気づかなかったけど。めっちゃ人いるじゃん。むり。
「今年度入学者首席、リン・ふ、フォーセルです」
あいつら今笑いやがった! クソ!
さては知っていたな!
あとで覚えてやがれー!
「この学院へ入学できたこと、入学者一同、心より喜んでおります。さていきなりですが、これから3年間、全てがうまくいくとは限りません。実際に私は、すでに周りから一目置かれ、自分だけが別の世界にいるような孤独を感じてしまっています。しかし、この世界では、私だけが問題を抱えているのではありません。今はそうでなくとも、新入生、在校生、先生方、この世界の様々な人にも、いろんな障害や、衝突、予期せぬことに巻き込まれたりする可能性があるのです。私は、上級生や下級生、クラスや学院、さらには国といった、単なる名ばかりの仕切りに囚われていては、目の前の困難に対しての最善の結果を導くことは難しいと考えています。皆が平等に力を合わせてこの国を、世界を、より豊かに平和にできることを願い、そしてその願いに少しでも辿り着けることを目標にし、この3年間という長いようで短い年月を有意義に過ごせるよう、日々努力して参りたいと思います」
会場にいる人たちが少しざわざわする。
ふふふっ。私のスピーチは素晴らしかったろう?
っと、最後に大事なことを言っておかないと。
「………とは言ったものの、私の最初の目標は、怖がられずに友達を作ることになります」
少し笑いが起こる。
うまくいったかな? これで友達ができればいいんだけど。
「───以上をもって、新入生代表挨拶とさせていただきます。ご静聴ありがとうございました」
よしっ! やり切った〜!
こういうときの挨拶は教師という立場なだけあってやたらと練習したんだよね〜。経験が生きてよかった〜っ!
…………
あれ?
失敗………し─────
─────パチパチパチパチパチパチ!!!!!!!
想定外なほどの大喝采が起こった。
「素晴らしかったぞー!」「リン様ー!!」「あれで本当に14歳なのか!!」「ブラボー!」「フォーセル様万歳!!!」「見直したぞーー!!」「付き合ってくださーい!」「本当に素晴らしかった!!」「リン様!!」「是非わたしを弟子に!」
うん。なんかダメなのが一つ混ざっていたような。気にしないでおこう。
あまりもの大喝采に、ちょっと恥ずかしい気持ちになりながら、自分の席に戻る。
「あんたあんなことまで言えるのね……」
「え? 普通じゃないの?」
「普通はあんなこと14歳が言わないって」
「わたしの父様ですらあんな立派なこと言えないわ」
「いやノインさんしっかりしてよ」
「ふふっ。リンには敵わない、っていつも言っているわよ」
「それうちの母さんも言ってる。リンちゃんと結婚しなさいって」
「イリアさんのそれはなんか違うでしょうが」
普段はおっとりしているが、イリアさんもなかなか過激なことを考えてるタイプだ。
「それにしても、リン・フォーセルってなによ」
「リンの村は名前がそれだけなんでしょ? 何かと不便だから、お母様に頼んで、新しくリンに名前をつけたのよ。私の家名デューセルと、セリの家名フォーレンからとったのよ。我ながらかっこいいでしょ?」
「ま、ま、ま、まぁ悪くはないけど?」
「リン。正直になりなって、ニヤけてるよ」
「ちょ! っもう……」
フォーセル。悪くない。えへへ。
そんなことを話していると、周りの歓声も次第に落ち着く。
「リン・フォーセルさん。素晴らしい演説、ありがとうございました」
もはや挨拶じゃなくて演説になってるよ。
まぁ確かにちょっと長かったかもしれない…。
反省だね。
「続きまして、学院長挨拶。魔術学院 学院長─────」
よしついに来た。
どんな面してるかしっかりと目に刻んでやる。
「────サリナ・デューセル」
「「「はい??」」」
私たち3人はお互いに顔を見合わせた。
聞こえてきた言葉は、理解すらさせてもらえなかった。
明日と明後日は、予定通りお昼と夕方の2話ずつの投稿になります!




