60 実技試験は…?
せっかくのGWということで、2話投稿にしました。
今日お昼投稿した前話をご覧になってない方は、注意してください!
受験方法は至って簡単だ。
受験の予約などは一切いらない。14歳なら誰でも受けられるらしい。
市民カードを受付に提出し、年齢と身分を確認してから、水晶に魔力を流す。
替え玉受験などの不正防止だ。
確認が取れたら、順番に番号をもらう。
セリが324番、シーナが325番、私が326番だ。
結構早めに来たつもりが、300人も先客がいたらしい。みんなすごい気合いだね。
受付が終了し、まず行うのは筆記試験だ。
簡単な算術に歴史問題と、だいたい予想通りだ。
少し印象に残ったのは、魔物のランク判別だ。
異世界ならではだね。
ちなみに歴史問題は………あんまりわからなかった。
もちろん、何個かはわかった。
この国の名前、なんだっけ。
グレ……グレンさん…… いやそれはグレンさんだ。
クレ……クレイマン? いや違う。
クレインさん? あれ? それは国王の名前だっけ……。
ダメだ……わからん。
こんな調子で悩んでいると、あっという間に試験時間が終了していた。
ちなみに算術は余裕で満点だと思う。
元いた世界の中学3年生レベルだった。
しかし、ひとつだけ「これ結構難しくない?」という問題もあり、それだけはいきなり大学理系レベルになっていた。
もちろん大学時代は数学専攻だった私にとっては余裕だ。
筆記試験を終えると、そのまま実技試験だ。
人数が人数なだけに、目の前にはバカでかい会場が広がっている。
左右5m間隔で、20人ほど人が立っている。面接官みたいなものだ。
そしてその奥には的のようなものがあり、どうやらそれを狙うらしい。
この人数の前でやるの、結構恥ずかしくない?
と、思っていたが、やはりここに集まるのは、周りから才能があると言われたもの達。
皆が謎に自信に満ち溢れている。
実技試験が一斉にスタートする。
始まってしばらく観察していると、どうやらこの世界の14歳は、思っていたより強くはない。
それに、魔導書が高いからか知らないけど、みんなの魔法がワンパターンすぎる。
ファイヤーボール、ウォーターボール、ウィンドカッター。そんなのばっかりだ。
詠唱も長い気がするし、威力もほとんど変わりないように見える。
一体どうやって審査してるのこれ。
とは言っても、4〜50人に1人くらいは「お〜っ!」みたいなどよめきが起こる。
これがいわゆる優等生ってやつね。
しばらくすると、私たちの番が近づく。
20人ずつ呼ばれる仕組みだ。
………
「323番。─────」
「はい」
「324番。セリ・フォーレンさん」
「はい」
「325番。シーナ・デューセルさん」
「はい」
「326番。リンさん」
「あっ、はい…」
「327番。─────」
………
私だけ名前短いよ。
今更ながら恥ずかしい……。
321番の人から順番に魔法を放つ。
うん。よわい。
322番。もう見飽きたよファイヤーボール。
323番。もう私にはさっきの人との違いがわかんないよ。
なんでそんな長い詠唱した挙句そんな火の玉しか出ないのよ。
お、次セリじゃん。
─────ゴォッッッ!!!!!!
「「「「「!?」」」」」
会場が騒然とする。
当たり前だ。何人か威力の多少ある魔法があったとは言え、ほとんど的にかすっていた程度の魔法が続いていた。
そんな中、的を破壊し粉々にしたのだ。
それも、「ファイヤーっっ!」というふざけた詠唱(?)付きだ。
「や、やばっ!」
どうやらセリは割と威力を抑えていたつもりらしい。
咄嗟にセリは土魔法で同じような的を作り出す。
「あ、アハハ! これで大丈夫ね! あはは! あはっ…あはは……」
面接官の顔をみればわかる。大丈夫ではないよ。
「あいつ何者だ!?」「いまの詠唱何よ!?」「あの詠唱であの威力っ!?」「あの子絶対やばいって…」という声が聞こえてくる。
よし、これはいいぞ。
学院での脳筋プレイヤーの称号をセリに押し付けることにしよう。
今の威力を見れば、誰もがセリを脳筋だと思う。
私はほんのちょっとだけ強めの風を起こす程度にしておこう。
そうすれば……えへへ。
セリ、すまないね。
「つ、次の方、お、おねがいします……」
シーナを担当している人まで顔が引き攣っている。そりゃ隣で大爆発が起きたんだ。そうなるよ。
「はい」
その直後
─────ボホォッッッ!!!
シーナの正面にあった的が
超精巧に作られたフィギュアのように
───テアの姿になった。
「「「「「???」」」」」
「ねぇセリ! リン! どうかしらっ!」
超笑顔でこちらを見つめるシーナ。
あんたやっぱり頭おかしいよ。
『むむ!? 妾がいるぞ!?』と私の中のテアが言う。
シーナがテアに溺愛なのはわかるけどさ、こんなところで推しのフィギュア作ってどうすんのよ。
案の定、面接官も困惑してるじゃない。
困惑どころか、訳がわからなさすぎて怯えてるよ。
よし。私が普通の魔法、普通の威力でこの場を終わらせよう。
待っていてね。平和な試験会場。
「で、では326番の───」
「はいっ!」
2連続で頭のおかしいやつらが続いている。
すでに試験を終えたものもここで待機しているらしく、会場1000人以上の視線が、自然と私の元に集まる。
よし、パパっと終わらせよう。
私が普通の魔法を放とうとした
その時
「───あの……? あの、すみません。326番のリンさん。学院長から、あなたの実技試験は執り行わないようにとのご命令です。試験に影響はありませんので、そのままお帰りください」
「はい?」
「えっと、その。『こちらの会場を建物ごと破壊してしまう可能性があるため、実技試験はこちらから願い下げ』とのことです」
「?」
「「「「「……?」」」」」
前代未聞の実技試験願い下げに、会場中がさらに静まり返る。
………この学校の学院長は噂に聞く通りヤバい人だったよ。
サリナさんに試験やってこいって言われてきただけなのに…。
こんな仕打ちありえなくない…?
そんな中、あまりにも場違いな2人の笑い声が聞こえる。
「「フフッ!! ハハハハッ!!! アーーーッハッハッハッ!!!」」
「ちょ! あんたたち何笑ってんのよ!」
「ブフッ! だって、実技試験願い下げなんて初めて聞いたわよ。そ、そんなこと……ハハハハ!!」
「リ、リン……プハッ! ハッ!! は、破壊するから……じ、実技試験ッ!!! 願い下アァッハッハッハッ!!!」
2人の笑いが止まらない。
なぜかそのまま次の人の試験が始まる。
なんで何事もなかったかのようになってんのよ。
いや、なんか次の人ごめんなさい。私たちのせいですごい空気になってるよね。
私の次の人の魔法が普通だったのをみて、どうやら会場中の人たちが、また私たちに注目している。
帰りたいよ。今すぐ帰りたい。
最後に受付に渡していたカードを返してもらい、私たちの組が終わった。
こうして平和に(?)、実技試験が終わり、2人が未だに笑いながら私の元へ近寄ってくる。
明日からも、お昼と夕方の2話投稿にしようかと思いますので、よろしくお願いしますっ!
おそらく、水曜日まで続きます。
投稿時間は大体お昼と夕方になると思います。




