59 魔術学院へ
朝、準備をしていると、サリナさんが私の元へとやって来た。
「グレンから聞いたわよ! まったく……とんでもないことをしてくれたわね!」
「えっ!? ご、ごめんなさい……」
「何を謝っているの? あの捕まえたやつらが悪事をポンポン吐いてね。もう昨日からそれで城中が大忙しよ。リンちゃんには感謝しているわ」
「あの、仕事を増やしてしまったみたいで………」
「いいのよ。わたしはあんまり関係ないから。それじゃ、先に行ってるから」
「はい! また後でお会いしましょう」
帰り際にサリナさんが一言。
「そうそう。リンちゃんは試験免除に変わりはないんだけど、一応試験受けてくれないかしら、ノインの手紙に非常識と書いてあったから、一応ね?」
そう言って出て行った。
あの人は私のいないところでどんな噂を流してるのよ。
しかたない。どうせ行くんだし受けるか。
ちなみにここから学院までは歩いて10分ほどで着く。サリナさんは学院で書類関係の事務をしていると言っていた。だからここを家にしたかったんだね。近いし。
私もそろそろ家を出ようかな。
そう思っていると、部屋にいつもの2人が現れた。
「リン!おはよう!一緒に行こーよ!」
「リン〜おはよう」
転移魔法を教える際に、モラルを守れというべきだった。
いきなり部屋に転移はびっくりするからやめてよ。
「セリは朝から元気すぎだって……」
「いつもならとっくに仕込みしてる時間だから元気なんだよね」
「お店の方は大丈夫なの?」
「お手伝いを雇おうとしたんだけど、セアが、『わたしだってできる!』って言って聞かなくて。今は3人でやってる」
セアはかわいいね。
「それに今はメニューをカレーだけにしてあるし」
「それなら大丈夫か」
「なんとかね」
そんな話をしながら学院へ向かう。
忘れていたが、今日は試験だ。
私たち以外、同年代らしき人たちの顔がみんな険しい。
毎年1000人近くの14歳が、あらゆる街、さらには国を超えて受験しにくるが、たったの150人しか入学することができないそうだ。意外と厳しいんだねここ。
もちろん、街にも魔術学院のようなものがあるらしいが、やはりみんな王都の魔術学院を目指してくる。
それに、この国の魔術学院は何やらレベルが高いらしい。だから他の国から入学を希望する生徒もいるんだとか。
そうこうしている内に学院に着く。
「でっけぇ〜」
「ちっさな街ぐらいあるよ……」
「わたしも初めてみましたわ……」
なんともデカイ。
たかが3学年合わせて450人のための敷地とは思えない。
とはいえノーエさんの話では、この敷地の中にありとあらゆる施設が入っており、基本的には寮に泊まって3年間生活するそうだ。
それに加えて、魔術学院を卒業した一部の優秀な者が進学する、高等魔術学院の学舎や、宮廷魔術師団の本部などもあるらしい。
また、城を挟むように同じような敷地がもう一つある。それが騎士学院だ。同様、敷地内に高等騎士学院、王国騎士団が入っている。
最初私がこの城に来たとき、デカすぎてありえないと思っていたのは、どうやら魔術学院と騎士学院の敷地も含まれていたからだった。
逆に安心したよ。
「そういえば2人は寮に入るの?」
「わたしは家から通おうかな。お店のお手伝いもできる限りしたいし」
「わたしはお母様と一緒に暮らすことにしたわ。ずっと1人、王都で働いていたもの」
「なるほどね。シーナがサリナさんと一緒に住むってことは、私の部屋の隣の隣ぐらいになるってこと?」
「そうなるわね。ふふふ。それとも、お母様に頼んでマスターと一緒の部屋にしてもらおうかしら」
「寝てる間に消し飛んでるかもよ」
「ちょっとセリ! そんなこと言わないでよ! 私そこまで寝相ひどくないから!」
「「「ハッハッハッ!!」」」
場違いな私たちが試験会場へと入っていく。
いよいよ新しい生活が見えてきました。
元々仲のいい友達と同じ学校を共にするっていうの、めっちゃ青春って感じがしていいですよね。




