55 英雄の産物(?)
料理店を後にした私たちは、大満足な気持ちのまま、買い物をすることになった。
「それにしてもリン。よくあんな言い訳咄嗟に思いつくわね」
「あぁあれ、実はテアが言ってくれたのよ」
「「?」」
「あれ? 言ってなかったっけ。私とテア、今は融合してるでしょ? 私の体を乗っ取る事ができるのよ」
「「えっ!?」」
「ねぇテア。何か喋ってみて? ─── 妾が喋っていたところでリンが喋ってるように見える。意味がないと思うのじゃが」
「いや、わかった」
「わかったわよ」
いや2人ともすごいね。
「まぁそういうことなのよ。テアはこう見えてずっと私たちを守ってくれているのよ」
「テアちゃん……あなたは可愛い上に私たちをいつも守ってくれているなんて………」
テアに溺愛しているシーナは、「後で抱かせて」と言っていた。
そんなことを話しながら買い物を続ける。
まずは定番。筆記用具だ。
この世界にシャーペンなんて便利なものは存在しないし、消しゴムもない。間違えたら終わりじゃん。
次はノートのようなもの。まぁなんでもいっか。
もちろんこれらは、学院の中に購買部のようなものがあるらしく、そこで買えたりもするらしい。むしろ、必要なものは全てそこで揃うそうだ。
でも、ノーエさんのアドバイスとして、最初に書くものと書かれるものを持っていた方が、聞き落としや確認ミスがなくなるからいいとのことだ。
そして次に買うもの………。いや、私は買わない。断固として買わない。それは…
魔法の媒介だ。
つまり、杖やらなんやらだ。
この世界は魔力が弱かった。だから、あらかじめ魔力を込めた媒介となる道具を使うことで、魔法を使いやすくしているらしい。
というのがこの世界の歴史だ。
バカじゃん。
そんなの作れる人この世界にいないって。
もしいたら英雄になってるって。
とは言っても……
「ねぇあれかっこよくない?」と、セリ。
「わたしはあっちのほうが好みね」と、シーナ。
さっきからこんなことを言っている。
これ私も買わされるじゃん。
『リン。あそこに置いてあるものをしっかりみてみろ』
『うん?』
テアにそう言われ、並べられている杖や指輪をしっかりと見る。
『ってこれ、魔法陣が付与されてるじゃん』
『そのようだ。しかもこれ、あのバケモン魔法陣と同じ文字で描かれている気がするんじゃが』
『……っ!ほんとだ』
どうやら、魔法陣は日本語で書かれていた。さらに、術式の内容は、器そのものだった。
使用者が魔力を込めた際、杖や指輪がその魔力を読み取り、そこに同じ形状の魔力が貯められる仕組みだ。
器を体外にも作る事ができるってことか。
これはいい勉強になった。
『感心しておる場合か。あれはあのバカ英雄が作ったものなんじゃろ。証拠に、どうやらあれらはレンタルらしいぞえ。しかも、あり得ないほど高額じゃ』
『英雄のいない今、あれにも限りがあるってことか………って!?高すぎるわよ!』
そこには、【金貨200枚/年】と書かれてあった。
授業料より高いじゃん。
「2人とも! あんた達はこんなもん付けなくても十分だから! それに、いるなら今度私が作ってあげるから! 帰るよ!」
「えっ!? リンが作ってくれるの?」
「あんたついに頭までおかしくなったの?」
「はいはい! いきましょうね〜!」
この店の人は英雄の真実など、もちろん知らないであろうが、なんか嫌だ。
…とも思ったけど、冷静に考える。
1つ可能性があるとすれば、英雄じゃない日本人が転生してきて開発したということも十分に考えられる。
実際に、ここに置いてある魔道具のように、体の外に器を作ることができたなら、英雄はあのバケモン魔法陣だって行使できたはずだ。
あのバケモン魔法陣は、魔力を溜めておくだけで、行使はできない。器のようで器じゃない。
だから魔力を使用する際、人間に魔力を注ぐ必要があったため、魔人化が起こった。
うーん。
もし、英雄がここに置いてある魔道具たちを作ったとすれば、なんか矛盾というか、あまりパッとしないというか。
もちろん単純に、莫大な量の魔力を扱うことができる器を作れなかったのかもしれない。
この仮定は、同時に発動できる魔道具の数に限りがある、という条件付きになるだろうけど。
……。
やめ! 考えるのやめた!
この世界の過去はもうとりあえずどうでもいいよ!!
私、理系だから! 歴史とかダメなタイプだから!!
まぁ細かいことはわからないけど、とりあえずこの店とはおさらばしよう。
魔道具たちは誰が作ったのでしょう…。
英雄か、リン以外の日本人転生者か…。
それとも……
みたいな後書きもたまにはいいですねw




