54 はらごしらえ その2
「そんな、滅相もございません。私共の最善の料理を提供できず……」
「それなら、一つお願いがあるんですけど、いいですか?」
私がクシミルさんに提案する。
「なんでしょう」
「もし砂糖が入ってデザートを作れるようになったら、連絡を頂けませんか? また私達にデザートを含め、クシミルさんのお料理を食べさせて欲しいんです」
「もっ、もちろん! 構いません」
「とは言っても、いつもこちらのお店で食事をしている方や、先に楽しみにされていた方などもいると思います。優先する方がいらっしゃれば後回しで構いませんので。もちろん代金もお支払いしますし」
よし。これで美味しいデザートを食べられる。
2人とも、そんなあからさまに嬉しそうな顔をするでないよ。
まだ食べられると決まったわけじゃないんだから。
「そんな、代金はいただけません。今日頂いたお代金もありますので、お金のことはお気になさらずお食事してください」
うん。なんかいい人だなこのひと。
商売じゃなくて、本当に料理が好きでこのお店をしているのだろう。
「いえ、今日は今日です。そのお代には、私たちのような者にもお気を遣ってくださり、決して手を抜かず、今日できる最高の料理を提供してくださった、そのお礼も含まれていると思ってください」
「な、なんと……あなた方は一体おいくつであられるのですか……」
「まだ14歳の子供ですよ」
「なんと。到底14歳とは思えません。まだ14歳ながら、人として見習うべきお方でありますな」
「いえいえそんな大袈裟な……」
セリは嬉しそうにしているが、シーナは少しお上品な態度を取っている。
たまに忘れるけど、この子貴族なんだ。
「あとひとつ、お伺いしたいことがあるのですが」
「私共でお答えできることなら、なんなりとお申し付けください」
「私たち、今年から魔術学院に入ろうと考えているんです。もし入学してから必要になるものとか、知っている人がいれば教えて欲しいんですけど……」
「魔術学院ですか……。あなた方は人間としても、魔術師としてもすごいお方になられるんでしょうな……。しばしお待ちください」
大袈裟すぎるよクシミルさん。
しばらくすると、少し若い目な女の人がやってくる。
「この子は5年前に魔術学院を卒業したものです。ここで働いているものの中では魔術学院について、1番よく知っております」
「ありがとうございます」
「初めまして。ノーエと申します。5年もあれば何か変わっている事があるかもしれませんが、参考程度に考えていただけますと幸いです」
「ノーエさん。はじめまして。リンと言います」
ノーエさんは丁寧に答えてくれた。
最初はかしこまっていたが、どうやら自分の過ごした場所の後輩ということもあってか、すぐに打ち解けることができた。
必要な道具はもちろん、魔術学院のちょっとした内部事情や近隣の美味しいお店、時間を潰せる場所なども聞いた。
それに最後、小声で「学院長先生は控え目に言って頭がおかしいわ。怒らせると大変なことになるから絶対怒らせちゃダメよ」と言っていた。
この街はどうして大事な役職の人が頭おかしいの。
やっぱり国王が脳筋なのが悪いんじゃ……。
「だけどリンちゃん。確か今年の試験は明日だったよね?」
「そうなんですよ。だけどまぁ、推薦のような感じでもう入学が決まっていて……。一応試験は受けることになっているんですけど」
「す、推薦!?」
「もちろん試験で著しく悪ければ落ちるんですけど、私たち努力もしてきたのでそれはないと思います」
努力って言ったけど、私したっけ。
この世界に来て楽しいことしかなかったから、努力らしい努力はしてないかもしれない。
2人はかなり努力していたけど。
「リンちゃん達本当にすごいわね。こんなすごい子たちの先輩だなんて、わたし恥ずかしいわ」
「まぁわたしたちの中ではリンがズバ抜けて頭おかしいですよ。この子だけ試験免除でもう入学が決まってるんです」
ちょっとセリ!! 私それ頑張って誤魔化してきたよね! ねぇ!?
どうして言うのよ!
「め、免除……? そんなこと歴史上一度もないのよ?」
「そ、そうなんですか!?」
「一体誰にそんなこと言われたの」
シーナの方をみると、どうやらシーナは貴族であることをあまり広めたくない様子だ。
小さい頃からあまり外に行けなかったシーナは、さらに貴族という立場も相まって、同年代の友達がいないのだ。
だから貴族というレッテルに少し嫌悪感を抱いている節がある。もちろん嫌がったりしているわけではないが、自分から進んで貴族を名乗ることは絶対にしない。
「まぁなんか国王様と仲良い人に言われまして……」
「こっ!? 国王様!?」
「そ、その人がこ、こ、国王様と仲がいいわけで! 私は全然ご存知ありませんよ!?」
「そ、そうよね。びっくりしたわ」
あんな脳筋と知り合いなんてやだよ。
「ほんと、ぜひ一度リンちゃんの魔法を見てみたいものだわ」
「この店が潰れるのでやめといたほうがいいですよ」
「そ、そんなに!? 宮廷魔術師団並みじゃない……」
セリ? そろそろやめよ?
「ま、まぁそんなことより、ノーエさん。色々とありがとうございました!」
「いえいえ、こちらこそ久しぶりに楽しめたわ。リンちゃん、連絡のことなんだけど、どこに連絡すればいいかしら」
あっ。やばい。
さっきはつい「連絡ください」なんて言ってしまったけど、よく考えたら携帯も電話もないじゃん。
まてよ?
イリアさんの店を書けば「あなた学院にどうやって行くの!?」なんて言われるかもしれない。「転移魔法でいきます!」なんて言えば、どうなるかわかったもんじゃない。
かと言ってあの城の中の部屋だと、さすがにやばくないか? さっき国王知らないって言ったよ? 国王知らないやつが城の中に住んでるなんて聞いたことないよ?
え、これこの異世界に来て初めてのピンチじゃない!?
『テアぁぁぁあ』
『バカもん。そろそろ助けを求めにくる頃じゃと思ったわ。まったく』
『うぅ………』
「えっと私たち、まだ家が決まっていなくて。今は宿にいるんですけど、そこもきっと家が決まればいなくなると思います。なので、もしデザートが食べられるようになったら、学院に手紙を届けてもらう事ってできますか?」
私の口が、無意識に動き出した。
テア。ありがとう。心から感謝してるよ、今。
「宛名はリンちゃんの名前でいいわね?この辺じゃあまり聞かない名前だし。デザートができるようになれば手紙を送るわ! 本当に美味しいから、楽しみにしていてね!」
『テアぁ。ありがとう……あとで抱きしめてあげるから』
『ふん』
テアに感謝しながら、私は料理店を後にする。
前回と今回、予約投稿っていう機能を使ったんですけど、まとめて予約しちゃうと、2話投稿したい気持ち(?)になって投稿したら、1話ずつまた予約し直さなきゃダメなんですかね…。
その辺はうまいこと調整できるようになってるんですかね…。
この世界にきて1ヶ月しか経ってないので、リンと同じ非常識な気分です笑




