53 はらごしらえ その1
試験前日、することがなくなった私たちは早速学生生活に必要なものを買いに行く事にした。
まだ試験を受けてすらいないが、これはもう不合格する方が難しい。というかあり得ないよね。
さてと、王都の私の部屋(?)へと転移する。
シーナとセリも一緒だ。
もちろん2人は私の部屋は初めてなので、私が3人まとめて転移してきた。
こんなこともあろうかと、以前サリナさんに確認しておいたのだが、どうやら私が一緒にいれば、問題ないそう。
もちろん危険人物はやめてほしいそうだけどね。
それは私もごめんだよ。
セリはもちろんそうだが、シーナも初めて王都に来たらしく、表情がかなり緩んでいる。
とりあえず部屋の中で過ごし、ある程度落ちついてきたところで、みんなにご褒美の報告をする。
「さて! みんな改めて特訓お疲れ様! まずはご飯食べよう。特訓のご褒美だから、私のおごりね」
「ほんと!? さすがリンね!」
「リン? ほんとにいいのかしら」
「もちろん! 最近は魔物も多くてね。お金はあるから大丈夫だよ」
私は暇さえあれば森の中で魔物討伐をしている。
その甲斐あってかお金はみるみる溜まっている。新人冒険者のために、あまり弱い魔物はあまり倒さないようにしていて、私が倒すのはあくまでBランク以上だ。
ちなみに、もう冒険者ギルドに何を持っていっても驚かれなくなった。
部屋を出て、王都の街中へと向かう。
しばらく歩いていると、美味しそうなお店を見つけた。が、少し高そうだ。
まぁいいか。ご褒美なんだしね。
そう思い、高そうな料理店に入る。
一応、テアは私の中に入っておく。
「あ、あの……お母様かお父様は…?」
「私たち3人だけです」
「えっと、当店は少しお高いお値段を頂いておりますので……」
「前払いでどうですか? それなら問題ないですよね?」
「そ、それなら……」
そう言うので、私は金貨を5枚出す。
物価も安いので、これだけあれば十分だと思ったのだが………
「な!? こ、こんなに頂けるのですか!?」
「え? これくらいじゃないんですか?」
「そ、その……いくらでもお召し上がりください!」
なんかよくわからないね。
王都の高いレストランって言うからこれくらいだと思ったんだけど…。
「ねぇセリ。金貨5枚ってどんなもんなの?」
「わ、わからないわよ……うちのカレーなんて銅貨3枚よ? 今渡したの、うちの約170倍じゃない……」
「だけど王都の高級レストランだよ?」
「来た事ないからわからないけどさ……うちの街でそんな高いレストランは見た事ないよ……」
「えぇ……シーナはどう思う?」
「食事に金貨5枚なんてなかなか聞かないわ。それこそ世界各地から高級食材を集めてフルコースを作るとなれば、話は別かもしれないけど」
「そんなものなのか……」
じゃあ3人で金貨1枚ぐらいでよかったのかな………。
とは言っても、張り切った言い方をして「これでは足りません」なんて言われたら恥ずかしくてこの店で食事なんてできない。もしものことを考えて少し多めに出したのだが、それが仇となったみたいだ。
今度から気をつけよう。
席に案内されしばらくすると、料理長らしき人が出て来た。
何やらめちゃくちゃ緊張している。
何? 私たちただの14歳集団だよ?
けどシーナは領主の娘だから貴族になるのか。
「こっ、この度はこのような店にご来店いただきありがとうございます。当店の料理長をさせて頂いております、クシミルと申します。何卒、誠心誠意作らせていただきますのでよろしくお願いします」
すごく頭を下げてくる。
こういうのって料理の途中とかで来るんじゃなかったっけ……
注文を聞かれたが、3人とも何を食べればいいかわからなかったので、お任せでお願いしますと答えたら、余計に緊張していた。
こんな小娘3人に何をそんなにビビってるのよ……
「絶対リンが金貨5枚出したからだよ」
「そうね。わたしもそう思うわよ」
「そ、そんな金貨5枚ぐらいで大事だって……」
「リンは母さんに常識を学んだんじゃなかったの? 全く学べてないじゃん」
「魔法もかなり非常識だけど、ここまで非常識と言われると、さすがのわたしたちも困るわよ」
私はこれでも元の世界ではまともな部類だと思うんだけど…………
この世界のことは確かに知らないことも多い。かもしれない。
だけどそこまで言われると……う。
つらいよ。
しばらくすると料理が出てくる。どうやらコース料理のように出てくるらしい。
それに、私たちの体型を見てか、量がかなり抑えられている。途中で綺麗な服を着た店員さんがやってきて「お口に合いますものがございましたら、追加でお作りいたします。いつでもお声をおかけください」と言っていた。
すごい配慮だ。
運ばれてくる料理はどれも美味しかった。
イリアさんのカレーも美味しいし、街中の他のお店も美味しいけど、ここの料理は群を抜いている。
ただ高いだけのお店ではなさそうだ。
「こんな美味しいもの食べたことない」とセリ。
「屋敷で出る料理も美味しいけど、正直言って比べものにならないわね」とシーナ。
当たり前の感想だ。
しばらく料理を堪能していると、料理長がやってくる。
「お口に合えばよかったのですが…いかがでしたでしょうか」
「どれも非常に美味しいです。ぜひ私に毎日食事を作って欲しいくらいですよ」と、私。
「ほんとに。わたしの父さんに料理を教えてあげて欲しいです」と、セリ。
「あなたを雇いたいです」と、シーナ。
なんかシーナだけは規模が違うよ。
「そ、そんな…っ! ありがとうございます! 最後に、1つ謝らなければいけないことがありまして………」
「えっ。こんな美味しい料理を食べさせてもらったのにどうしてら謝られる必要があるんですか」
もしかしてお金が足りなかった…?
「当店は最後に、私がこだわりをもって作らせて頂くデザートをお出ししておりました。しかし、ここ最近ではその原料となる砂糖の盗賊被害が多発しておりまして……。本日はわざわざお越しいただけましたのに、お作りすることができません……」
そんなことか。
いやだけど、そんなこと言われたら気になるじゃない。
こんなに美味しい料理を出すお店の料理長さんが、こだわり抜いたデザートでしょ?
やべぇ〜〜〜! すごく気になるんだけど!
「いえいえ、こちらの方こそ、このような絶賛されるべき料理店に場違いであることは自覚しております。そのことを謝罪しなければいけないほどです」
私がスイーツに頭を巡らせていたら、シーナがいきなり貴族らしく大人気な対応をする。
なんか恥ずかしいよ。私。
そう思って、セリを見てみると、どうやら私と同じことを考えているようだった。顔に出やすいのよセリ。
ストーリーには関係ないんですけど、最近モンブランの美味しさに気がつきました。
投稿する際、誤字や矛盾がないかをチェックするために読み直しているのですが、無性にデザートが食べたくなってしまいました。セルフ飯テロです。




