52 転移魔法
「セリ!! あなたどうやったのよ! ずるいわよ!!」
「ねぇ!? 見た!? 私さっきまでそこにいたよね! あはははっ!!」
どうやら転移魔法はセリの方が早く習得できたみたいだ。
魔力を飛ばすなんて曖昧な表現で、よくもこんな短時間でできたものだよ。
「ねぇセリ。どういうイメージをしたの?」
「どういうって……飛ばしただけだよ」
「何も参考にならないわよ!」
「そんなの知らないよ!」
2人が仲良く言い争っている。
「うぅ〜リン〜」
「シーナはどういうイメージしているの?」
「どういうって……飛ばすイメージ……」
「だよね………」
実は、セリが成功するとは思っていなかった。
そのため、2日間みっちり地獄を見てもらった後で、私のとっておきの作戦で2人とも転移魔法を使えるようにしようとしていたのだ。
シーナに今すぐその秘策を使ってもいいんだけど……
「よし、できるまで特訓! 転移魔法以外のことは禁止!」
「え〜! そんな〜〜〜」
その横でセリはあちこち転移して楽しんでいる。
「シーナも早くできるようになるといいね〜〜」と煽り文句付きだ。
あなた最初シーナを店に連れて来た時、ガチガチに固まってたじゃん。
いつの間にそんなに仲良くなっていたの。
てなわけで、セリはイリアさんに転移魔法を見せに転移していった。
一方私は泣きそうになっているシーナを見守りながら、学院での青春を思い浮かべ、ニヤついていた。
次の日の朝早く。
どうやらシーナは解散した後も練習していたらしく、ノインさんが心配そうに私の元を訪ねてきた。
「リン。シーナに何を教えたんだ……あんなシーナ見たことがないぞ……」
「あぁ、ちょっと魔法を教えていましてね…」
「そんなことは知っているが、何を教えているんだ…」
「て、て───」
「転移魔法!?」
反応早っ!?
「そ、その通りです…」
「まったく………もう俺は帰る。疲れた」
「あ、はい、おつかれさまでした(?)」
何やら肩を落としながら帰っていくノインさんを見送った後、私は今日も特訓の準備をする。
それにしても領主が一人で店に押しかけてくるなんて、ほんとにフレンドリーな人だ。
準備を終えた私はセリとお店で待っている。するとしばらくしてシーナがやってくる。
それも、転移でいきなり現れた。
「ねぇ! みんなおはよう!! どう!?」
そこには、とびっきり笑顔のシーナがいた。
「もしかして!? シーナも!?」
「うんっ!! これでセリには負けないよ!」
「くっ!! でもわたしの方が早かったし…」
「ふっふっふっ。セリ。それにリンも。見て驚かないでよ?」
うん? どうした?
「どうしたの?」
「いくよっ!」
すると次の瞬間、シーナの隣にシーナが現れた。
「「なにっ!?」」
「はっはっはぁーっ! どうかしら!」
すっげー。こりゃ自慢したくなるわ。
てか私もまだやったことない、分身じゃんこれ。
「でも、ここまでなのよ。この別のわたしを動かしたりすることはまだできないの。あとは消えるだけよ」
するとシーナの隣にいたシーナが消える。
「シーナ! すごいよ! すごい!」
「もっと褒めてくれても構わないのよ」
「よしよし」
「ちょ、ちょっと! 子供みたいにしないでよ!」
セリに頭を撫でられながらシーナは照れている。2人揃ってかわいいものだね。
「でもこれどうやってるの?」
「なんか、わたしもよくわからないんだけど。昨日帰ったあとすごく悔しくて、ずっと練習していたら先にこっちができちゃったの」
「偶然?」
「偶然なの。それでね、わたし思ったんだけど、魔力を全部他の場所に移動させるってことが、どうしても怖かったみたい。ほら、わたし、あんなこともあったし。それで、中途半端な量しか転移させれてなかったみたい。そしたらさっきみたいな分身みたいなのができちゃったの」
なるほど。ようは存在の魔力体だけをある程度そこに飛ばせば分身体が現れるのか。ただそれは存在しているだけで意思をもったり何かできるほどではない…ってことね。
「まぁそのあと、覚悟決めて練習したら転移できたの!!」
そう言ってまたシーナは笑顔になる。
「リンの考えも不発に終わったのう」
「そうだね…けどテアはあれでうまく言ってたと思う?」
「そればかりはやってみんことにはわからぬ」
「だよね…」
私の脳筋プランは不発か……。
ちなみに私のプランは、私の意識を2人に繋げて、ひたすら転移魔法を使って感覚を掴ませることだった。
そんな脳筋で無理やり習得するよりも、こうやって自分で習得できた方がタメになるはず。
こうして試験が始まる2日前には、2人とも無事転移魔法を習得し、脳筋への道を一歩踏み出していた。
転移魔法って、いいですよね。




