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51 魔力の本質とは


 試験日まで残り3日。その前の晩2人が帰った後に、私はある実験をしていた。


「……は………と思うんだよね。つまりは…………すれば………が起こって………。もしこれが正しければ転移できると思うんだけど。どう思う?」

「さすがはリンじゃな。それこそがこの世界の魔力の本質じゃ」

「テアは知ってたの!?」

「当然じゃ。何年生きていると思っておる」

「教えてくれてもよかったのに…」

「妾が教えていてはリンも成長できんじゃろ。それにしても、さすがはリン。この速さで気づくとはの」

「まぁそれはさ……転生前にもこういう仕掛けというか……定番のパターンがあってさ……。私も理由まではわからないんだけどね……」

「ふむ。リンの転生前の世界はなかなか不思議じゃのう」

「まぁ確かに、今思えば不思議な世界だったよ」


 そんな話をしながら、私は部屋に帰るために実験をするのだった。




 次の日、いつも通り2人が集まる。


「よし。始めよっか」

「まってました!」

「この日がたのしみで仕方なかったわ」


 大袈裟な。昨日の出来事でしょうよ。


「まず2人に聞きたいことがあるんだけど」

「なに?」

「なにかしら?」


「自分の魔力を感じたことある?」 


 2人は沈黙する


「その様子だとなさそうだね」

「そんなの感じたことあるわけないでしょ」

「わたしもないわ」


 よし。この状況になることは分かっていた。ならば次だ。


 私が今から2人にすることは、この間のバケモン魔法陣事件の時に私とテアが体験したことだ。


 あの快感は今でも忘れられない。しかし、全人類にあれをするとなれば大混乱が起きてしまう。

 そして実はあの計画を実行する直前に、魔力の流れ方にはパターンがあることを突き止めた。


 私たちがあの時、自分たちに行ったのは、体に魔力そのものを通すことだった。

 どうやら魔力を体に流し込むと、あの快感が出るらしい。

 ということは、シーナがベッドに寝込んでいたとき、無意識にその快感を味あわせていたことになる。


 しかし、私が全人類に行ったのは、体ではなく器に直接魔力を注ぎ込む方法だ。

 この方法を使えば、結果は同じでもあのような快感はなく、気づかないうちに魔力が溜まっていることになる。


 そりゃそうだ。自然回復という概念があるのだから、四六時中感じていてはまともに生きていられない。


 自然回復とは、おそらく器に直接魔力を流し込む仕組みなのだと思う。


 話が長くなったが、今から2人には体で魔力を感じてもらう。

 しかし、普通に流せば魔力が器から溢れてしまう。


 それを防ぐためにまず……


「よし! 今から魔法を使えるだけ使いまくって、器を空にしちゃって!」


「え?」

「今から魔力を感じ取るのに空にしていいの?」

「いいからいいから」

「わ、わかったよ」


 そういって2人は馬鹿みたいに魔法を連発する。


 ブフッ。やってること脳筋じゃん。


「ちょっとリン! あんた何笑ってんのよ!」

「ご、ごめんごめん……ぷっ」

「ちょっと!」

「つい面白くって……ぶふっ!」


 ダメだ。面白すぎる。何もない空間にひたすら雷魔法と炎魔法を放ち続けている。

 脳筋がイラついた時もこんな感じなんだろうか、いろんな想像が膨らみニヤケが止まらない。

 そしてそんな光景を目に「平和じゃの」と平和を感じるテア。


 平和だよ。


 間もなく2人の魔力は空になった。

 よし、自然回復する前に早く流してやろう


「私とテアが今からあなたたち2人の魔力をコピーして、それを全身で感じ取れるように流すから、しっかりと感覚を掴んで欲しい」


 もちろん、私はただ笑って見ていただけじゃない。

 私はシーナ、テアはセリの魔力を感じ取りコピーしていた。


「じゃあいくよ!」


 私とテアが2人の体に魔力を流し込む。

 その瞬間、2人の体が震え出し、膝から地面に落ちる。


「っっ………ぁ…!! な、なにこれぇっ……!」

「ちょ、っ……! リン…! あっ…なた………っ!!! っぁ……!」


 うわぁ〜。これはやばいと思うよ。


 何せ空の状態だ。そこに魔力を注ぎ込んでいる。

 これは私がこの世界に来て自分で魔力を感じ取った時よりもヤバいはずだ。

 スープが染み渡っていくようなレベルではない。

 毛細血管までスープで満たされるようなレベルだ。(?)


 私は思わず「平和だね」とつぶやく。

 正直ちょっと羨ましい。私もあとでテアにやってもらお。


 少しすると、魔力が9割程度になったので魔力を注ぎ込むのをやめる。


「どう? 感じ取れた?」

「や、やばい…ぅ。く、クセになりそう……」

「こ、こんな姿お母様にもみせられないわっ…」


 余韻に浸っていてまともな会話ができない。


「けどハッキリと感じ取ったよ。今も意識しなくても、無意識的に魔力が感じられる」

「私も感じ取れたわ。いま体の中に魔力があるの、ハッキリとわかるもの」

「それじゃあ試しにちょっと魔法を使って見てくれない? 魔力を込めながら」


 そういうと、2人は魔法を使ってみる。

 

 もちろん、その威力に2人は絶句する。


「こ、これは……」

「わたしたち、宮廷魔術師の人たちより格段に強いんじゃ……」


 ふふふ。あなたたちはもう立派な脳筋よ!

 

「ご覧の通り、魔力を込めるだけで威力が段違いになるんだよね。先にこれを教えなかったのは、イメージを怠ると威力が落ちるからだよ。とは言っても、魔力を込めなくてあそこまでのレベルに達したんだもの。十分すごいけどね」


 2人は口を開いたままだ。


「そしてこの魔力を感じ取れたことが、転移魔法に繋がってくるのよ」

「……?」

「どういうことかしら?」


 昨日考えていた魔力の仕組みを説明する。


「そもそも魔力というのは、自分の生命体のようなものなの。シーナが魔力欠乏症になった時、存在自体が消えようとしていたでしょ?」

「うん」

「つまり、魔力が存在というものを司っているよ」


 そう。脳は頭を動かすためにあり、心臓は血液を運ぶためにあり、肺は呼吸するためにある。


 じゃあ魔力はなんなのか?

 シーナの姿をもう一度よく考えればある仮説が立った。


 ───魔力は生き物を存在させるためにあるのだと。


「その魔力を、自分が転移したい場所に飛ばして存在させるの」

「「魔力を飛ばす……?」」


 2人の疑問もわかる。魔力だけ飛ばせば体から魔力がなくなり、存在できなくなる。

 しかし同時に、飛ばした場所に魔力が存在し新たな自分が存在できることになる。


 体を転移させる必要はなかったのだ。

 自分を構成する魔力がそこに存在する事によって、新たな体も生成される。


 これが、私の導き出した転移魔法の仕組みだ。


「肝心の魔力を飛ばす方法は、練習するしかないと思う。でもイメージできれば簡単。いま2人が感じ取った魔力を、自分の転移したい場所へと飛ばすイメージをするだけ。だから私は飛ばすと表現したの」


 実際に昨日、私は転移したい場所を思い浮かべて、魔力だけを飛ばしていた。もちろん結果は成功だ。

 今まで私がしていた転移は、体、魔力、私の全てをその場所に飛ばすように意識していた。カイルさんやサリナさんを転移させた時も、同じことを考えて一緒に転移していた。

 

 さて、お次に転移魔法というより、魔力についてもう少しきちんと考えてみた。

 自然回復力の強い私では検証できなかったことがあったので、それの検証も兼ねている。


 それは、魔力が空になったときだ。


 シーナは以前、魔力がゼロに近づいていたため存在が消えかけた。

 ということはさっきの2人みたいに、魔力を使いすぎて空になった場合も同じことが起こるはずだ。


 しかし2人に透明化は起こっていない。


 このことから、魔力に関して一つの結論が導かれる。

 

 魔力は、厳密に言うと種類がある。

 ()()()()()()()と、()()()()()()だ。

 

 そして当然ながら、器に入っている魔力は、力を司る魔力だ。

 さっきも器が空になったのを確認したけど、存在は消えていない。すなわち、存在を司る魔力は別の場所に存在していることになる。


 残念ながら、今の私に2つの魔力を区別する方法はない。

 バカ英雄も、そのことは区別できなかったみたいだ。だからこそ、存在が消える病気と同時に、力が奪われる事態が起こった。


 もし存在を司る魔力だけを飛ばせるなら、それだけで転移魔法は成功するだろうけど、今はできない。

 できないことを考えても仕方ない。


 とは言えできなくても問題ない。

 魔力にはその両方が含まれており、自然と両方の魔力が扱えているのだ。


 さっき私とテアが2人に流した魔力の中にも、自然回復する魔力の中にも、存在を司る魔力が流れているっぽい。


 しかし、さっきも言った通り、存在を司る魔力が貯められている器を見ることはできない。

 

 テアにもわからないそうだ。

 けどまぁ見たところでどうにもならないんだけどね。


 1時間ほどこんな自問自答をしていると、セリが声を上げて喜んでいるようだ。


 どうやら、私が思っていたより2人は優秀だったみたいだね。

魔力についての説明回のようなものです。

要約すると、この世界の魔力には2種類あります。

「存在」と「力」を司るものです。

だからなんだと言われれば、特に何もありません笑

深く考えるのはオススメできません(?)

もし、この設定でいいストーリーを思いついたら後々また登場するかもしれません……

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