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50 授業


「いやいや、リンのことだから絶対歴史書に載ってるはずだって」

「けど、わたしの家にある書物にはリンについての記載はなかったわよ?」

「名前を変えてたんだよきっと!」

「わたしは、リンが350年以上前にいた人だと思っているわ。だってそれ以前の歴史がこの国には残ってないもの。すなわち、350年前にリンが世界を破壊して、それ以前の歴史が失われたと考えた方が」

「そ、それだっ! シーナ! ナイス!」

「ふふっ! もっと褒めていいわよ!」


 今、目の前で2人が私の過去について、やらかした出来事を予想し合っている。

 さっきまでの私の緊張や覚悟はどこに行ったのやら。


「やっぱりあの大嵐みたいな魔法で吹き飛ばしたのかしら」

「あの青い炎も使ったんじゃ?」

「もしかしたら、私たちの知らない魔法があるのかも」

「リンのことだからその可能性もあるね……」


 2人はやりたい放題だ。


「あ、あの……」

「どうしたの?」

「盛り上がってるところ悪いんだけど……そろそろ始めていい……?」


 「リンの知識を教えてもらえるということね! もちろん!」と、セリ。

 「いつでもいいわよ!」と、シーナ。


 はぁ……これはさすがに疲れそうだ。


 てなわけで私は「元素」の話から始める。


「じゃあセリ。水は何からできていると思う?」

「何言ってるの? 水は水からできてるんでしょ」

「まぁ正解であり間違ってもいるね」

「どういうこと?」

「水を構成しているのは、粒なの」

「「 粒? 」」

 

 まぁ当然の反応だ。


「粒と言っても、私たちが目に見えるほどおっきくないの。ほんとに小さな、この世界の何よりも小さいほどの、粒なの」

「それは水だけなのかしら?」

「いいこと聞くねシーナ。実はこの世界にあるすべてのものが、その粒からできているのよ」

「なんか、変な感じだね。水のような液体が粒だなんて」

「そこのイメージがまず大事よ。本当に目に見えない、なんてレベルじゃないくらいに小さいの。だからそれが無数に集まると、液体になったりもできるし私たちのような体にもなったりする。そこのベッドにもなれれば家にもなれる」

「という事は、空気の正体も? 火の正体も?」

「そういうこと」


 物分かりがいい子達だ。


「でもその粒には種類があるの。100種類以上よ」

「「 そんなに!? 」」

「そう。その粒の種類がどう集まるかによってモノの形や性質が決まっていくの。だって水とベッドが同じだなんてあり得ないでしょ? だから、それは自然な考え方なのよ」

「確かに。じゃあリンの青い炎は、私たちの知っているものと材料が違うってことかしら?」

「うーん。それは違うと思う。そもそも2人は、炎を見て何が燃えているか考えたことはある?」

「そう言われてみれば、ないわね」

「私が使うこの青い炎は、シーナやセリが普段見ている炎と何ら変わりない材料で燃えているの」

「でもそんな青い炎見たことないよ?」

「炎が燃えるためには、いくつもの材料や仕組みが必要なのよ。まず一つ、粒の名前は()()。さっき言った、目に見えない粒。二つ目は燃えるもの。これは木とか、紙とか、燃えればなんでもいいのよ。そして三つ目に、火そのもの。まぁ他のもので代用できることもあるんだけどね」

「火を起こすのに火が必要なの?」

「まぁ変な話よね。だけどこれはあなたたちも普段から体験しているでしょ? 暖炉に火をつけようと思えば火をつけるでしょ」

「ま、まぁ確かに……」


 この辺りからは理解できても、多少課題は残る。

 実際に私は青い炎を生成する時、酸素を高濃度で精製した後、可燃物の材料である水素に、普通の火属性魔法で着火し、水素を燃やす。

 そうして青い炎ができるのだ。


 だが、彼女たちはそもそも着火できる火属性魔法を使えないのだ。

 これにはもちろん対処法を考えてある。


 それは後で言うとして……。


「燃やすものってなんでもいいの?」

「燃えやすいものならね。さっきも言ったけど紙とか。ほんとは粒の中にも燃えやすいのがあって、それが多く含まれてるやつがいいんだけどね」


 そう言って私は実践してみる。


 左手に水素を圧縮した球

 右手に酸素を圧縮した球


 それら2つを見せ、合わせる。

 そこに雷魔法で電気を流し、引火させる。

 ガスコンロと似たような仕組みだ。


 引火させると、小規模な爆発が起こる。


「こういう感じよ」

「「 どういう感じよ!! 」」


 やべ、今のは炎というより爆発じゃん。


「わたしの家が燃えてしまうわ」

「ご、ごめんってば! 炎が赤いのは、極端に言えば、材料が適切に使われてなくて、威力も弱いってことなの。炎が青いって事は、材料が適切に使われているという事。私が今使ったのは、適切な材料だけ。だからあれほどの爆発が起こる威力が出るの」


 慌てて誤魔化してみる。


「この空気の中にも酸素は入っている。でも全部が酸素ってわけじゃないの。全体の20%ってところかしら。他は火が発生する要素にはなっていないのよ」

「「 なるほど 」」


 これでわかるの? あなたたちすごいよ?

 元教師とは思えないほど雑な説明だけど大丈夫??


「「 やってみる 」」


 2人揃って勉強熱心なことだ。


 しばらく挑戦する。


「ダメじゃん!!」

「私もダメみたい」


 うん。そりゃそうだ。肝心の発火の仕方を教えていない。

 私はそのことを伝える。

 そしてそれに対する対処法は、さっき私がやってみせたように()()という概念を用いる。


 さすがに電気の仕組みは1日で教えられる量ではないため、私の授業は2日間に及んだ。





 そして授業を終えた今日。

 そろそろ部屋の中ではまずいということで地底湖にきている。


「できたぁっ!!」

「ねぇ見て! リン! わたしもできた!」


 シーナとセリが青い炎を出している。

 2人ともしっかり成長した。

 2人が喜びのあまり、森で木を燃やしていたので、消火させてしっかりと怒った。

 この子達は案外馬鹿なのかもしれない。


 ついでに電気という概念を教えたことにより、雷魔法も使えるようになった。

 もちろん私ほど高威力では出せないが、ウルフ程度の魔物なら一撃だ。


 よしっ。残すは明日を含めて3日。


 あとは………


「じゃあ明日からは、転移魔法、やってみよ!」

「「 転移魔法!? 」」


 そう。本来の目標である転移魔法だ。


「そう。実はサリナさんからお願いされていてね」

「母様が……」

「心配する事はないよ。もしできなくても、今の2人なら間違いなく次席レベルで合格だし」

「それもそうかしら」

「わたしまでリンみたいな非常識になった気分だよ」

「これであなたたちも脳筋の仲間入りね!」

「「 脳筋? 」」

「そう。力ですべて解決してしまう人のことだよ」

「「 それはリンだけ 」」


 うっ。つらい。言葉が刺さる。


「よ、よし! やるよ! 転移!」

「ふふ。たのしみね」

「これでどこにでもいけるっ!」


 こうして試験日まで残り3日。私たちは転移魔法を特訓するのだった。


ついに50話まできました!

昨日も長々と感謝の念を綴りましたが、改めてここまで読んでくださった方に感謝です。

これからもぜひよろしくお願いします。

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