47 特訓
サリナさんを王都に届けた翌日、私はシーナとセリと一緒に、ディスヘルト地底湖まできた。
もちろん転移でだ。
それに、理由も一つしかない。
特訓だ。
この場所を選んだのには理由がある。最初は、例の雷魔法で周りが焼けた森の中にしようかと思ったのだが、テア曰く「妾がおった部屋は、防御魔法を構築しておる。並大抵の魔術では破壊されんのじゃ。リンが本気を出せば無理かもしれんがの。とは言うても5割程度なら、かすり傷すら与えられん故、大丈夫じゃ」ということらしい。
そういうわけで、私とテアが初めて会った場所に来た。
懐かしいなぁ〜。
「ねぇテア。懐かしいね」
「そうかえ? 妾にとっては昨日のことのようじゃ」
「まぁそりゃ1000年以上も生きてたらそうなるか……」
私たちの会話を聞いていたシーナとセリが反応する
「テアちゃんってこんなに可愛いのに1000年以上も生きてるなんて、本当に信じられないわね」
「ほんと。リンも非常識だけどテアもよっぽど非常識よ」
「そういえばお主らは妾の真の姿を見たことがなかったろう?お主らになら見せても構わん」
「「真の姿??」」
すると、テアは通常サイズになってみせる。
「テアちゃん!?」
「う、うそ…テアだよね…?」
当たり前だが、どちらも困惑している。何せ100mは超えている
「どうじゃ? 妾のことが怖くなったかえ?」
「そんなわけないじゃない。むしろあんなに可愛いテアちゃんがここまでたくましくなれるなんて…ほんとに素敵だわ…」
「なんかもうリンのせいで感覚がおかしいんだわわたし。怖いどころか頼もしく感じちゃうわ」
「ちょ、なんで私のせいなのよ!」
「だって非常識なんだもん」
「もう! 何回も言わなくてもわかってるわよ、もう! そんなことより特訓するよ!」
2人の特訓が始まった。
まず、私が知っているすべてのことを2人に話した。
この世界が無詠唱でも成り立つことや、魔力量があればイメージを粗末にしてもなんとかなること。それに、魔導書は不要だということだ。
セリは実際に私の収納魔法のことを知っているため納得していた。
一方でシーナは幼い頃から聞かされていた事実とは違ったため、最初は困惑していたが、あとあと納得してくれた。
特訓をしている中で、シーナが魔導書を読んだことがないにも関わらず、実際に水魔法を使えるようになったからだ。
水とはかなりイメージしやすい。川や海に始まり、井戸や雨など、この世に水は溢れている。
だから私はまず2人に水属性魔法から慣れてもらうことにした。
2人が魔力切れを起こさないよう、テアと2人で器の魔力量に注意しながら2人を見守る。
魔力切れが起きたら、順次私たちで魔力を補充する。
テアはどうやら、私と同様、魔力の自然回復能力が高く、2人に魔力を注いだとしてもすぐ満タンに復活する。
一方、2人の自然回復能力では、やはり差があった。もちろん魔力欠乏症を引き起こしていたシーナの方が回復速度が遅い。
とは言っても、想像していたより致命的ではなかった。
セリに比べて、1.2倍程度の時間がかかるほどだった。
そのことも2人に伝える。
シーナは少しショックを受けていたが、私がなんとかする方法を探している、と言うと、どうやら安心したのか表情が和らいだ。
そこから、さらにしばらく時間が経ち、2人はほぼ同レベルまで水魔法を習得した。
そこで2人に課題を出す。
まずはテアにお願いして防御魔法を一時解除してもらう。
「じゃあ2人とも。ここに川を作ってごらん?」
そう言って私は地面に長さ50m、幅1m、深さ3mほどの溝を作る。
2人とも、サッカーボール程度の大きさの水をポンポン連射するように水を貯める。
ダメだ。イメージが弱い。
「はいダメ!」
「なぜかしら?」
「なんでよ!」
「理由は1つ。水のイメージが優しすぎるよ」
「やさしすぎる?」
「そう。綺麗な海、穏やかな川、小雨、コップに入った水、そんなものを想像していてはこの溝は当然埋まらない」
「川を作るのに川を想像するのはいけないの?」
「ダメじゃないんだけど、本質的なイメージからは離れてしまっていると思うんだよね。もっとこう、暴力的な。たとえば」
そういって私は、嵐の中の豪雨、それによって起こされる大反乱の川をイメージする
─────ゴォォォッ!!!
「「なに!?」」
「こうやるのよ」
ものすごい雨風が生じ、一瞬で溝が水で満たされる。
「「………」」
「いい? まずあなたたちは水の恐ろしさを知らない。水ってのは扱い方によっては恐ろしいものなの。可愛らしい水を出しているようじゃ、魔物なんて狩れないわよ」
「わ、わたしはカレー屋さんなんだけど……」
「今は関係ないの!」
私は水の恐ろしさを、ひたすらと2人に教えるのであった。




