43 家(?)
私のことを信じてもらえたので、前から気にしていたある一つの可能性についてを国王とサリナさんに話す。
「あのバケモン魔法陣がない今、魔力を吸収するものはありません。ということは、動物が魔力を持ち、魔物化する可能性が高くなるということです」
「まぁそうなるな」
「おそらく、私がさっき倒してきた魔物も、それが少なからず原因になっているかと思います」
魔物化になるまでそんなに期間が空いてない気がするけど……。
動物と人間では魔物化のリスクというか可能性が違うんだと思う。
「リン。よいか? そう考えてしまっては、救われた人間は悲しんでしまう。サリナの娘が、今お前さんが言ったように『私のせいで魔法陣が壊れて魔物が増えてしまって……』なんてのを聞けば悲しむだろ。なんのために救われたんだ、って思ってしまうだろう」
「そ、そうですね……ごめんなさい」
「構わんさ。人間はそうして成長していくんだ。まぁそれにしても多少の警備強化は必要になるな」
「はい。そのことなんですけど………」
私は全ての人たちに魔法陣から魔力を与えたことは説明してある。
しかし、その量を説明していなかった。
この世界の魔力量と実力は、単なる比例ではなく、魔力量が増えるにつれ、実力はより増幅される仕組みになっていた。
正確な数値はもちろんわからないが、体感的には魔力量の2乗が実力になっている。
魔力量が器全体の20%の人と30%の人がいるとする。
20%の人の実力は、目安でいうと400。
30%の人の実力は、900にもなるのだ。
10%違うだけで、倍以上にもなる。
そして今この世界の人々は50%ほどの魔力を持っている。
だいたいみんな20%程度だったから、今となっては2500ほどの実力を持ったことになる。
6倍だ。
いきなり6倍の力が出せるとなると、さすがに問題も起こるかもしれない。
とは言っても、しっかり訓練をして、魔力を感じ取れるようにならないと、全ての魔力を乗せて魔法を使うのは難しいと思うけどね。
それと、器の容量は皆同じだった。
ところが私とテアの器の容量はそもそもが桁違いだった。10倍以上はある。だから、この世界の人がたとえ器に満タンの魔力を入れていたとしても、私たちには到底及ぶことはない。
これが脳筋たる所以だ。
そういうことを国王とサリナさんに伝えた。
「つまりはきちんと訓練をすれば、リンほどにはならないが、今ある力の6倍ほどの強さまで鍛えられるということか」
「あくまでだいたいの数値ですが、そういうことになります」
「うふふ。リンちゃん。ますます気に入ったわ」
サリナさんの笑顔が何か怖い。
変なこと企んでなければいいけど………
しばらく私の仮説を話した後、国王は『仕事が山積みだな!』と言いながらどこかに行った。
私とサリナさんはさっきの部屋に戻ってくる。むさ苦しいのがいなくなったせいか、一気に涼しくなった気分だ。
「あの、サリナさん」
「どうしたのかしら?」
「私が転移魔法を使えるのは知ってますよね?」
「えぇ」
「それで、私がこの子に乗れば30分足らずでこの街とデューセルを行き来できるんですけど、正直毎回魔法を使って姿を消して、気を遣って来るのは面倒だとおもうんです」
「まぁそれもそうね。空飛ぶでかい動物に人が乗っていたら大騒ぎだもの」
「なので、私が転移できる場所を用意して頂きたいんですが………あの…無理を言っているのは承知なんですけど………」
「いいわよ」
「えっ!? ほんとですか……?」
「もちろん構わないわ。私もリンちゃんとテアちゃんに会いたいし」
まさかの即答だった。
「わたしの家に来るといいわ。部屋を一つ空けましょう。ついでにそこをリンちゃんの部屋にしてもらって構わないから、王都に来たらそこに寝泊まりしていいわよ」
「え!? さ、さすがにそれは……その、なんというか、常識的にも防犯面でも問題ありますし……」
「構わないの。もしかしてわたしが寝てる間に襲ってきたりするの? うふふふ」
「そ、そんなことはしませんよ!!!」
「あら、残念ね」
この人は何を言っているの? もしかして女もいける?
「そうと決まれば、わたしのおうちに行きましょう。転移も一度経験してみたかったのよ!」
「転移は一度行った場所にしかできないんです。ごめんなさい」
「あら、それは残念ね。なら仕方ないわ。歩いていきましょう」
サリナさんに着いていくと、何やら屋敷のような場所に着く。
ここ、まだ王城の中だけど…。
「ここがわたしの家よ」
家?
うん? ここは家じゃなくて城だよ?
「えっと、ここはまだお城の中なんじゃ……」
「そうだけど?」
「はい?」
いや、ついていけないよ?
「ここ一帯はわたしの家だから、自由に出入りしてもらっていいわよ」
「お城の中にサリナさんの屋敷があるんですか?」
「まぁ正確には、屋敷をわたしが乗っ取ったのよ。うふふ」
そうだ。サリナさんはやばい人だった。
「それに、リンちゃん、あの筋肉馬鹿に刻印押されてたでしょ? あれを見せるとこの城内は基本的に出入りすることができるわ」
「え!? あれは討伐の確認じゃなかったんですか!?」
「あれは国の刻印よ。あの筋肉馬鹿が認めた者にだけ押されることになっているの。確かあいつの代だと…押されているのは……リンちゃんで……2人目か3人目だったかしら。もちろん、城で働いている人や身内なんかには押されないわよ」
「え!? なんですかその国宝みたいな扱いは!?」
「あら? リンちゃんは国宝よ?」
「や、やめてください!!」
「リンの笑顔は確かに国宝じゃの」
「ちょ、いきなりテアまで何言ってるの!?」
「うふふ。これは賑やかになるわね」
どういうわけか、私は城の中に部屋を一つ持つことにった。
ラフな貴族って、書きやすくていいですよね。




