38 真剣勝負の相手
『ほどほどに怪我しない程度にやってよ。あんまり実力差がバレると余計怪しまれそうだからそれも注意してね。あと…………』
『もうよい。心配するな。妾を信じよ』
『頼りにしてるわよ! 相棒!』
『ふん』
ツンデレ(?)のテアもかわいいよ。
本物の剣だとまずいということで、門兵さん等が暇潰しで振っているという木刀を借りた。
てか、なんで私まだ街の中にすら入れてないの? さすがにおかしくない?誰かの陰謀?
「準備は良いか。大聖者殿」
「ん、うん。」
様から殿になってるよ。本気ってこと?
騎士が気合い入れるとこうなるってこと?
『まぁさほど時間は必要ない。程よく一撃で終わらせてやろう』
テアの程よくは怖いよ。
『私まだテアの本気見たことないんだけど、私にうってきた炎魔法って何割ぐらいの力なの?』
『あぁあの時の。あのバケモン魔法陣のせいもあってか本来の2割ほどの威力しか出せんかったんじゃ』
『ヒィ………………さすがの私でも咄嗟に来られたら3割で間違いなくぶっ倒れてたよ』
『ホホホ。そんな冗談を言える内は大丈夫じゃろ』
割と本気なんだけどな………。
『もう! 冗談じゃな───── テア!?』
『リン! 何かくるぞ』
なんだこれ…。
やばい魔力がこちらに近づいてくる。
「グレンさん! ストップ! 試合は中断! 皆さんを一箇所に集めて避難させて!」
「な、何を言っておられ───」
「早くして!!!!!」
「は、はい!!」
私の慌てぶりに、只事ではないと判断したグレンさんが咄嗟に門兵と兵士をまとめ上げ、門の付近にいた人たちが一箇所に集められる。
「だ、大聖者様! 一体何事ですか!?」
ちなみにグレンさんは、私が大聖者ということは納得してくれている。さっきの勝負は護衛をつけるかつけないかの勝負だ。
だから私の指示にも素直に従ってくれる。
「何かきます。注意してください」
「こ、この辺りでは魔物が常に討伐されており、付近に兵も見回っているため魔物が現れることは考えにくいのですが………………」
「その兵じゃ手に負えないのがきてるってこと」
「な、そんな魔物、最低でもAランク以上になりますよ!?」
「じゃあそうなんでしょう」
さっきから索敵魔法を使っているが、今まで見たことのないオーラだ。
『テアこいつ何かわかる?』
『残念だが妾も見たことがない』
『とりあえず今のうちに幻術解くから、私の肩まで来て。もしもの時は2人がかりで』
『よかろう』
私は幻術を解き、テアが私の肩へ戻ってくる。
先に兵士が走ってくる。必死に叫んでいる。
「みんな逃げろ!! 今すぐ門の中に!!! あんなバケモン見たことも聞いたこともねぇ!!」
走ってきた兵士が、門の状況を見て、動揺しながらも必死に報告する。
「こ、これは…?」
「メイア!」
「グレンか! なんだこの状況は!?」
「大聖者様のお言葉により、我らは先にこの付近のもの達を誘導してある。それより何があったんだ!」
「あぁ、詳細はわからないがとにかくやばい。タイガーなどではなかったが、間違いなくヤバい魔物だ。一直線に王都に向けて走ってやがった。それを見たもので、急いで知らせに帰ってきた。多分もうすぐ現れる」
「くそっ…!! なんなんだ!」
なんの有益な情報もないのかよ。
って、そろそろ来る。
─────ゴゴゴゴゴォォッ!
木々を薙ぎ倒しながら、何かデカイのが猛スピードで突進してくる。
う〜〜ん、なんだ? あれ
よく目を凝らして見る。
『鹿?』
『鹿というものを妾は知らんが、馬のように見える』
『見た目は馬みたいなもんだよ。頭にツノが生えてるの』
『ふむ。相当でかいな。とは言え妾ほどではないがの』
『あなた相当余裕ね』
『リンもいるしのう』
『じゃあここは私の護衛不要アピールをするために、私に任せてね』
『仕方ない。譲ってやろう』
見えた。うん。鹿だ。
にしても、でっけ〜〜〜。なんだこれ。
よく見たら角が木になってるじゃん。
気持ち悪い。
高さだけで30mぐらいある。
どうやって倒すかな。やっぱ血がブッシャーなるのはこの人前じゃ刺激が強すぎるよね。
そうなると……やっぱあれかな?
「グレンさーん! 私がこれ倒したら護衛なしにしてくれますか?」
少し離れた場所にいるグレンさんに、ダメ元で聞いてみる。
もしこれを倒して護衛なしにできるのなら、グレンさん相手とは違い、手加減や見栄えを気にしなくていいので、その方が楽だ。
「な、何を冗談を言っておられるのですか! 大聖者様も早く避難を!!」
「だーいじょぶだって! それよりも、早く約束してくださーい!」
「わ、わかりましたから! 早くご避難を!!」
よしっ!
って、わかったのか避難させたいのかどっちだよ!
まぁそれほど混乱してるんだね。だってあれ、でかすぎるもん。
「じゃ、いってくる!」
って言っても、もうそこまできてんじゃん。
「いっくよーーー!!
バリバリっとするやつ! 発射!!!」
次の瞬間
─────バリバリバリバリィィッ!
地鳴りするほどの高威力の雷魔法が、私の手から繰り出された。
─────ドッッ! ゴォォォォオォ!!
直撃を受けた鹿がぶっ倒れる。
きもちぇ〜〜!
的がでかいとほぼ当たるし。いいね〜。
なんか最近自由なくてストレス溜まってたし。
いやぁ。それにしても森の中から出てきてくれてよかった〜。これ森の中だったら、周りの木までえらいことになってたね。
『むむ。これは妾があの時感じたものと似ておる。さてはリン。あの時これを使ったの?』
『さすがテア。わかる?』
『当然じゃ。その時からリンのことばかり考えておったぞ。まぁ実際に会うまではどんな者か想像していただけだがな』
『ふぅ〜〜〜ん。実際の私はどうだった?』
『ふん。そんなことどうでもよかろう。それより後ろを見てみろ。妾は何も手伝ってやらんぞ』
『うん?』
後ろを振り向くと、兵士、門兵、民衆の顔が引き攣っていた。
『私みんなを助けたのにおかしくない?』
『まぁどちらかと言えば、この状況が受け
入れられないと言った様子じゃな。それに、この世界ではリンの使った魔法は存在しないのではないかえ?あれは雷じゃろ』
『あぁ……なんかそんな気がする……』
『まぁ頑張るのじゃぞ』
ぅー。帰りたい。




