36 新たな力
私は、翌日に王都へ向かうことにした。
すぐに出発してもよかったのだが、今思いついている移動手段があまりにも早すぎるため、怪しまれるのを防ぐために1日置くことにした。
しばらく帰って来れそうにないので、イリアさんのカレーをお昼に食べてから、のんびりと森に来た。
もちろん、テアと2人でだ。
ノインさんから、馬車の手配などを提案されたのだが、私にはある秘策があった。
─────透明化だ。
詳細を言えば、透明化とは少し概念が違うかもしれない。相手の認識を阻害するのだ。
探知魔法の応用というよりは、派生して新たな魔法を作ったという方が正しいだろうか。
相手が認識できないような魔力を放出することで、透明化のようなことができないかを考えたのだ。
もちろん、本当の意味での透明化は失敗した。いくら強くイメージしても、さすがに透明になることはできなかった。
そこでテアと考えついたのが、今から行う魔法だ。固有名を認識阻害とした。
やだ。かっこいい。
私たちは今、私がこの街に来て間もなく吹き飛ばした森の開けた場所に来ている。
「じゃあテア。準備はいい?」
「いつでも構わんぞえ」
「いくよっ!」
テアが中サイズになる。私が乗れるサイズだ。
テアに認識阻害をかける。
「おー! 見えない!! やっぱすごいねこの魔法!」
見事にテアは私の視界から消えた。
「ふむ。やはりサイズは関係なく認識を阻害できるようじゃの」
「みたいだね」
このサイズを街中で実験するわけにはいかない。転移ですぐここには来れたのだが、普段のミニサイズのテアや自分自身に、認識阻害魔法がかけられたため、おそらく問題ないだろうということで実験はしていなかった。
「じゃあ次は…」
そういって、近くにあった木にめがけて認識阻害を使ってみる。
が、変わらない。
やはり、この魔法は魔力の認識を元に成り立っているため、もともと魔力のない物体には使っても効果がないようだ。
「じゃあテア。よろしく!」
「任せておれ」
そう言うと私の体が不自然に持ち上げられる。
何かに乗った。
テアの頭の上あたりだ。私は自分に認識阻害魔法をかける。
しかし、ここで当たり前のことに気づいた。
「でもこれだと私もテアのこと見れないし、今だとテアは私のこと見れないじゃない。何か悲しくない?」
「それもそうじゃな。ではその逆のような魔法を使ってみればよいではないか」
「逆?」
「うむ。つまりは相手に認識させる魔法ということじゃ」
「なんかすごい変な魔法だね。使い道なさそうだし、聞いたこともないよ……」
「妾も提案しただけで使えはせんし、聞いたこともない」
昔見たアニメに、挑発というようなスキルがあったけど、あれは認識云々という部類ものなのかな?
認識そのものを生じさせるというよりかは、注意を引きつけるようなものの気がする。
思ってたよりイメージが難しいかも。
うーーん。変なことを考えずに、テアだけに私の存在が見えるように………
むむむむ……!!!
「どう?」
すると、私の前方少し下のあたりから声が聞こえる。
「見える! リンが見えるぞ! どうやったのじゃ!?」
「なんか、テアに私のことが見えるように気持ちを込めたら見えちゃった」
「ふふふ。相変わらず無茶な魔力じゃな。待っておれ」
すると、目の前にテアが現れる。
「こういうことかの?」
「テアぁぁぁぁあ!! すごいよ!!! さすが私のテアだよ!」
「リンと一緒にいると妾まで脳筋になってしまうの」
「ドラゴンなんてもともと脳筋みたいなもんだし大丈夫だって!」
「むぅ」
うん。今日もかわいいね。
ちなみに、脳筋という単語はこの世界にはなかったらしく、私がテアに教えた。
力だけでなんでも解決しちゃうすごい存在と教えておいた。
少し綺麗に説明しておいたが、嘘ではない。
「よーっし! じゃ王都に向けて出発!」
「いくぞ」
テアが翼を広げ飛ぶ。
やっべぇ〜! 興奮する〜!!!
「え〜っと。ふふ。早馬で1日半とか言ってた、んふっ、よね。へへ。てことはテアに乗っていけば1時間くらい? かなっ? へへ〜ぇ」
「どうしたんじゃリン。なにか気持ち悪いぞ? まぁ少し飛ばせばそれくらいで着くのう」
「頼んだわよ〜〜ッ!!!」
「うむ」
30分くらい経っただろうか。いやもう少し早かったかもしれない。もう王都が見えてきた。
テアの移動速度がこの間に比べて結構速かった。
「あれだよね?」
「あれじゃろ」
「でかいね〜〜。あの街の3倍以上はあるよこれ。さすがに門の目の前で認識阻害を解くわけにはいかないから、ちょっと離れたところに降りよう」
「それがよかろう」
そう言って私たちは少し離れた森の中に降り立った。
認識阻害を解き、ミニサイズに戻ったテアは私の肩に乗り、王都へ向けてしばらく歩く。
「見えてきたね」
門もなかなかにでかい。
こんなにでかくする必要ある?
ドラゴンでも出入りしてんの?
「あのデカさは妾を歓迎しているということかの?」
「私も思ったそれ」
どうやらテアは冗談を言うのが好きらしい。




