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35 冒険者ギルド、再び


 あー。そろそろカレーライスが食べたい。

 米を探したい。

 ナンばっかりじゃさすがに飽きてくるよ。


 てか、わたし早くラーメン作りたいのに全然暇がないんだけど。王都から帰ってきたら絶対何があってもラーメン作るから。


 とは言っても、一からラーメン作りは中々に気が遠くなる話だと思う。


 とりあえず、目の前のことからしよう。

 そんなわけで冒険者ギルドに向かう。




 なんか久しぶりだなぁ。

 冒険者ギルドに入るとすぐ、何やら声が聞こえてくる


「おいあれ虎狩りじゃ……」

「あんまり見るな…殺されるぞ……」

「カイルさんが魔人って……」

「こ、こっち見た!!」


 やめてよ。こんな可愛い女の子に変な噂流さないでよ。


 そんな中、むさ苦しい男の声が後ろから聞こえる。


「おい。この街の冒険者ギルドはお前みたいなチビガキが遊びに来るのか?邪魔だからさっさと消え失せろ」

「ハッハッ! 兄貴! あんまり言うとこのガキんちょビビって漏らしちゃいますぜ!」

「へへへ! さっき正面から見たけど意外と可愛かったですぜ。後でちょっと借りていきましょや」



 キタぁーー!


 絡まれてボコボコにして追い返すパターン来たァ!

 私はこれを楽しみに異世界に来たと言っても過言ではない。

 どうやってボコボコにしよう。


 やっぱ殴り飛ばすのが筋ってもんだよね。

 けどなんか汚そうだから素手はちょっと……

 手に風を纏わせてクッションみたいにしてぶん殴ろうかな?


 「「「ギ、ギャァァァァァァ!?」」」

 

 うん? 何か悲鳴が…?


 後ろを振り返ってみる。


 そこには、装備がまる焦げになりこちらを呆然と見つめる男3人組がいた。


 うん? どういうこと?


 するとその直後、私の声が、私の意思とは関係なく、私の口から発せられる。


「あまり調子に乗っていると踏み潰すぞえ? チビゴミ虫供が」


 テア、私の夢壊さないでよ。


『私の体に入ってるからバレないと思って何やってるのよ!』

『すまんのリン。少しイラついてしもうた。殺してはおらんから安心せい』

『この後処理どうすんのよ!!』

『任せたぞ』

『テ、テアぁぁ!』

『………』


 返事がない。


 くっ! やるだけやりやがってー!


 仕方ない…。さっさとご退場願おうかな…。


「もう一度ハッキリ言う必要ありますか? さっさと消えてください。さもないと……」


「「「ヒぃぃ!! すいませんでした!!」」」


 絡んできたやつらが大慌てでギルドを出ていく。

 よし。平和が1番だね。

 ここにいる全員の私を見る目が、どう見ても恐怖の目に変わっている。

 咄嗟に誤魔化す。


「いやぁ〜! 皆さんもあんな変なのに絡まれないように気をつけてくださいね!」


「「「「………」」」」


 なんでよ……。

 なんでそんな顔するのよ……。


 今の最善の誤魔化しだったよね!?

 

『テアぁぁどうすればいいの……』

『ふふふ。妾にはわからん』

『うー! 絶対楽しんでるよね!』



「リンちゃん。久しぶりに来たというのにいきなり問題を起こさないでよ」

「あ、レーナさん! 助けてくださいよぉ……」

「もう………」

 

 そう言って受付にいたレーナさんが、周りの冒険者達をなだめる。


「はい! みんなもう仕事に戻りなさい!リンちゃんは怒らせなきゃ可愛くて優しい子なんだから! ほら!!」


 レーナさんが私に抱きついてくる。レーナさん。当たってるよ。おっきいよ。

 テアが『妾のリンじゃというのに……』と拗ねている。かわいいよ。


「レーナさん………くるし……い」

「あら、ごめんなさい!」


 レーナさん。そんなことしてたら敵が増えるよ。


「そんなことより今日はどうしたの?」

「あ、えっとギルマスに用事があって」

「ちょっと待っててね」


 レーナさんこんなキャラだっけ。こんなコミュ力あったっけ。

 私がいない間に何かあった?

 いや、最初会った時は確かカイルさんの剣を素手で受け止めてたし……警戒してたってこと??

 ま、まぁなんでもいいか……


「ギルマスが部屋で会うそうなので、ギルマスの部屋まで行ってちょうだい」

「わ、わかりました。そんなことよりレーナさん、こんなにフレンドリーでしたっけ」

「あぁ、私もともとこういうタイプなんだけど、いくらなんでも初めてみたリンちゃんにはビビっちゃってね……そのあとギルマスから色々話を聞いてるうちに、本当はすごく優しくていい子なんだってわかってさ!」


 どうやら、この間のバケモン魔法陣騒動のこと以外はギルマスには伝わっているらしい。

 とはいえおそらく、レーナさんが知っているのはセアを助けたことぐらいだろう。



 そんなこんなでギルマスの部屋に着く。なぜかレーナさんも着いてきた。

 レーナさん曰く、私の担当になったらしい。

 そんなホストみたいな仕組み初めて聞いたよ。


「これをノインさんから預かってます」

「見よう」


 そう言ってギルマスは手紙を読む。

 

「……… なっ!?」


 え? もしかして秘密にしてたこと書いちゃったの!? ノインさんってそんなに信用ペラペラなの!?


「あの………一体……?」

「お前……。一体何をしたのかはわからんが、ランクをAに上げるようにとのことだ」


 え? 私のいまのランクって……なんだっけ。

 E? D? なんか昔にちょっと上がってたような気がするんだけど……


「この街の領主は皆一流の冒険者だ。他の街とは違う。そのせいもあってか、領主にもある程度、冒険者ギルドでの権限が与えられている。その一つが、このランク変動の許可だ」

「は、はぁ」

「何をしでかしたかは書かれていないが、『俺の権限でギルドランクをAに上げ、【デューセルの英雄】の称号を与える』と書いてある」

「英雄は嫌なんですけど………」

「ハッ。なんとその次には『英雄の称号をを嫌がるようであればその称号を剥奪し、新たに【デューセルの大聖者】の称号を与える』と書いてある」


 くそ。ノインめ。私が英雄を嫌がることを想定して面白がって書きやがったな。くそー!


「まったく、英雄の称号を嫌がる人なぞ初めて見たぞ。それにしても聖者か……。あの店の娘を救ったことは知っている。この称号は普通、高位の神官の中でも特に、街を危機的状況から救い出したものに与えられるものだが。まぁお前さんに相応しい称号なのかもな」

「リンちゃん……英雄なんてこの国の歴史にも1人しかいないのよ? そんな称号を嫌がるだなんて……しかもその代わりが聖者だなんて……」

「ま、まぁ私なんかに英雄は務まりませんから!」


『妾とてあのバカと同じ名誉はいらんな』

『いやほんとそれね』


 あんなバカと同レベルは絶対に嫌だ。


「そ、それじゃあ私は用事があるのでいきますね」

「まぁ待て。ギルドカードを出せ」

「このままでいいって言ったら怒られますか?」

「怒られるどころか俺がこの街から追放されるわ。早く出せ」


 うぅ………

 仕方なくカードを差し出す。


 そんなわけで私は異例の歳でランクAになり、大聖者なるものにされた。



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